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天才、アレキサンダー・マックイーンを肌で感じて。 (Saori Masuda)

  • 2015.5.19
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【さらに写真を見る】天才、アレキサンダー・マックイーンを肌で感じて。 (Saori Masuda)

Photo: © Marc Hom / Trunk Archive

先週、わたしは運よくロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館で開催中のAlexander McQueen: Savage Beauty展を観ることができた。この展覧会はもともと、彼が亡くなった翌年の2011年にニューヨークのメトロポリタン美術館(通称MET)で行われていたもので、MET史上記録的な観客動員数を誇ったものとしてファッション関係者のみならず話題になった。今回の展示は、1992年の卒業コレクションから彼が手がけた最後の2010年秋冬(未完)のコレクションまでで、10のテーマに分かれている。どのルックにもアレキサンダー・マックイーンの魂が感じられ、まるで生きものを観ているような気持になる。これは単なる服の展示ではなくアートのような、観るものを圧倒する力のある服の展覧会だ。私たちと同じ時代を生きた天才デザイナーの作品展、会期中の8月2日までにロンドンで観るチャンスがある人には是非おすすめしたい。

なぜ天才と言われたのか。

私にとってアレキサンダー・マックイーンというデザイナーは特別な存在である。以前私は、彼が率いるジバンシィのPRアシスタントだった。その頃の私は、彼の作るものを見るのが精一杯で、その世界観を理解するには彼や周りの人から聞いた話を勉強しなければ到底わからなかった。誰もが見たり聞いたりすることができる身の回りのものが、彼には違ったものに見え、それを服に実現したときにはアートの域に達するようなものになる。だからこそ、彼が作る服の一つ一つが何かを意味するような気がして、それを知りたいという感情に駆られる。言ってみれば、彼の作る服は単なる服ではなく、人の心を揺さぶるようなアートのようなものだったのではないかと今になって思う。

マックイーンのルーツをたどる。

彼のルーツであるスコットランドや大英帝国がテーマの『ロマンティック・ナショナリズム』展。この部屋にはマックイーン家のタータンチェック柄を使った服が多く飾られている。過去のコレクションではスコットランドの悲劇の女王メアリー・スチュアートやイギリス統治下のインド帝国などがインスピレーションになったものなどが数多くある。

マックイーンの日本愛。

『ロマンティック・エキゾチズム』は彼がずっと持ち続けたアジアへの興味を垣間見ることができる部屋だ。アジアのなかでもとりわけ日本に対する彼の好奇心は高く、着物、帯、日本の織物などを使った服が展示されている。個人的な話だが、私が在籍したジバンシィ時代で最も感動し、実際リハーサル中からその美しさに涙が止まらなかったコレクションの一つに、鯉を放った池を作った日本庭園をモダンに解した舞台の、日本がインスピレーションだったジバンシィのオートクチュールコレクションがある。

グロテスクだけど美しい、動物の角、革や毛などでできた服。

アレキサンダー・マックイーンが終生魅了された動物の世界がテーマの『ロマンティック・プリミティズム』展は、動物の角、革、毛で作られた服が展示されている。言葉だけ聞くとグロテスクなところがあるが、服全体からは美しさを感じる。

マックイーンクリエイションの心臓部。

この展覧会の心臓部ともいえる『ザ・キャビネ・オブ・キュリオシティ』の部屋には、彼のクリエイションの核となるものが壁一面に、中央には1999年春夏コレクションのフィナーレで、モデルのシャローム・ハーローがロボットにスプレーペインティングされたドレスが展示されている。この展示の一つに日本円の5円玉で作られた鎧があり、ふと私はジバンシィに勤めていた時代を思い出した。もう記憶が定かではないが、5円玉を確か一万個送った記憶が甦ったからだ。

最後となった未完のコレクション。

2010年2月11日、衝撃的な死を遂げたアレキサンダー・マックイーンの遺作。当時、限られたプレスにしか公開されなかったコレクションだ。

誰もが彼の才能に圧倒された、事実上最後のコレクション。

2010年春夏コレクションのPlato’sAtlantisと名付けられ、地球上の氷河が解け、人間が海の中で生活するようになった未来の世界がテーマとなった、事実上マックイーンがすべてを手掛けた最後のショー。巨匠ニック・ナイトが撮影した砂の上を裸で横たわるモデルのラケル・ジマーマンにヘビが絡むという映像が背景に映し出され、ショーの30分前にはレディ・ガガが彼女の新しいシングルが流れるとツイート。会場はパニックに、ショーのライブストリームを行ったニック・ナイトのウェブサイト、SHOWstudioのサーバーはダウン。服は水陸両用の海の生物にインスパイアされたデジタルプリントの服にアルマジロを象った30.5センチのブーツを履いたモデルが次々とランウエイに送り出されるのを、ロボットのようなカメラが撮影するというとてつもないスケールのもの。マックイーンの二つの興味、自然とテクノロジーを融合させた世界を表現したコレクションだった。そして、誰もが彼の才能に圧倒された。

参照元:VOGUE JAPAN