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初心者の運転練習に最適? 東京23区なのに人が全然いない江東区「若洲」とは【連載】東京下町ベースキャンプ(6)

  • 2020.11.27
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かつて江戸近郊の農村部だった東京東部の「下町」。そんな同エリアを、ブログ「限界ニュータウン探訪記」管理人の吉川祐介さんは新たな「拠点」と位置付け、再解釈を試みています。

車社会に対応しつつある東京の下町

公共交通網の発達した東京23区での暮らしは、自家用車を所有する必要がないとよく言われます。自家用車の保有にかかる税金や維持費の負担は敬遠され、近年、特に都市部における30歳未満の若年層の自動車保有率が低下。「若者のクルマ離れ」などと言われています。

しかし葛飾区や江戸川区、足立区などの23区東部の街並みを見ると、都心部と比較してやや貧弱な鉄道網を補完するバス路線網が非常に充実しています。その反面、個人の自動車利用を前提とした都市構造の地域も多いことに気が付きます。

コンビニエンスストアなどの小規模な商業施設でも駐車場を備えている所は珍しくなく、また近年の都心近郊の住宅街でよく見られる木造3階建ての戸建て住宅は、1階部分を駐車スペースにしているものが目立ちます。

かつての下町で、事業所を持たない一般民家に専用の駐車場が確保されていることは極めてまれでした。道路の拡幅や区画整理、再開発が進むにつれてその傾向は強まっており、クルマ離れとは言いつつも、街は車社会に対応したものへ変貌しつつあるのが現在の下町の姿です。

ペーパードライバーを生む東京暮らしの環境

そんな下町での暮らしは、自動車がなくても生活は十分成り立ちますが、自動車が本来の利便性を発揮できる場面が多々あることも確かです。

今日はレンタカーやカーシェアリングサービスが隆盛であり、所有しなくても必要に応じて自動車を利用できる環境が整えられており、昨今の新型コロナウイルスの影響で、密を避けるためカーシェアの利用がより進んでいるとも言われています。

ただ筆者もそうでしたが、自家用車を持たない東京の暮らしが長くなるにつれて、俗に言うペーパードライバーの期間は延び続ける一方でした。

自動車の免許は保有していても運転する機会がなく、いざ運転しようにも東京都内は交通量も多いため、久々の運転には尻込みしてしまう人がいても不思議ではありません。しかし、23区でもそんなペーパードライバーの方が気兼ねなく練習ができる地域が存在しているのです。

都内にも関わらず人がほぼいない公園

京葉線の新木場駅から、物流倉庫が立ち並ぶ新木場若洲線を経て、お台場方面へ結ぶ東京ゲートブリッジのたもとに、若洲という工業地域があります。

ここは江東区に属しますが、若洲海浜公園(江東区若洲)という大きな公園があり、ゴルフ場やキャンプ場が併設されているので、読者の中にも訪問されたことのある人はいると思います。

若洲公園駐車場。週末は満車になるようだが、平日の利用者はほぼ皆無に近い(画像:吉川祐介)

しかし、この公園は埋め立て地の工業地域で周囲に住宅街は一切存在しないためか、都バスも一応運行されているものの、平日の利用者数は極めて少ない公園です。

新木場と若洲をつなぐ若洲橋のたもと、若洲ゴルフリンクス(同)、ヨットハーバー側の若洲海浜公園駐車場はそれなりの駐車台数が見られるものの、ゲートブリッジの下、キャンプ場側にある江東区立若洲公園駐車場は、少なくとも筆者が訪問する平日はいつもほぼ皆無と言っていいほど利用者の姿がありません。

いくら平日と言っても、東京23区でこれほどまでに利用者の少ない公園や駐車場を筆者は知りません。やはり立地の不便さがネックになっているのでしょう。率直に言って、ここに車を止めても公園以外に訪問できる場所はないので、平日の利用者が少ないのは無理もないかもしれません。

駐車場には仮眠する人も

若洲公園駐車場の利用料金は1回の駐車につき500円で、24時間営業・年中無休なので特に利用時間の制限はありません。公共の駐車場のため、集会や暴走などの迷惑行為は固く禁止されているものの、あまりに利用者が少ないのでそれを見とがめる人もいないのが現状です。

若洲海浜公園。近隣に住宅地などはないので、公園内を散歩をする人も見かけない(画像:吉川祐介)

たまに利用者の姿を見かけますが、車内で仮眠していたり、自身のSNSなどにアップするためでしょうか、駐車場内に三脚を立てて愛車の撮影などをしていたりと、純粋な公園利用者ではないケースが多いです。筆者も、妻の車庫入れの練習のためにここを利用しましたが、同じ場所で何度も車庫入れを繰り返す車に関心を払うような人もいませんでした。

また若洲海浜公園の周囲は物流倉庫が多く、ゲートブリッジへ向かう東京港臨港道路を除いて、駐車車両が多いものの車両の往来はほとんどなく、歩行者の姿もありません。公道は練習場ではありませんが、公道でなければ運転の練習にならないのも事実であり、運転技術の回復のためにはこうした事故リスクの少ない地域を選定するのが重要です。

23区東部エリアの持つ「都市の余白」

若洲は、どの地域から訪問するにしても遠く、若洲に至るまでの道路は交通量が激しいので、運転に自信がないから若洲に向かうのは矛盾した話かもしれません。

若洲から都心方面を望む(画像:吉川祐介)

しかし既に述べたように、若洲に限らず現在の23区東部の外縁部は、自動車利用を想定した道路事情の良い地域が多く、交通量の少ない裏通りでも車両の運転がしやすい幅員を備えています。

「郊外に行けば、より運転しやすいのでは」と考える人もいるかもしれませんが、実は23区のさらに外側、隣接する千葉県や埼玉県などの首都圏郊外エリアは、23区東部と比較すると道路事情の良くない地域が多く、渋滞も激しくかえって運転の練習には不適切なことが多いのです。

元々東京は道路や公共施設に掛ける予算が他県とは大きな差があります。そのため、下町は車が不要と思われがちですが、実はその利用に適した環境が存分に整えられた都市であり、運転の練習に適した環境が整っているのです。

それ以上に、筆者が今回お伝えしたいのは、皆で若洲に行って運転技術を磨こう、などという話なのではありません。23区東部エリアは都心に近接した利便性の高い都市部でありながら、いわばこのような都市の「余白部分」も豊富であるということです。

道路の幅員の広さや人口密度の少なさも、言ってみれば都市の「余白」が大きいということです。家賃などの費用を抑えた拠点を構えるにしても、公共の空間として開放された「余白」を活用することで、物件広告からは見えてこないプラスアルファがあるのではないでしょうか。

吉川祐介(ブログ「限界ニュータウン探訪記」管理人)

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