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「日本ロス」に悩む中国人女性たちは、今何を思う?

  • 2020.11.4

中国では、2020年10月の国慶節休暇が中秋節休暇と重なり、通常より長い8連休となりました。この間、国内旅行を楽しんだ人は6億3,700万人にのぼっています。中国の旅行業界は10ヵ月ぶりに一息ついたといえるでしょう。しかし海外への旅行はいまだかなわず、海外への欲求はこれまでになく高まっています。中でも最も人気の高い日本へ行けない“日本ロス”現象は顕著になっているようです。

■日本は治安の良さで人気

ここ数年、中国人の海外旅行人気ランキングでは、日本とタイの2トップはほぼ不変です。両国の親切な国民性が、高い評価を得ているようです。日本では、外国人観光客が詐欺にあう可能性が低い上、「近いこと」「空気がきれいなこと」「漢字圏であること」「治安がよいこと」等、多くのアドバンテージがあります。

中国人が日本で最も驚愕するのは、小学生の登校風景です。小さな子が1人で、バスや電車に乗る光景は、中国では考えられません。誘拐OKとアピールしているようなものだからです。中国では両親が車で送迎するか、公共交通機関では祖父母が付きそうケースが一般的です。

小学生の登校風景は、日本の治安の良さを象徴しています。これは海外の女性旅行者にとって、大きな安心材料です。

■複合アプリ「小紅書」

中国ではDX(デジタルトランスフォーメーション)が進み、日本を大きく上回るネット社会を形成しています。例えば中国の小売総額に対するネット通販比率は、25%近くありますが、日本では7%に達していません。また中国では、Google系やFaceBook系のサイトが利用できない分、独自のアプリが繁栄しています。抖音(海外名TikTok)は、その代表ともいえます。

またTikTokの他にも、いくつもの人気投稿シェアアプリがあります。その1つが「小紅書」です。2020年9月の月間アクティブユーザー数は1億5,538万人、モバイルアプリ全体ランキングの28位です。

小紅書は2013年、上海において海外商品のショッピング、そして口コミをシェアする活動からスタートしました。やがて、これらの情報力を活かし、独自の越境Eコマースサイトを構築します。2019年の資料によれば、ユーザー割合は女性86.42%、35歳以下84.4%と、若い女性の圧倒的支持を受けています。誕生当初から口コミとネット通販が融合した個性的なアプリでした。

■日本旅行の最新型

その「小紅書」は中国人女性観光客にとって、必携のガイドブックともなっています。とくに日本は、隅から隅まで徹底解剖されています。例えば、京都嵐山のカフェ、「アラビカ京都」や、銀閣寺近くの「よーじやカフェ」へ、中国人女性を大量動員したのは「小紅書」の力に違いありません。

中国人女性は評判の場所へ出向き、「やっぱり来てよかった」と納得する感覚が好みのようです。「自分の目を付けた投稿は正しかった」と気分も高揚します。それに投稿者は、ほとんど女性ですから安心です。

「小紅書」を頼りに綿密な旅行計画を立て、一人旅を楽しむ中国人女性もたくさんいます。日本語が話せなくても、困ることはまずないそうです。

■日本でリラックス

中国人は、国内では常に緊張を強いられています。交渉社会のため、自己主張は欠かせず、スキは見せられません。上司や顧客に遭遇すれば、いちいちヨイショしなければなりません。それらにうんざりすると中国人は「圧力大!」(プレッシャーがきつい)を連発し始めます。日本へ行けば、そうした現実を忘れ、思い切り肩の力を抜くことができます。

訪日中国人数は2010年の141万人から2019年には約959万人と10年で7倍になりました。ビザの緩和など外部要因を除くと、日本にリラクゼーションを求める、リピーターの増加が大きいと考えられます。

2018年ごろまで主流だった「日本のこんなところに驚いた」スタイルの口コミは、すっかり影を潜めました。それだけ互いの理解が深まったといえます。その原動力は、日本の隅々まで体験し尽くそうとする、若い女性たちの行動力だったのでしょう。

その行動力が、コロナ禍により強制中断されています。日本では国内観光が回復し、約80万の日本在留中国人による、「小紅書」などへの投稿も再び盛んになりました。中国人女性リピーターたちの“日本ロス”感覚は、これらに煽られますます高まっているのではないでしょうか。

文・高野悠介

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