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【西村宏堂のOut of the Box!#07】仕事が楽しい30代独身女性。結婚や出産への圧にモヤモヤ

  • 2020.11.14
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●西村宏堂の“Out of the Box!”#07

こんにちは、西村宏堂です。
朝晩のキリッとした寒さに冬の気配を感じるようになりました。
早いもので今年もあと1カ月半で終わります。
今年は世界中の誰にとっても、生活の根本が変わった1年になったのではないでしょうか。

今年の私は言葉を使って思いを伝える機会が増えました。
何をどのように伝えるのが良いのかを考える、学びの多い年でした。
新しいことを楽しんで取り組み、アップデートした価値観を取り入れて、来年も成長したいと思います。

毎回、それぞれの記事にいただいたすべてのコメントをチェックしています。
ぜひみなさんも私に聞いてみたいこと、相談したいことを文末のコメント欄かから送ってくださいね。
お待ちしています。

さて、今回はこんな相談が届きました。

●宏堂さんのアンサー

仕事や結婚、引っ越しなど、人生には人それぞれの岐路があります。からだのタイムリミットのある出産や、年齢制限のある試験のように、中には時間の制約を受ける物事もありますね。

何かを選べば、かわりに何かを手放さなければならないことも多い──だからこそ、「本当にこれでいいのかな」と迷うほど、周りの声が気になるかもしれません。

今回は、結婚や子どもを持つことについて、そして人生の岐路に立ったとき、自分の足で前へ進むためにはどうしたらいいのかを一緒に考えてみたいと思います。

朝日新聞telling,(テリング)

結婚しないと幸せになれない?

結婚や出産よりも「今は仕事が楽しくて、もっと頑張りたい」という相談者さん。でも、その選択で本当にいいのか──と自信が持てず、周りの声にモヤモヤしてしまうのですね。

女性にとって、30歳前後はライフステージが変化しやすく、それぞれの道が大きく分かれていく年代だといわれています。周りの人の選択が気になり、その声が耳に入ってくることも増えるのでしょう。

そんなとき、先に結婚や出産という道を選んだ人が「私は結婚して、子どもを持ててこんなに幸せ」というふうに自身の喜びを表現したり、さらに「周りの人にも幸せになってほしい」と感じたりするのは自然なことかもしれません。

でも、「結婚しない人生なんてきっと後悔するよ」「子どものいない人は本当の幸せを知らない」といった発言には気をつけて。そうした言葉って、善意のアドバイスを装った“価値観の押しつけ”にすぎません。

自分は自分、相手には相手の人生があります。みんなにいろいろな選択肢がひらかれていることが大事なのであって、自分の価値観を相手に押しつけてはダメ。どんなに親しくても、無理に同じ道を歩むのではなく、お互いがそれぞれの道を応援しあうことが本当の友情や愛情なのではないでしょうか。

「結婚した人はみんな幸せ」なわけでもない

すばらしいパートナーや子どもに恵まれるのは素敵なこと。結婚や子どもを持ってはじめて知る喜びもきっとあるでしょう。けれども、だからといって「結婚した人はみんな幸せ」なわけではないし、子どもを持つことが必ずしも幸せとはかぎらない──ということにも想像力をはたらかせてみてください。

世の中には、親子関係や家族について悩む人は少なくありません。私の周りには、親から暴力を受けて育った人や、配偶者を事故で失って大きな悲しみの中にある人、結婚生活に苦しんで離婚した人もいます。いろいろな人生を知れば知るほど、「家族を持てば安心」「みんな、結婚してこそ、子どもを持ってこそ幸せ」という考えには、首をひねってしまうのです。

一方、パートナーや子どもを持たない人生には、自分ではコントロールできない人間関係から自由になり、悩んだり、疲弊したりしなくてすむ──という側面もあります。たとえば、私なら、子どもを持つ人生のかわりに、日々のエネルギーやお金や時間を思う存分、仕事や好きなことに注ぐことができます。それはつまり、手放すものがあれば、かわりに何かを得られるということ。物事は考え方次第なのだと思います。

だからこそ、「自分が何を一番大切にしたいのか」を見つめることが大事。
「自分に得られないものがあるなら、そのかわりに手にできるものは何?」「何かを手放しても、自分が本当に追求したいものは?」──その問いの答えは、誰でもないあなたが自分自身と向き合ってこそ得られるものです。

口を出す他人は責任をとってくれない

親が、友だちが、世間がこう言うから──。
そんなふうに、自分の生き方を誰かの手にゆだねてしまうのは、とても怖いこと。だって、他人の言うとおりに生きて、将来あなたが後悔しても、彼らは何の責任もとってくれないでしょう?

うるさく口出しする人もいるけれど、私が思うに、知識や想像力、デリカシーのない人ほど、他人の人生に口を出したがります。特に、彼らが好む「普通は」「みんな」「女性なら」「人は」「常識」といった“大きな主語”や“実体のない言葉”には要注意!

こうした言葉って、誰かへの批判や非難の根拠によく使われますが、とてもあいまいなもの。そうした言葉の使い方にすごく気をつけなければいけません。容易には口にすべきではないと思います。

価値観や考え方は時代や場所によっても変わる

「結婚するべき?」「子どもを産まなければいけない?」「一人前とは?」
そうした価値観や考え方は、時代や場所によっても変わります。

世界には、本人の意思に関係なく親や親族が結婚を決める国もあるし、結婚や子どもを迎えなければ「一人前」と認められないコミュニティもあります。私の周りには、そんな場所に生まれ育った人もいて、そうした価値観に縛られる苦しみは遠い世界の話ではありません。日本でも、かつては国家や家の繁栄のために結婚や出産を強いられた時代がありました。私の祖母は結婚相手を自分で選べなかったそうです。

でも、今の日本はどうでしょう。
結婚するか、子どもを持つかという“人生の選択”を国家や他人から強要されることなく、自分で決められるようになりました。先人たちが望んでも得られなかった「自分の人生を生きられる時代」になったのです。

歴史に目を向ければ、貧しい国や大変な時代ほど、労働力や国力のために早くに結婚して子どもを多く産むことを強いられてきたことがわかります。

「自分の人生を生きられる時代」って平和な社会である証拠。けっして当たり前のものではありません。せっかくそんな時代に生まれたのに、他人の価値観や実体のない“世間の常識”に自分の生き方をゆだねてしまうなんて、もったいないと思いませんか?

朝日新聞telling,(テリング)

人生のハンドルを他人に渡さないで

好きな自分で好きな場所へと向かうために、一番大切なのは「自分の人生のハンドルを自分で握る」こと。そして、そのためには、自らを縛りつけているものの正体を見極めて、自分を解き放つことが必要です。

誰かの価値観を押しつけられたとき、「私の感じ方は私のもの」「自分の生き方は自分で決める」──そう言い切るための強さは“知識”と“体験”から生まれると思っています。

それはつまり、多様な人の人生を知ること。
異なる文化や社会環境、歴史などを学び、さまざまな場所や時代の価値観に触れることで視野は広がります。出会った人から直接話を聞くのもいいし、知らない土地へ旅したり、本を読んだり、いろいろなスピーチやドキュメンタリーに触れるのもGOOD。

この世界には結婚や出産をしなくても幸せに生きている女性はたくさんいますし、子どもを持ちながらイキイキと働いている人、年を重ねてから伴侶に出会った人、養子を家族に迎えた人もいます。今の時代は医療が進み、歳を重ねてから子どもを授かるケースもあるようです。
相談者さんの例であれば、「仕事への情熱と結婚生活は二者択一でどちらかしか選べない」「いま産まなければ、親になれない」──とはかぎらないかもしれませんよ。

自分自分の心に尋ねてみて、“認証スタンプ”を押そう

もし未来の自分が後悔しないか不安なら、今の自分の心に尋ねてみてOKが出たら、自分の決断に“認証スタンプ”を押してみませんか?

誰かの意見に流されるのではなく、その時々の自分の心が決めたことなら、大きな後悔はきっと生まれないと思うんです。うまくいかなくて方向を変えたっていいし、悩む過程だって人生。そんな風に「人生のハンドルを他人にゆだねず、自分で歩いていける人」こそが「一人前」なんじゃないかな──と私は思います。結婚や子どもの有無に関わらず。

「何のために生きているの?」

その答えはみんな違います。そして、それは自分で決めるもの。幸せな生き方ってたくさんあります。タイミングだって人それぞれ。ぜひ自分を愛する選択をしてくださいね。

トップ: ワンピース、スカーフ(すべてPierre-Louis Mascia) パンツ(MISSONI) ヴィンテージネックレス(すべてSometimes Store) リング(ATELIER SWAROVSKI)
文中上: ジャケット、スカート(ともにUJOH)
文中下: ジャケット、シャツ(ともにPierre-Louis Mascia) ネックレス(すべてNEWSIAN) ヴィンテージベルト(Sometimes Store)

■西村宏堂のプロフィール
1989年東京生まれ。米パーソンズ美術大学卒。日本語、英語、スペイン語を操るメイクアップアーティストにして僧侶、LGBTQ活動家でもある。独自の視点と経験から「性別も人種も関係なく皆平等」というメッセージを発信。ミス・ユニバース世界大会などでメイクを行う他、ハリウッド女優からも高い評価を得、一般女性やLGBTQ向けのメイク指導にも力を注ぐ。国連、米イェール大学、早稲田大学など講演多数。NHK、BBC、英TIME誌、伊VOGUE誌などに取り上げられ、Netflixの人気番組「Queer Eye」にも出演。

■原田潤のプロフィール
合同会社アーキペラゴ代表。グラフィック&WEBデザイン、文章、写真、旅する本屋など、様々な手段で価値あるコトを伝える媒介者として活動しています。外界の刺激を受け取りすぎるといわれるHSPですが、自分の特性を生かして社会と関わっていければと。慶應義塾大学法学部、桑沢デザイン研究所卒。東京生まれのミレニアル世代。好物は本と旅と自転車、風の匂い。

■佐藤将希のプロフィール
フォトグラファー。福原 佑二氏に師事後、2019年に独立。雑誌、web媒体、ブランドのカタログ等をメインに東京を拠点に活動中。1989年 仙台出身。

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