1. トップ
  2. ファッション
  3. アヴァンギャルドで耽美な世界を切り開く、アンダーカバー。

アヴァンギャルドで耽美な世界を切り開く、アンダーカバー。

  • 2015.5.19

【さらに写真を見る】アヴァンギャルドで耽美な世界を切り開く、アンダーカバー。

デザイナーの高橋盾。Photos: Yoshie Tominaga

反骨精神のもと繰り広げられる毒のあるモードとおとぎ話を彷彿させるファンタジーを見事に融合させ、ファッション・ジャーナリストたちの間でも高い評価を得ているアンダーカバー。裏原宿のストリートカルチャーからスタートし、パリコレの舞台で世界からの称賛を得るようになった現在に至るまでの、華麗なる足跡をたどってみよう。※VOGUE JAPAN掲載記事。

若者たちが熱狂した裏原宿のカリスマショップ。

国内外を問わず、ジャパニーズ・ファッションの第一線で活躍する現代の顔の一人になったデザイナー、それが高橋盾だ。彼のブランド「アンダーカバー」は、私たちが考えるファッションに新しい力を生み出した。 1969年、群馬県桐生市に生まれ、名門の文化服装学院に入学。 高橋がファッションシーンへの扉を叩いたのは在学中のことだった。 Tシャツのデザインを手がけ、1990年に友人とブランドを創設。今では国際的に高く評価されているそのブランドとは、もちろん 「アンダーカバー」である。ほどなくして「ア・ベイシング・エイプ」のデザイナー、NIGOとともに「ノーウェア」をオープン。 1993年のことだ。若者たちが熱狂したこの裏原宿のお店の成功は、今でも日本のファッション業界において語り種になっている。 一見したところ彼は一夜にして脚光を浴びるようになったようだが、もちろんそうではない。それは彼が断言するはずだ。知っての通り、ファッションに必要なのは忍耐と発見─それはつねに絶え 間ない学習プロセスだ。高橋はこの成功に驕ることなく前へ前へと進み続けた。UNDERCOVER(アンダーカバー)1990 年、デザイナーの高橋盾が文化服装学院在学中に友人と立ち上げる。1994年東コレに初参加、2003年春夏よりパリコレに参加する。 2013年秋冬にセカンドラインのSueUNDERCOVER(レディス)、JohnUNDER COVER(メンズ)創設。世界中から注目される日本人デザイナーの一人。

才能とキャリアを武器に東京からパリへ。

彼がデザインする服はそれ自体が、遊び心やスポーティなものからある種、優雅で洗練されたものまで、ありとあらゆる感情を表現している。これまでに、一着の服の裏表をリバーシブルで双子のモデルに着せ新作を発表したり、中世ヨーロッパの貴族を彷彿させる冠や陶磁器を服やアクセサリーに取り入れシアトリカルなストーリーを描いたりと、独特の発想や色づかいを見事に一つの作品として仕上げている。なぜこんなことを言うかというと、こういった手法が巧妙な仕掛けだと誤解されやすいからだ。もちろん高橋が作る服は、その類いではない。よく考え抜いて作られているし、なんといっても、“真 面目な”ファッション界ではあまり目にすることのない飛躍的な発想を提供しているのだ。1994年、東京コレクションに初参加。1995年にはレディスとメンズを本格的にスタートした。その実績と才能を認められた彼は、1997年毎日新聞社主催の毎日ファッション大賞新人賞を受賞。その後、2002年、高橋はパリコレ・デビューで世界に打って出た。その独特のデザインを世界に紹介したのだ。日本国内のデザイナーだった彼も、今やアジア全域そして世界的に知られるデザイナーとして高い評価を得る存在へとなっている。コレクションはとても好評で、世界中のファッション・エディターたちの間で共感を呼んでいるし、ティム・ブランクスをはじめ多くのジャーナリストたちが高橋を絶賛している。顧客からも圧倒的な支持を得ているのは言うまでもない。彼の作品はコレクターが現れるほど、希少価値のある服として認められている。それと同時に高橋のデザインは次に来るべきジャパニーズ・デザインでもあったようだ。青山の直営店はファッショニスタたちのマスト・ストップになっているし、現在、世界中でを超えるブティックにて商品展開している。ユニクロとのコラボレイションライン「UU(ユニクロ×アンダーカバー)」では彼が描き下ろしたイラストがキッズたちのTシャツにプリントされたりして、楽しげな雰囲気だ。2013年秋冬には次世代の顧客へ向けたセカンドブランド、スーアンダーカバー (レディス)、ジョンアンダーカバ ー(メンズ)を発表。手軽な価格帯とカジュアルで遊び心のあるデザインが、若者たちの心を掴んで いる。

自らのアイデアに忠実に独自の道を突き進む。

彼の一番の特徴は立ち止まらないことだと私は思うのだ。今も未知なるものを追い求めているし、自分自身に挑戦し続けている。彼は独自の発想を探るビジネスを可能にした。デザイナーなら誰もがそうしたいと思うだろうが、彼は自身の力でニッチを生み出したのだ。この先の未来を彼がどう見ているのか、ブランドをどの方向に進めていきたいと思っているのか、それは想像するしかない。 一つ言えるのは、自主性とキャリアでの成功をどう両立させるか、そのお手本となり得るのが高橋だということ。彼は自分のアイデアに忠実であり続ける数少ない選ばれた人たちの一人なのだ。高橋の服は好奇心を喚起し続けている。ファッションに対するとても特別な見方を提供し続けている。たかが日本人デザイナーの一人─彼のことをそんなふうに思うなどとんでもないことだ。そんなレッテルを彼に貼ることは避けねばならない。彼はさまざまな新しい希望を提供しているデザイナーだ。どこに希望を見いだすにせよ、ファッション業界において、高橋盾本人が希望そのものだと言えるだろう。

参照元:VOGUE JAPAN

の記事をもっとみる