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「更年期障害を抱えていても働きやすい」環境はどうすれば実現するのか

  • 2020.10.28
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更年期障害と思わしき症状があっても、「病院に行きづらい」「周りの人に言いづらい」と感じる方は多いのではないでしょうか。更年期障害に向き合い、症状に対処しながら働くことのできる環境のためには何が必要なのか、女性の働き方について執筆、講演をされている相模女子大学大学院特任教授、ジャーナリストの白河桃子さんにお聞きしました。

■女性特有の不調にも、企業がようやく目を向け始めた

先日、偏頭痛の薬を販売されている製薬会社の方とお話しする機会があったのですが、その方が「いま、偏頭痛は市販薬を飲んでしのいでいる人がほとんどだけれど、本当はそこにもっと重大な病気が隠されている可能性もあるから、きちんと病院には行ってほしいんです」とおっしゃっていたのがとても印象的でした。

自分は偏頭痛持ちだ、と自覚されている方は男性よりも女性が多いそうなのですが、みなさん「このくらいなら病院に行かなくても大丈夫」と不調をつい我慢してしまいがちなのだと思います。

実際には、体の不調というのは日常生活だけでなく、仕事の生産性にも大きく影響するものです。経産省の調査では月経等の不調による企業の損失は4,911億円。私は9月に社会人大学院でMBAを取得したのですが、同じゼミに月経関連の諸症状と仕事のパフォーマンスに関する研究をされた方がいらっしゃいました。約9割もの女性が、月経関連の諸症状によって仕事のパフォーマンスの低下を実感していることがわかったんです。

ここ数年、企業のあいだで盛んに「健康経営」が叫ばれるようになってきていますが、これまで日本の企業は、社員のマジョリティであった男性向けに健康経営をしてきたところがほとんどでした。でも、いま社会に長く働く女性が増えてきて、企業もようやく生理や更年期といった女性特有の不調にも目を向け始めた、という状況なのだと思います。

■まずは「更年期外来に行ってみる」

では、働いている女性が更年期障害らしき症状を感じたら、実際にどうすればいいか。最初の偏頭痛のお話と同じで、まずはとにかく病院に行く、ということが大切だと思います。具体的には、まずは更年期外来に行ってみるのを私はおすすめします。

なぜ更年期外来かというと、更年期障害の症状は人によってばらばらで、非常に多岐にわたるからです。一つひとつの症状だけに目を向けて、たとえば肩こりがつらいから整形外科に行く、倦怠感があるから内科に行く……と対症療法のみを続けてしまうと、根本的な原因である女性ホルモンの問題が改善されないまま、時間と医療費を無駄にしてしまうということがありえるわけです。

更年期障害の治療法もさまざまで、ホルモン補充療法が合う方もいれば、鍼や漢方薬が合う方もいる。人によってどんな治療法がフィットするかは違いますから、まずはしっかりと更年期障害専門のお医者さんに診ていただくことが大事だと思います。

■15分単位の休暇など、柔軟に休めるような制度づくりを

まずは病院に行きましょう、という話をすると、「まったく動けないほどつらいわけではないのに病院に行ってもいいんだろうか」「病院に行きたいと思っても、女性特有の不調に対する会社の理解がないから行きづらい」という意見を必ず聞きます。休むのが後ろめたい、という気持ちはたしかにわかるのですが、不調はその方ご自身しか実感のできないことですから、まずはご本人がきちんとヘルスリテラシーを持って休んでいただきたいな……と思います。ヘルスリテラシーが高い人ほど生産性も高いという調査もあります。

では仕事を休む上で、企業側にあらかじめ「更年期治療休暇」があれば使いやすいかというと、おそらくそんなことはないですよね。更年期の治療に限らず、毎月やってくる生理の症状への対処や、長期的な通院が必要な不妊治療などは、一定期間の休暇よりも「午前中2時間だけ休みたい」「仕事の途中で中抜けして病院に行ってきたい」といったニーズのほうが多いのではないかと思います。

いま、テレワークやフレックスが浸透して、15分単位の休暇をとれる企業もあると聞きます。そういった休暇制度をフレックスタイムと組み合わせれば、15分横になって休むとか、1時間だけ抜けて薬局に行くといったことができるようになって、不調を抱えている方もかなり働きやすくなるのではないでしょうか。企業側には、そういった制度の検討も含めた働き方改革を進めてほしいです。

それからもうひとつ、女性が仕事を休んだり体調不良を訴えたりしにくい原因のなかには、「女性はいつも機嫌よくいなければいけない」という暗黙の空気があることも見逃してはいけないと思います。当然ですが、男性にも女性にも体調不良で気分や機嫌が悪い日というのは存在します。「女性にはいつでもニコニコしていてほしい」というのはひとつのジェンダーステレオタイプですから、誰にでも体調や機嫌が悪いときはありますよ、ということを広く理解してもらいたいですね。

■健康にいくら投資していようと、病気になるときはなる

私自身もホットフラッシュなど、これは更年期障害かもという症状を感じたことがあるのですが、病院で漢方薬を処方してもらったことで嘘のように症状が改善した経験があります。

人間ですから、健康にいくら投資していようと、病気になるときはなると思うんです。自分自身でできることには限りがあるので、専門家に頼ったり、身近な人におすすめの病院や対処法を聞いたりして、いろいろ知識を集めてほしいですね。

幸い、日本は世界で一番と言ってもよいほど保険診療が充実している国です。更年期障害であれば保険適用になる診療も多いですから、まずは保険診療の範囲内から、ご自身に合う対処法を見つけてみてください。

Text/白河桃子
慶応義塾大学文学部社会学専攻卒。住友商事、リーマンブラザースなどを経てジャーナリスト、作家に。仕事、出産、両立など女性のライフキャリア、少子化、働き方改革、女性活躍、ワークライフバランス、ダイバーシティなどがテーマ。大学生、高校生、若手社会人のために仕事、結婚、出産の切れ目ないライフプランニングを提唱し、出張授業多数。相模女子大学客員教授のほか、「HER-SELF 女性の健康プロジェクト」理事長等も務める。

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