映画ライターが選ぶ、心が疲れた時に観たいデトックス映画。

2020.12.30

大人の転職に迷った時、たとえば40代からの恋愛に臆病になってしまっている時。そして自由に旅立てないいまの状況に、ストレスを感じてしまった時。いまこそ観たいヒロインたちの選択と生き方から未来へのヒントがもらえる3つの作品を、映画ライターの細谷美香さんがセレクトしてくれました。

新しい世界へと背中を押してくれる、奮闘する姉妹の物語。『サンシャイン・クリーニング』

自分が本当にやりたいことは何なのか、いままでの自分のダメな部分に見切りをつけて別の仕事に飛び込むことはできるのか……。そんなふうに人生の踊り場で惑っている人には、『サンシャイン・クリーニング』をおすすめしたい。高校時代はチアリーダーでアイドル的な存在だったのに、いまは元彼と不倫をしているシングルマザーの姉。バイトもすぐにクビになってしまう短気な妹。そんなふたりが、事件や自殺などが起こった部屋の掃除をするハウスクリーニング業を始める物語だ。もはや死語ではあるけれど“勝ち組、負け組”という枠組みにとらわれている人が、この価値観の外に一歩を踏み出すのは勇気がいること。姉妹が家族や周りの人たちのサポートを受けながら奮闘してありのままの自分を認めていく過程を見ていると、新しい世界へと背中を押してもらえた気分になれる。シニカルなユーモアに笑い、厳しい現実に時にはしんみりしつつ、ラストはしっかり未来へ。姉妹にエールを送りながら、自分もエネルギーをチャージできる一本だ。

年下の男との恋愛で見つける、年齢にとらわれない生き方。『理想の彼氏』

アラフォーともなるとちょっと気になる人が現れたとしても、年齢が気になって積極的なアプローチをしてよいのかと気が引けてしまうもの。しかもそのお相手が24歳の男性だとしたら、なおのこと！『理想の彼氏』の主人公は夫の浮気が原因で離婚したサンディ。スポーツジャーナリストを目指して心機一転、ふたりの子どもとともにニューヨークに引っ越した彼女は、コーヒーショップ店員のアラムと出会う。ベビーシッターを引き受けてくれた彼と急接近、16歳の年の差を気にしながらも交際をはじめるが……。ロマンティックなラブストーリーに、年齢差カップルが現実に直面するほどよくビタースイートなテイストもひと匙。キャサリン・ゼタ＝ジョーンズ演じる輝きを増していくヒロインの姿から、本当の人生を見つけるのに年齢なんて関係ない！という頼もしいメッセージが聞こえてくるよう。

『理想の彼氏』●監督／バート・フレインドリッチ●出演／キャサリン・ゼタ=ジョーンズ、ジャスティン・バーサ、サム・ロバーズ●2009年、アメリカ映画●本編95分●Blue-ray￥2,619DVD特別版￥1,572●発売元：ワーナー・ブラザースホームエンターテイメント●販売元：NBC ユニバーサル・エンターテイメント© 2010 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.

役割から解放されたヒロインと一緒に、旅を楽しめるロードムービー。『ボンジュール、アン』

今年は年末年始の恒例の海外旅行を取りやめてがっかり、なんて人も多いのでは？せめておうち時間で旅気分を味わいたいときは、こんなロードムービーはどうだろうか。『ボンジュール、アン』は、フランシス・フォード・コッポラの妻であり、ソフィア・コッポラの母でもあるエレノアが長編劇映画監督デビューを果たした作品だ。サポートにまわってきた彼女の人生を投影するかのように、多忙な映画プロデューサーの夫の世話をするアンが主人公。彼女はひょんな理由で、夫の仕事仲間とカンヌからパリへと向かうことになる。旅の相棒は、ユーモアセンスが抜群でワインとおいしいものに目がなく、合理主義な夫とは違うお気楽なフランス人男性。人生を楽しむ達人との旅が、ほのかなロマンスの香りとともに描かれる。役割から解放されたアンと一緒にサント・マドレーヌ大聖堂などの名所めぐりをしながら楽しみたい、大人のための道草ムービーだ。

『ボンジュール、アン』●監督／エレノア・コッポラ●出演／ダイアン・レイン、アルノー・ヴィアール、アレック・ボールドウィン●2016年、アメリカ映画●本編92分●DVD￥4,180●発売元、販売元：TCエンタテインメント© American Zoetrope, 2016

細谷美香 MIKA HOSOYA情報誌の編集者からフリーランスの映画ライターに。新聞、女性誌、情報誌などを中心に映画紹介やエンターテインメントに関するインタビューなどを担当。青春映画や古い邦画を観るのが至福の時間。

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madame FIGARO.jp

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