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脳科学者が直伝、1週間で「ご機嫌な人」になれる日記の書き方

  • 2020.12.14
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来年の手帳や日記帳を買うシーズンになりました。1年間を振り返っている人も多いかもしれません。脳科学が専門の細田千尋さんが、ストレスが減り、前向きになれる日記の書き方のコツを教えてくれます。

自宅の机で手帳に書き込む女性の手元
※写真はイメージです
何かと不満がたまりやすい人の特徴

「感謝が足りない……!」

これは、仕事に家事に頑張る妻、夫、上司のために奔走する部下など対人関係でもつ不満要因の一つです。私たちは、子どもの頃から「感謝をしなさい」と教わってきています。感謝が無いことについて不満を持つ人が多い一方、どのくらいの人が、自分が感謝をすることを大事にしているでしょうか?

同じ状況にいても、どのくらい感謝できるかについては個人差がとても大きく、このひとによって違う感謝度合いを特性感謝と言います。この特性感謝は、well-beingの向上につながることが多くの研究から明らかになっています。

“感謝しやすい人”は幸福度が高い

感謝しやすい人(特性感謝の高い人)は、①ストレス反応が起こりにくく、うつっぽくならない、②充実感を得やすい、③主観的幸福感が高い、④自分はほかの人から助けてもらえるという考え方を持つ、⑤楽観的である、ということが示され、総じて感謝をしやすい人は、well-beingが高いことが多くの研究から示されています。

そこで、感謝をするようになれば、well-beingが高くなるのかという因果関係を調べた有名な実験があります。その実験では、一日の中で感謝したことを5つ記録する人たち、面倒だったことを5つ記録する人たち、他者よりも自分が優れている点を5つ記録する人たちの3つに分けて、気分、体調、運動時間、well-being、カフェインとアルコールの摂取量、睡眠時間と質、向社会的行動(人のため、社会のために無私の心で行う行為)が、その3つの群でどのように異なったかを調べました。

感謝を書き出すだけ、1週間で効果が現れる

その結果、感謝を5つ数えることが、ポジティブ気分や人生に対する肯定的な評価の向上、運動時間の長さ、体調不良(病院にかかる回数)やネガテイブな感情の想起の少なさにつながり、well-beingが向上したことを明らかにしました。また、別の研究からは、感謝をし幸福度が上がることで、作業効率や生産性が上がる可能性も示されています。

感謝を数え挙げてもらう期間は、1週間でも効果がみられ、毎日感謝を書き出すほうが効果がより高いものの、週末だけの週1回を10週間続けても効果が見られています。そしてこれは、健康な大人だけでなく、患者さんや、12歳程度の子供たちにおいても同じ効果を生むことが示されています。

「何とかなる」と考えられるようになる

なぜ感謝がwell-beingを高めるのでしょうか? 感謝しやすい人は、ほかの人から何か良いことをしてもらうと、そのことについて「自分のためにこんなことをしてくれた!」と、特別にその行為に価値を高く持ち、思い込みやすい特徴があることが挙げられています(これをスキーマバイアスと言います)。その結果、状況を肯定的に解釈して感謝するので、それがwell-beingにつながるとされています。また、感謝をしやすい人は、物事に対して楽観的に考える傾向があり、ストレッサーに対しても、なんとかなる、と楽観的に自分の中で処理することで、 結果としてwell-beingが上がるのではないかと言われています。

悲しい顔のほうではなく、スマイルマークのキューブを選択した手元
※写真はイメージです
感謝をすることで変化する脳

多くの人は、何かをしてもらうと感謝の気持ちが生まれ、お返しをしようという気持ちが高まります。これは、何かをしてくれた対象に対して感じるだけでなく、その感謝とは全然関係なかった別の他者に対しても、何か良いことをしてあげたいという利他的感情が高まります。

実際、3週間欠かさず、自分が感謝していることを毎日日記につけてもらい感謝の習慣をつけると、人は他者により協力的になり、人間関係を良好にするという結果が示されています。

面白いことに、感謝と利他的行動は、どちらも、脳の中の報酬系と言われる経路と密接に関係する部位(前頭前皮質腹内側部)の活動と関連しており、毎日感謝日記をつけ、感謝が習慣付くと、脳のこの部位の活動も上がることが明らかになっています。

日本人は「申し訳ない」と思わないように注意

ここまで、感謝をする習慣をつけると、ネガティブな気分が減り、幸福感を感じ、利他的行動が増え、well-beingが上がること、さらに、脳の状態まで変化させることについて説明をしてきました。ただし、これらは、主にアメリカなどからの研究報告です。

スペインはアメリカに比べ、感謝をする文化ではないことが知られています。そのスペインにおいても感謝を書き出す習慣や感謝を伝える習慣をつけることで、well-beingが上がることが示されています。

ところが、感謝が重要視されているはずの日本で行われた同様の実験では、well-beingが上がらなかった、という衝撃の結果が出ています。この理由として、日本人は感謝をする時に、同時に申し訳ない、という思いが生まれることが挙げられています。確かに多くの日本人はお礼を言う時に、「○○していただいて申し訳ありません、ありがとうございます」と言うのではないでしょうか。

純粋な感謝の気持ちがwell-beingを上げることは十分に示されているのですから、私たち日本人は、申し訳なかったという思いをかき消すくらい、どれだけありがたかったか、という感謝の気持ちに集中して、感謝を日々見つけていくことが、well-beingを上げ、心身ともに健康的な生活を行っていくことにつながるのでしょう。

<参考文献>
・Wood, A. M., Maltby J, Gillett R, Linley PA, Joseph S. The role of gratitude in the development of social support, stress, and depression: Two longitudinal studies. Journal of Research in Personality. 2008; 42(4): 854-871.
・Wood, A. M. Joseph S, Lloyd J, Atkins S. Gratitude influences sleep through the mechanism of pre-sleep cognitions. Journal of psychosomatic research. 2009; 66(1): 43-48.
・Boehm JK, Vie LL, Kubzansky LD. The promise of well-being interventions for improving health risk behaviors. Current Cardiovascular Risk. 2012; 6(6): 511-519.
・Paul J. Mills, Wilson K, Punga MA, Chinh K, Pruitt C, Greenberg B, Chopra D. The Role of Gratitude in Well-being in Asymptomatic Heart Failure Patients. Integrative Medicine: A Clinician's Journal. 2015; 14(1): 51.
・Kyeong S, Kim J, Kim DJ, Kim HE, Kim JJ. Effects of gratitude meditation on neural network functional connectivity and brain-heart coupling. Scientific reports. 2017; 7(1): 5058.
・Emmons RA, McCullough ME. Counting blessings versus burdens: an experimental investigation of gratitude and subjective well-being in daily life. Journal of personality and social psychology. 2003; 84(2): 377-389.
・Karns CM, Moore WE 3rd, Mayr U. The Cultivation of Pure Altruism via Gratitude: A Functional MRI Study of Change with Gratitude Practice. Front Hum Neurosci. 2017
・相川 充(2012).幼児の感謝表明を促すソーシャルスキル・トレーニングの効果.日本教育心理学会第54回総会発表論文集, 736.
・相川 充・矢田さゆり・吉野優香(2013).感謝を数えることが主観的ウェルビーイングに及ぼす効果についての介入実験.東京学芸大学紀要総合教育科学系Ⅰ,64,125-138.

細田 千尋(ほそだ・ちひろ)
博士(医学)
東京大学大学院総合文化研究科研究員/科学技術振興機構さきがけ研究員/帝京大学医学部生理学講座助教。東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科認知行動医学卒業後、英語学習による脳の可塑性研究を実施し、研究成果が多数のメディアに紹介。その研究をきっかけに、「目標達成できる人か?」を脳構造から判別するAIを作成し特許取得。現在は、プログラミング能力獲得と脳の関連性、 Virtual Realityを利用した学習法、恋愛と脳についても研究をしている。

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