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バラエティー出演が増える「鬼滅の刃」声優、その理由は人気だけではなかった!

  • 2020.12.14
人気漫画「鬼滅の刃」全巻(2020年12月、時事)
人気漫画「鬼滅の刃」全巻(2020年12月、時事)

記録的な大ヒットを続ける「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」の興行収入が300億に迫り、歴代1位の「千と千尋の神隠し」(308億円)を超える日がいよいよ近づいてきました。

アニメ制作会社ufotableが手がける映像とともに称賛を集めているのは声優たちの熱演。公開当初から現在まで、「声優に芸能人が入っていなくて本当によかった」「声優だからストーリーに没入できた」などと声優をたたえる声が上がり続けています。

その勢いは劇場版アニメのみにとどまらず、このところ目立つのはバラエティー番組への出演。「鬼滅の刃」の声優たちがナレーションやゲスト出演で存在感を発揮しているのです。

主人公の竈門炭治郎を演じる花江夏樹さんは「ニノさん」(日本テレビ系)、「人気の秘密を考察!売れっ子ちゃん」(TBS系)、「1億人の大質問!?笑ってコラえて!」(日本テレビ系)、「ウワサのお客さま」(フジテレビ系)、「99人の壁」(フジテレビ系)などに出演。さらに、11月22日には「情熱大陸」(毎日放送、TBS系)でフィーチャーされました。

炭治郎の妹・竈門禰豆子を演じる鬼頭明里さんは「有田プレビュールーム」(TBS系)、「動物スクープ100連発」(同)、「クイズピンチヒッター」(フジテレビ系)、「ザ!世界仰天ニュース」(日本テレビ系)、「しゃべくり007」(日本テレビ系)などに出演。

炭治郎の同期・我妻善逸を演じる下野紘さんは「CDTVライブ!ライブ!」(TBS系)、「アンタッチャブルのおバカワいい映像バトル」(フジテレビ系)、「ウワサのお客さま」、「10万円でできるかな」(テレビ朝日系)、「お願い!ランキング」(同)などに出演。

同じく炭治郎の同期・嘴平伊之助を演じる松岡禎丞さんは「くりぃむクイズ ミラクル9」(テレビ朝日系)、「I LOVE みんなのどうぶつ園」(日本テレビ系)、「ワールドドキドキビデオ」(同)、「お願い!ランキング」(テレビ朝日系)、「10万円でできるかな」(同)などに出演しました。

声優のポジションが上がっている

その他でも、12月5日の「芸能人が本気で考えた!ドッキリGP」(フジテレビ系)で“鬼滅の刃 人気声優に全集中ドッキリSP”、11月29日と12月6日の「ボクらの時代」(同)でも“鬼滅の刃・声優集合”が放送されました。明らかに出演が増えているのは「映画の爆発的な人気にあやかって視聴率を上げたいから」だけではありません。

実はこのところ、テレビ業界で声優を再評価する動きがあり、深夜番組を中心に起用が増えていました。これまでは「今週のテーマは声優」「声優コーナー」などのように特別視され、ごくたまにフィーチャーされるだけでしたが、今年は通常放送の中で芸人やアイドルなどと並んで出演する機会が増えているのです。また、出演時間の短いコーナーゲストではなくメインゲストとして登場することも増えました。

バラエティーにおける声優というポジションが明らかに上がっているのです。中でも、象徴的だったのは鬼頭さんが出演した「しゃべくり007」。レギュラー陣から、「演じてほしいさまざまな声」をムチャぶりされた鬼頭さんは声色を変えながら、見事な演技を披露し、絶賛を集めました。

もちろん、鬼頭さんの実力あってこその盛り上がりですが、そもそもが「声優さんってすごい」「こんなに演技力があるんだ」という技術へのリスペクトが感じられる演出だったのです。

もともと、人気声優のバラエティー出演には若年層の個人視聴率アップという狙いがあり、今春以降、その傾向が増していました。さらに劇場版「鬼滅の刃」のヒットによって、その流れが加速しているのです。

バラエティーに出てほしくないファン心理

双子の子育てに励み、猫と遊ぶ花江さんの優しいキャラクターや、バラエティーの演出に難なく笑顔で対応できる鬼頭さんのタレント性など、声以外の魅力も伝わり始めているだけに、各局の制作サイドは今後も声優のキャスティングを進めていくでしょう。

とはいえ、声ではなく顔が表に出ることを嫌う声優や、バラエティーのナレーションを避けたがる声優がいるのも事実。また、「過去作の名セリフばかり言わせようとする」というワンパターンな演出にへきえきしている声優もいるようです。

さらに「声優にはバラエティーに出て、芸人のようなことをしてほしくない」というファン心理もあるだけに、それを損ねることなく、どう起用していくのか。制作サイドにとっては魅力的なカードが増えた半面、センスを問われているのかもしれません。

コラムニスト、テレビ解説者 木村隆志

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