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【漢字】「陶冶=?」意外と読めない漢字3選【ベテラン国語教師が解説】

  • 2020.10.23
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秋も深まり、紅葉の便りも聞かれるようになりました。例年通りとはいきませんが、勉強にも最適の季節を迎えています。さて、今回は1カ月ほど前にも記事にした、大学受験によく出る漢字からの出題です。すべて常用漢字2,136字の範囲内で、なおかつ、その音訓表に記載されているものばかりですので、「書き取り」で出題されることもありですが、似た漢字や複数の読みがあったりして間違いやすいため、「読み」の出題が定番です。
もう何年か(?)前に、受験は「卒業」した皆さんも、挑戦してみてください。

読めそうで読めない1文字の漢字3選

1.「破綻」

最初は、「財政が破綻する」などと使う「破綻」です。この言葉が使われるケースから、「経営や人間関係などが修復できないほど行き詰まること」という意味は何となくわかると思いますが、高校生だと意外と読み間違いが多いんです。社会人の皆さんにはおわかりですね

正解は「ハタン」です。「ハジョウ」や「ハテイ」と読んだ人はいませんでしたか? 「綻」は「錠」と似ているうえ、漢字の右側に「定」がありますね。なお、この漢字「綻」は、訓読みでも出題されることがあります。例文は「顔が綻びる」。読めましたか? 正解は、「ほころ・びる」でした。

2.「追従」

次は「こびへつらうこと」の「追従」です。常用漢字外ではありますが、同義語である「阿諛(アユ)」と結合して、「阿諛追従」のように四字熟語でも目にします。さて、何と読んでいますか?

―― 正解は「ツイショウ」です。「ツイジュウ」しか読めなかった人はいませんか?「従う・従える」の訓読みを持つ「従」という漢字の音読みは、「従事・従順」などの「ジュウ」をまず想起しますが、実は「ショウ」もちゃんと常用漢字表には示されています。なお、この漢字を「従(ショウ)」と読む別の熟語に、「従容(=ゆったり落ち着いた態度)」があり、これも「従容として死に赴く」のような例文でよく目にします。

3.「陶冶」

最後は、「人の性質や才能を鍛えて育て上げること」という意味の「陶冶」です。試験の出題文も、ほとんどが「人格を陶冶する。」に限定されています。さて、何と読みますか? 「トウジ」または「トウチ」と読んだ人はいませんか?

「冶」が「政治」や「治療」に使う「治」と似た漢字であるため、これにつられてしまいがちですが、正解は、「トウヤ」です。「陶器」や「陶芸」の熟語で使う「陶」の意味が「やきもの」であることはわかりますが、「冶」にも「金属を溶かして鋳物を作る」意味があります。陶器や鋳物を作るように、いろいろな試練を経験させて、一人前の人間に育て上げるわけです。試練は辛いものですが、間違いなく人を成長させます。そう考えると、「陶冶」とは奥が深い言葉ですね。

この大学入試頻出語のシリーズ、まだまだありますので、近いうちにまた。

《参考文献》
・「新明解国語辞典 第七版」(三省堂)
・「明鏡国語辞典 第二版」(大修館書店)
・「新字源」(角川書店)
・「頻出入試漢字コア2800」(桐原書店)

文/田舎教師 構成/CLASSY.ONLINE編集室

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