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詩人・伊藤比呂美が薦める3冊。【美しい言葉を味わえる本vol.1】

  • 2020.11.9

詩人・伊藤比呂美に聞いた、言葉にまつわる4つの質問。

──⽇本語の魅⼒はなんだと思いますか?

日本の文化風土にむすびついた言語というところ。 

──あなたにとって美しい⾔葉とは?

美しいと言葉をむすびつけたことがあまりありませんでした。

──あなたはどのようにして美しい⾔葉、⾃分らしい⾔葉を培ってきましたか?

本を読む。

──「本」や「詩集」などを読むことは、⾃分らしい⾔葉を築く上で重要だと感じますか?

もちろんです。

 『ドリトル先生アフリカゆき』 著/ヒュー・ロフティング  訳/井伏鱒二

地の文の語りの基本のような単調さに会話文の人間味たっぷりの鮮やかさ。ちょっと子どもにはわかりづらくても文化をぎゅうづめにしてあるような言葉を選び取るたしかな自由さ。さすが……とおとなになってから感じ入りました。

 『ハックルベリー・フィンの冒けん』 著/マーク・トウェイン  訳/柴田元幸

日本語の表記、字づらからぎくしゃくして、ハックやジムの置かれた社会の人間の生きざまを端的にあらわしているのでした。ハックがゆうかんだったのと同じくらい、この翻訳者もゆうかんに、川の中をすすんでいったのだろうと思いました。

 『グリム童話集』 著/J・グリム、W・グリム  訳/金田鬼一

グリム童話はドイツのみんなをあつめたもののはずですが、はて……と考え込みたくなるくらいの伝統的な日本語の妙があり、ドイツ語から離れ、日本語に分け入るうちに、あらゆる時代のあらゆる人間たちの無意識にたどりついて、その根っこをぎゅっとつかんで離さないような、そんな読後感があるのでした。

Photo: Shinsuke Kojima Editors: Gen Arai, Mina Oba

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