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マイノリティ向けマッチングアプリの起業家が語る「現代の出会い」

  • 2020.10.29
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マッチングアプリ先進国のアメリカで、アジア人専用のサービスとして累計13万4281組以上がカップリングに成功した実績(2020年10月現在)を持つ「EME hive」(「East meet East」から改称)。

現在はアジア人特化型からマイノリティ向けサービスへと事業を拡大し、進化を続ける「EME hive」(以下、EME)の日本人ファウンダー時岡真理子さんは連続起業家としても知られています。「社会貢献」が人生のテーマだという時岡さんに「EME」立ち上げの経緯や、これまでのキャリア、コロナ禍での出会い方の変化について伺いました!

「EME hive」をスタートしたきっかけは?

アメリカの大学を卒業してから日本に帰国し、米系外資系企業で日本オフィスで企業向けにソフトウェアの販売をしていました。東証一部上場企業のトップに会計ソフトを売る仕事はお給料も安定しており、取引き額も何十億円と規模が大きかったのですが、「世の中のためになっているの?」と疑問視するようになり、充足感の得られない自分がいました。

会社員時代から漠然と起業したいという気持ちはあったのですが、企業にいたので知識もそこまでなかったですし、勇気もなかったんです。そんなとき、オックスフォード大学のソーシャルアントレプレナーシップを見つけ、猛勉強をしてイギリスに渡ることにしました。

最初に起業した教育系モバイルアプリの「Quipper」(2015年にリクルートが約45億円で買収)は、元DeNAの創業メンバーの渡辺雅之さんを知人から紹介していただき、一緒に創業することになりました。教育系アプリは渡辺さんのアイディアでしたが、もともと私の中に「社会貢献をしたい」という想いがあるので「Quipper」の立ち上げに参画したんです。渡辺さんはすでにDeNAの起業から会社を大きくしていくという一連の流れを経験していたので、とても助けられましたね。

プライベートでは私も婚活を頑張っていた時期があり、 私は日本人の方がいいなと思っていたのですが、イギリスに住んでいたこともあって相手探しに苦労していたんです。マッチングアプリで知り合った日本人の方とお付き合いをしたこともありましたが、残念ながら別れてしまって。でも、とても素敵な方だったので、マッチングアプリのポテンシャルを確信。自分のようにパートナー探しに困っている方の役に立ちたいと思い、マッチングアプリ最大の市場をもつニューヨークに渡りました。

さまざまな人種がいるNYで、あえて“アジア人”に注目した理由は?

現在はサイト名を「East meet East」から「EME hive」に改称し、アジア人だけでなくヒスパニックやブラック、LGBTQ+といったマイノリティにフォーカスをするサービスを強化し、事業を拡張中です。“hive(ハイブ)”とは蜂の巣という意味があり、マッチングアプリを通してマイノリティのコミュニティを構築していけたらと思っています。

2013年の立ち上げ当初からアジア系にフォーカスした理由としては、アジア人の私が結婚を考えた時、結婚は家族も大きく関わってくるものだと思ったんです。両親は日本人なので「相手が毎日ピザやハンバーガーを食べる食生活が当たり前だとしても、理解してくれるかな?」と考えたこともありました。

2010年の国税庁の調査では、海外在住のアジア人のうち、72%がアジア人同士で結婚するという統計が出ているそうです。また、結婚によって人生の成功が決まると思っているアジア人が54%に対し、そのほかの人種は34%と低く、ここでも人種間で結婚に対する考えにも差が出ると知りました。また、アジア人は成人を迎えた後も親と同居する率が白人に比べ2倍ほど高いことから見ても、結婚と家族の関係が密接なんです。

また、白人はルックスなどビジュアルから相手を選ぶ傾向が高いのに対し、アジア人はどこの大学を卒業したか、どういう職業に就いているかなど、相手を選ぶポイントも人種によって若干変わってきます。アメリカにいるアジア系の移民の人たちは、親が認めた人と結婚したいという意識も強い。こうして徹底的に分析を行い、同じ文化背景を持つアジア人同士のマッチングアプリをスタートすることにしました。

他のマッチングアプリとの違いや他にはない機能は?

2018年半ばからライブ配信機能を追加したのですが、現在はライブ配信機能が主軸になっていて、そこがEMEの強みだと思っています。昨年はライブ配信の売上が6.4倍になったというデータもあるんです。

当初は通常のマッチングアプリ同様にテキストでのやり取りが主流でしたが、テキストが苦手な方や、文字だけだと相手の素が見えにくいなどと言った課題がありました。ライブ配信を利用するのはZ世代が多いのですが、カジュアルに友達と交流する感覚でリアルに相手のことが分かるのも大きいです。

マイノリティはコミュニティ構築が非常に重要なので、ライブ配信を使って複数人で話すことでコミュニティが生まれるということも強みだと思います。EMEを利用してくださるユーザーの方からは、生涯のパートナーはもちろん、生涯の友人を見つけたとも言っていただけることが多いんですよ。

また、EMEでは「One to One Match」という、よりマッチングの可能性が上がる機能をつけています。この機能をつけたことでアクティブ率が4倍上がったことがわかりました。写真重視のマッチングアプリよりも、内面や育った環境、現在の職業を重視するアジアならではのカルチャーを踏まえた上で、文化的価値観をアルゴリズムに取り入れています。また、プロフィールに使う写真も一枚目が重要なので、マッチング率を上げるために最適な写真をEMEの方で選び、入れ替えるなどしています。

実際にアプリをはじめて分かったことは?

ユーザーのライブ配信への反応はとても好調です。1日の配信時間の平均が120分、配信の視聴時間も1日80分にのぼります。テキストだけでは分からなかった相手の雰囲気や素の部分がライブ配信だと分かるんですよね。

立ち上げ当初はアジア人の中でもそれぞれ文化が違うので、中国人は中国人、韓国人は韓国人と国ごとにマッチすると思っていました。でも、EMEのユーザーは移民の第二世代が多く、いわゆるアメリカで育ったアジアンアメリカンが多いので、思ったほどその傾向は強くありませんでした。それでもアジア人という括りでは似たような文化で育っているので、価値観は似ています。

ライブ配信を始めてからスパニッシュ系のユーザーも増えたのですが、同じような傾向がありますね。独自の文化がそれぞれあるのでスパニッシュはスパニッシュ同士でハングアウトしていることが多いようです。最近ではユーザーの人種も多様化してきたので、アジア人向けだけではなく「EME hive」としてマイノリティ向けのサービスを強化していくことにしました。

コロナ禍での出会いはどう変わってきた?

利用者の数字面では4月に2割ほど増えましたが、EMEは熱狂的なファンに支えられているのでコロナだから利用者が増えた、減ったなど、大きな変化はありませんでした。

ただ、この状況で「家族を持ちたい」と考える人が圧倒的に増えましたね。ロックダウンに突入し、家にいないといけない、家族としか会えないという状況は、人々の考えを確実に変え、結婚したいというニーズを増やしたと思います。

ですがコロナ禍ではマッチングアプリで出会っても、すぐに会おうという流れにはならないので、今後もライブ配信を強化していく予定ですし、マイノリティ向けにサービスも拡大中です。

グローバル、インクルーシブな社会の中で“自分に合った人を見つける”ために出会いはどう変わっていく?

日本では昔から「3高(高学歴・高身長・高収入)」の男性が理想の相手という古い考えがありました。今はダイバーシティな世の中でかつ個人主義、決まった固定概念がなくなってきています。自分がどう暮らして行きたいか、自分はこれが好きだからこの価値観を共有できる相手がいいなど、探す相手もそれぞれ。昔のように3高の男性を探せばいいということではなく、複雑化してきています。

マッチングアルゴリズムもAIを利用する時代で、自分の価値観にあった相手を探す時代。世の中はどんどん変わってきています。日本でもマッチングアプリが市民権を得る時代は近いのではないでしょうか。

今後の時岡さんの挑戦は?

現在EMEはカナダ、オーストラリア、イギリスといった英語圏で展開をしているのですが、世界中のマイノリティの人たちが輝けるように、そして生涯のパートナーを見つけられるようにEMEをもっと大きくしていきたいです。5年で10ヵ国、数百億円規模の企業に育てていくのが目標ですね。

あとは社会貢献や個々人の生活にインパクトを与えるような活動は生涯を通してやっていきたいと思っているので、今後自分の中で興味のある分野が出てきたら挑戦していくと思います。

時岡真理子さん

イリノイ州ノックス大学を卒業後、オラクルで法人営業を担当。退職後、オックスフォード大学でMBAを取得。教育系モバイルアプリ「Quipper」の立ち上げに参画。2013年にマッチングアプリ「East meets East」をスタート。2019年にはForbes JAPAN WOMEN AWARD2019を受賞。プライベートでは一児の母。

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