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世界を10周した「南極料理人」が作る伝統の味 船乗りが愛した「日本郵船式ドライカレー」を食べる

  • 2020.12.29
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「氷川丸」のカレーが食べられる店があるらしい──。

2020年11月下旬、ツイッターでこんな情報を見つけた。

氷川丸といえば、かつては病院船や貨客船として太平洋を股にかけた船。現在は、横浜の山下公園前で「日本郵船氷川丸」の名前で博物館船として係留している。国の重要文化財にも指定されている記念艦だ。

「日本郵船氷川丸」の公式サイトによると、1930年~1960年の船歴の間に太平洋を横断した回数はなんと254回。戦前の日本で建造されたうち唯一現存する貨客船でもあるといい、まさに横浜のシンボルともいうべき船だろう。

そんな船で船客や乗組員が食べていたカレーとは、いったいどんな一皿なのだろうか。

Jタウンネット記者は、その店がある横浜・関内へ向かった。

元「南極料理人」のレストラン

記者がJR関内駅の北口に着いたのは、すでに空も薄暗くなった17時ごろ。目当てのカレーを出す店は、駅から5分ほど歩いた場所にあった。

レストラン「BAR de 南極料理人 Mirai(ミライ)」である。

 黒いペンギンのロゴが目印だ(記事中の画像はすべて2020年12月7日編集部撮影)
 店は地下にある

店に入ってまず目についたのは、大きな世界地図。そのほかにも壁を見渡すと、大量のオーロラやペンギンの写真が。どうやらいずれも南極に関係するものらしい。

 デンッ、と貼られた世界地図
 南極やオーロラの写真が沢山!

そんな、さながら南極の写真展のような店内で出迎えてくれたのが、この店のオーナーシェフ・篠原洋一さんだ。

 オーナーシェフの篠原洋一さん

高校を卒業して板前になったという篠原さん。

29歳で第33次(1991年~1993年)南極地域観測隊に料理人として同行。帰国後はクルーズ客船の「飛鳥」および「飛鳥II」で14年間料理をし、その間に世界70か国と約200都市(!)を巡ったとのことだ。

そう、店名の「南極料理人」は篠原さん本人のこと。

さらに46歳の時に、今度は第50次(2008年~2010年)南極地域観測隊の料理人としてなんと再びの南極入り。2010年4月に帰国したのち、同年9月に「Mirai」を開店して現在に至るという。と、とんでもない経歴の持ち主だ......!

 世界を10周もしているそうだ
 トイレにも世界各地の写真が。篠原さんが現地で撮影したものだという

噂の「氷川丸カレー」とご対面

氷川丸で提供されていたというカレーについて尋ねると、「ありますよ」と篠原さん。店で出しているのは「日本郵船ドライカレー」の味を継承したもので、店では「南極ドライカレー」という名前で提供しているという。

「この『日本郵船ドライカレー』というのは、110年~120年の伝統がある日本発祥のカレーで、三島丸や氷川丸といった日本郵船の貨客船が現役だったころに船内で出されていたものです。

ドライカレーという名前も、揺れる船でも流れないことからそう言います。

そもそも、昔の船というのは牛肉の部位を一頭分ずつ積んでいたそうですが、一番残ってしまう『すね肉』の扱いに困っていたそうです。

また、昔の船は今ほど空調も良くなかったので、赤道の方なんかに行くと皆ぐったりして寝込んじゃう。それを見た船の司厨長(調理長)さんが、すね肉をミンチにしてカレー味にしたところ、皆食べられるようになったそうです」(篠原さん)

なるほど、まさに船の中で食べるのに最適なカレーとして生み出されたメニュー、ということだろう。

 「第50次南極地域観測隊」と書かれたヘルメット

話を聞いているうちに、猛烈に食べたくなってきた。さっそく南極ドライカレーを一皿注文。が、まずはドリンクを頼んで欲しいとのことだったので、大人しく飲み物を飲みながら待つことにした。

ほどなくして、注文の品が運ばれてきた。いよいよ噂のドライカレーとご対面だ。

 これが「南極ドライカレー」だ!

ライスを覆い隠すように盛られたしっとりとしたルー。キーマカレーに近い感じとでもいうのか、一般的にイメージされるドライカレーよりも水気がある。その上にはフライドオニオンが散りばめられ、傍らにはスライスした卵が添えられている。なかなか豪華な見た目だ。

さっそく一口食べてみると、まず細かく刻まれたたっぷりの牛肉の甘みが口に広がり、その後にルーの辛さがやってきて、時間差で二度うまい。比較的甘口に仕上がっており、小さい子どもや辛いのが苦手な人でも問題なく食べられそうだ。

サクサクのフライドオニオンが良いアクセントになり、卵もルーとマッチしてこれまた美味しい。

篠原さんによれば、「日本郵船ドライカレー」の一般的な定義は、牛肉を100%使用していること、かつフライドオニオンとスライスエッグを添えることだという。また、酵素の働きによって肉を柔らかくするためにパイナップルを加えているなど、少し甘口に仕上げるのも定義とのことだ。

「ただ、細かい作り方に関してはシェフによってそれぞれアレンジが加えられています。Miraiのドライカレーは『日本郵船ドライカレー』の定義や基本的なレシピを踏襲した上で、あまり重たくしたくなかったので、赤ワインではなく白ワインを使って煮込むなどアレンジしています」

 通販で注文することもできるようだ

南極料理人が作る、100年以上の伝統があるドライカレー。お店に足を運ぶのが難しくても通販で取り寄せることもできるそうなので、皆さんもぜひ一度味わってみてはいかがだろうか。

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