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北海道十勝に響く蹄の音。新生観光スポット「馬車BAR」と「HOTEL NUPKA」 の今

  • 2020.10.25

馬の生産に、ばんえい競馬。北海道十勝には馬の歴史文化が色濃く残る。そんな地域で、昨春始まったのがホテルヌプカが運営する「馬車BAR」だ。道外からの客が少ない今、オンラインやVRを活用した新しい取り組みを始め、ファンを増やそうとしている。ガイドの永田剛さんとホテルヌプカ支配人の坂口琴美さんに話を聞いた。

元ばんえい競走馬のムサシコマがひく馬車BARは「馬とともに原野を開拓した歴史と、その文化をもっと身近に」、そんな思いで、ホテルヌプカが始めた。「NUPKA(ヌプカ)」は、アイヌ語で「原野」の意味をもつ。

馬車BARは、事前にホームページ上で予約し、予約当日にホテル1階で乗車券を購入する。座席と飲み物を選び、時刻になると出発。カランカラン、という鐘の合図で、ムサシコマがゆっくりと歩き出す。

撮影日は午後6時出発の便に乗車。1・2階とも満席で、筆者が座った2階席では札幌から訪れたご家族と一緒だった。「とにかく馬が好きで、いつもばんえい競馬には来ているのだけれど馬車BARは今日が初めて。(雨が降らず)運行されて本当に良かった」と話してくれた。

夜の街に、ポクッポクッと響く馬の蹄(ひづめ)の音。2階席からは、普段は頭上高く見えているビルや信号機がとても低く感じられる。おつまみは十勝産のジャガイモにチーズ、バター、枝豆。ビールは「ここを訪れる人のために」とホテルヌプカが作った「旅のはじまりのビール」。使用大麦も北海道産だ。

帯広の街を馬車で巡るという贅沢な体験が話題となり、コロナ前はインバウンド客に旅先を案内するエージェントにも注目され始めていた。オープンから2年目の今年は改善点などを洗い出し本格始動しようと考えていたが、コロナにより方向転換を余儀なくされたという。

まずは感染防止対策として、ホテル1階のコンシェルジュ、カフェバーにシールドを設置し、ラウンジにはアルコール消毒液と使い捨てマスクケースを常備。馬車BARでは、1階部分の窓を開けて換気し、テーブルなど人の手が触れる場所のアルコール消毒をしている。

そして新型コロナウイルスの影響で道外客が減った中で、改めて地元の人に知ってもらうための企画も考えている。地元商店の組合と連携し、帯広市街地の活性化を図るなど具体化した取り組みもある。

ホテルヌプカ 支配人 坂口琴美さんHarumari Inc.

「ここはもともと、十勝を世界に発信する、というコンセプトで作られたホテルです。コロナ禍で、自分たちだからできることは何だろう? そう話すことが増えました」と話してくれたのは、支配人の坂口琴美さん。

離れていても十勝を感じてほしい。そんな想いから、旅のはじまりのビールを事前に発送し、馬車BARをオンライン中継してみんなで乾杯。日頃から旅先のアクティビティとして提案している「犬ぞり」や「アイススケート」のVRを体験してもらう、などの取り組みも行った。

「単に宿泊してもらうだけでなく、旅をコーディネートするのが私たちの役割。皆さんの旅の入口になりたいし、いつでも帰ってきてね、という気持ちが強いです。だから今は、私にできることはすべてやる。諦めずにひたすら行動していこうと思っています」

十勝の冬は寒く厳しいが、ふとした優しさで心の芯を暖めてくれるような人たちがいる。ホテルヌプカも馬車BARも、そんな暖かさと家族のような親密さを感じられる、心地よい空間だ。(2020年9月12日取材)

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