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49歳ひきこもり弟の年金保険料を納める姉がコロナで失職 納付継続か、免除か

  • 2020.12.23
きょうだいの年金保険料、支払い続けるべき?
きょうだいの年金保険料、支払い続けるべき?

ひきこもり家族が高齢化し、「収入は親の年金だけが頼り」といった話はよく聞かれます。そのようなご家庭の中には、親の年金収入だけで生活することが厳しいため、ひきこもり当事者の兄弟姉妹から資金援助をしてもらっているというケースもあります。今回、筆者に相談を依頼してきた50代の女性も、ひきこもりのきょうだいに資金援助をしてきた一人です。しかし、失職により、それも難しくなってしまったそうです。

夜も眠れないほど悩む姉

新型コロナウイルスの感染拡大の影響もあり、筆者も最近は、パソコンやスマートフォンを利用したオンライン面談をすることが増えました。今回の相談者は、ひきこもりの弟がいる50代の女性です。パソコン画面に映る女性の顔は不安でいっぱいの様子でした。

「私は新型コロナウイルスの影響で職を失ってしまいました。現在は失業手当と貯蓄を切り崩しながら何とか生活しています。今まで、弟の国民年金保険料を姉の私が支払ってきましたが、それも難しくなりそうです。一体どうすればよいのか悩んでいます…」

そこで、筆者はまず、家族構成などから伺うことにしました。ひきこもりの弟は49歳。80歳の母親と2人で暮らしています。父親は5年前に死亡。収入は母親の公的年金のみで、老齢年金と遺族年金を合わせて月額で約14万円になります。姉は仕事の関係で弟家族とは別の場所に住んでいます。ずっと仕事一筋できたため、現在も独身。今後も結婚の予定はないとのことでした。

弟の国民年金の加入状況を伺うと、20歳から父親が亡くなるまでは父親が支払ってきたそうです。父親が亡くなった後は家族3人で話し合い、収入のある姉が弟の国民年金保険料を支払うことになりました。しかし、その姉も新型コロナウイルスの影響で失業してしまいました。

収入の見通しが立たない中、「今後も弟の国民年金保険料を支払い続けなければならないのか?」というプレッシャーから、夜もあまり眠れなくなってしまったそうです。姉は悲痛な面持ちで筆者に訴えかけてきました。

「やはり無理をしてでも、弟の国民年金保険料は支払った方がよいのでしょうか? 仮に支払いをやめた場合、将来もらえる年金額は大きく変わってしまうのでしょうか?」

「そうですね。弟さんは現在49歳なので、60歳まであと11年あります。仮にあと11年、国民年金を納付し続けた場合と免除申請を利用した場合とで、どのようになるのか比較してみましょうか」

筆者はそう提案しました。

全額免除をした場合、年金額は?

国民年金保険料と老齢基礎年金の関係
国民年金保険料と老齢基礎年金の関係

筆者は国民年金保険料と将来もらえる年金(老齢基礎年金)の関係から説明することにしました。

「ご家族の状況をふまえると、弟さんが免除申請の手続きをすると全額免除に該当するものと思われます。通常の納付と全額免除ではそれぞれ、この(表の)ようになります」

「国民年金保険料は1月当たり1万6540円です。1カ月支払うと年金は年額で約1600円ずつ増えます。一方、全額免除は保険料が0円になります。それでも、全額免除1カ月当たり年金は年額で約800円ずつ増えます。仮に今後11年間、納付し続けた場合と全額免除をした場合の年金額も比較してみましょう」

月額7400円の差に

このまま納付し続けた場合と全額免除をした場合の比較
このまま納付し続けた場合と全額免除をした場合の比較

筆者は表にある合計額のところを指し示しました。

「このまま納付し続けた場合は月額約7万100円の年金がもらえます。一方、全額免除をした場合は月額で約6万2700円。月額で7400円の差になりそうですね」

「思っていたよりも差はつかないのですね。これから全額免除をした方がよいのか…どうすればよいと思いますか?」

「そうですね。それは今、ここで決めることではないかもしれません。この表をもとに、ご家族とよく話し合って決める方が望ましいでしょう」

「はい。そうしてみます」

最後に筆者は姉に質問しました。

「お母さまや弟さんと同居することは考えていないのでしょうか? 同居することで、別々に暮らすよりも生活費は下がると思うのですが」

「今のところ、それは考えていません。実家は田舎なので、仕事を見つけるのが難しいのです…もう少し、このまま頑張ってみようと思っています」

「そうなんですね。分かりました。今は新型コロナウイルスの影響で経済的にも厳しいでしょうが、いつまでもこのような状況が続くとも思えません。仮に、弟さんがこれから全額免除をしたとしても、ずっとそのまま全額免除をし続けるというわけでもありません。お姉さまの経済状況が改善したら、保険料の納付を再開できるかもしれません。今はお姉さまご自身の生活を第一に考えてみてくださいね」

「はい、分かりました。そのように考えると少しは気持ちが楽になるかもしれませんね」

そう答えた姉の顔は幾分和らいだように見えました。

社会保険労務士・ファイナンシャルプランナー 浜田裕也

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