1. トップ
  2. 「助演」でドラマを彩る1990年代作品の主演俳優たち、起用の背景は?

「助演」でドラマを彩る1990年代作品の主演俳優たち、起用の背景は?

  • 2020.10.24
  • 19822 views
鈴木保奈美さん(2019年5月、時事通信フォト)
鈴木保奈美さん(2019年5月、時事通信フォト)

テレビドラマ全盛期といわれた1990年代、多くの作品で主演を務めた俳優たちが10月クールのテレビドラマでは“助演”として起用されています。当時、ドラマの影響により、さまざまな社会現象が巻き起こるなど、主演を務めた役者たちは作品のヒットと共に時代のアイコンとして広く浸透していました。

そこから、約30年ほどの月日がたった2020年。コロナ禍により、1990年代の名作ドラマが次々と再放送されたことも話題を集めましたが、当時、時代のアイコンとして活躍していた彼らはさまざまな経験を経て得た魅力を発揮し、現在、助演という立場で作品に彩りを加えています。

山口智子さん、和久井映見さん、鈴木保奈美さん…

11月2日スタートのフジテレビ系連続ドラマ「監察医 朝顔」(毎週月曜 後9:00)で、上野樹里さん演じる主人公が勤める法医学教室の主任教授・夏目茶子役で出演するのは山口智子さん。同作は2019年7月期に第1シーズンが放送され、続編の今作は月9史上初めて2クール放送されるということでも話題を集めています。

山口さんはNHK連続テレビ小説「純ちゃんの応援歌」(1988年度後期)でヒロインを務め、女優デビュー。1996年に木村拓哉さんとダブル主演を務めた「ロングバケーション」(フジテレビ系)では、最高視聴率36.7%の大ヒットを記録しました。以降、俳優・唐沢寿明さんとの結婚発表を機に一時露出は少なくなりましたが、2012年に放送された「ゴーイング マイ ホーム」(関西テレビ・フジテレビ系)で16年ぶりに連続ドラマに出演し、2019年にはNHK連続テレビ小説「なつぞら」(2019年度前期)で31年ぶりとなる朝ドラ出演も果たしました。

10月27日スタートの関西テレビ・フジテレビ系連続ドラマ「姉ちゃんの恋人」(毎週火曜 後9:00)では、有村架純さん演じる主人公の相手役・吉岡真人(林遣都さん)の母親役として和久井映見さんが出演します。

和久井さんは1988年に芸能界デビューを果たし、1993年には映画「虹の橋」で日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞。1990年代にフジテレビ系月9ドラマで主演を務めた「妹よ」「ピュア」「バージンロード」はいずれも、平均視聴率が20%を超えるなど大ヒットを記録しました。2017年にはNHK連続テレビ小説「ひよっこ」(2017年度前期)に出演し、有村架純さんと共演しています。

柴咲コウさんが5年ぶりに民放連続ドラマ主演を務める日本テレビ系連続ドラマ「35歳の少女」(毎週土曜 後10:00)では、柴咲さん演じる主人公の母親役で鈴木保奈美さんが出演します。

鈴木さんは高校時代に応募した「第9回ホリプロタレントスカウトキャラバン」で審査員特別賞を獲得したことがきっかけで、1986年に女優デビュー。1991年に織田裕二さんとダブル主演を務めたドラマ「東京ラブストーリー」(フジテレビ系)、翌年に放送された主演ドラマ「愛という名のもとに」(同)はいずれも大ヒットを記録しました。

1998年にとんねるず・石橋貴明さんとの結婚や妊娠を機に芸能界引退を発表しましたが、2008年に芸能活動再開を発表。2018年に放送され、その後、続編も放送されたドラマ「SUITS/スーツ」(同)は、24年ぶりの月9ドラマ出演や織田裕二さんとの27年ぶりの共演でも話題を集めました。

「半沢」で話題の筒井道隆さん、助演目立つ江口洋介さん

米ドラマ「24 -TWENTY FOUR-」シーズン1のリメーク作品として、唐沢寿明さん主演で全24話の2クール放送されるテレビ朝日系連続ドラマ「24 JAPAN」(毎週金曜 後11:15)では、仲間由紀恵さん演じる日本初の女性総理候補の夫役で筒井道隆さんが出演します。

1990年に公開された映画「バタアシ金魚」でデビューを飾った筒井さんは1993年放送のドラマ「あすなろ白書」(フジテレビ系)や翌年放送のドラマ「君といた夏」(同)で主演を務め、作品のヒットと共に人気を獲得。主演を務めた多くの恋愛ドラマで脚光を浴び、トレンディードラマを代表する俳優としての地位を確立しました。直近では、大ヒットドラマ「半沢直樹」(TBS系)で堺雅人さん演じる主人公・半沢と対立する帝国航空再建チームのリーダー・乃原正太役で演じた悪役ぶりが話題となりました。

テレビ朝日系連続ドラマ「七人の秘書」(毎週木曜 後9:00)で主演の木村文乃さん演じる望月千代ら秘書たちの元締め役でありながら、ラーメン屋の店主という役どころを演じるのが江口洋介さんです。

江口さんは1987年公開の映画「湘南爆走族」で映画初主演を飾りブレーク。以降、フジテレビ系連続ドラマ「東京ラブストーリー」「101回目のプロポーズ」「愛という名のもとに」などに出演し、トレンディードラマの常連俳優として人気を博しました。主演ドラマ「ひとつ屋根の下」(フジテレビ系)、「救命病棟24時」(同)はいずれもシリーズ化されるなどヒットを記録。2000年代以降も、主演を務めたドラマ作品は多数存在しますが、近年では「ルーズヴェルト・ゲーム」(TBS系)、「BG~身辺警護人~」(テレビ朝日系)など、助演でのドラマ出演も多く見受けられるようになりました。

経験や余裕がもたらしてくれる安定感

1990年代に主演を多く務めた役者たちが近年、なぜ、助演として起用される傾向が顕著なのか。芸能評論家の宝泉薫さんは「ドラマ全盛期のコアな視聴者層を取り込みたい制作側の狙いがあるのでは」と分析します。

「昔に比べれば、視聴率も取りにくく、ドラマ作りが難しくなっている現実があります。そんな中、ドラマ全盛期といわれていた1990年代に多くの作品で主演を務めていた役者を起用することで、当時のドラマを見ていた世代の方にも親しみを持って見てもらえるのではないでしょうか」(宝泉さん)

また近年、助演での起用が増えている背景にはもう一つの理由があると宝泉さんは分析します。

「テレビドラマはいつの時代も、20~30代前半の役者が主演として起用されることが比較的多いです。1990年代に主演を務めていた役者が現在、助演での起用が多いのはもちろん、年齢的なこともありますがそれ以上に、作品に安定感をもたらしてくれたり、助演という立ち位置ながらも存在感を放ち、しっかりと結果を出してくれたりする点も大きいです。若い頃、主演でバリバリやっていたからこその経験や余裕から生まれるものなのかもしれません」

宝泉さんは今後、助演での活躍を期待したい役者として観月ありささんを挙げています。

「連続ドラマ29年連続主演というギネス記録を持っている観月さんですが、助演という立ち位置で出演したドラマ『私たちはどうかしている』で見せた悪役ぶりは作中でも大きな存在感を放ち、話題になりました。主演記録を持っているくらいなので、制作側も『観月さんを起用するなら主演じゃないと』というイメージもあったのかもしれませんが、これをきっかけに助演でのオファーも増えるのではないでしょうか」

「30代後半~40代は役者としてのターニングポイントです。若い頃とは違って、キレイ、カッコイイだけではなく、役者としての今後の方向性を示していかないといけない期間だと思います。ただ、『主演作が減る=格が落ちる』ということではけっしてありません。適材適所が大事なのであって、主演にこだわり続けるだけではなく、助演でもいい味を出せることの方が役者として魅力に思うのです」

オトナンサー編集部

元記事で読む
の記事をもっとみる