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ヤマザキマリさんに学ぶ。自分を豊かに育てるwithコロナの過ごし方

  • 2020.10.14
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●本という贅沢119 『たちどまって考える』(ヤマザキマリ/中公新書ラクレ)

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『たちどまって考える』(ヤマザキマリ/中公新書ラクレ)

先日、寝坊して目覚めたらTwitterのトレンドワードに「ヤマザキマリ」さんがランクインしていた。どうやら、NHK「あさイチ」のプレミアムトークで、お茶の間をドッカンドッカンさせていたらしい。
視聴者のにぎわいぶりは、平野レミさんの料理番組を生で見ているときのテンションに近い。
タイムラインを遡ると
「大気圏内!!!」とか「常識より良識」とか「食わせる方が先」とか「カマキリ先生と対決?」といったパワーワードが並んでいる。
「面白すぎてテレビ消せない。仕事遅れる!」「やばい、家事にならない!」
といった悲鳴も散見できる。
そこで何が起こっていたのか。なんとなく、予想ができた。

一度だけ、友人の伝手で、ヤマザキさんのトークを聞かせてもらったことがある。予定を大幅にオーバーした2時間半のトークが終わったときには、笑いすぎて声がかれていた。次の日腹筋が痛かったから、ちょっとした筋トレレベルだった。

そのときは、マグマのような人だな、と思った。

司会者の言葉がひとつ投げ込まれるたびに、それがヤマザキさんの内部で瞬時に化学反応を起こし核分裂してどかーんと凄まじい言葉になって表出する。
私たちはまばゆく発光する、その光のエネルギーを浴びているだけで、なんだか、細胞が解放されていくのを感じていた。
ヤマザキさんの言葉は、私たちを自由にしてくれる。地球の重力から自由になって、なんというか、羽を与えてもらえるような、そんな言葉たちなのだ。

翌日、見逃し配信を見た。
その中で紹介されていたのが、この本である。
『たちどまって考える』。

失礼ながら、「たちどまる」という言葉から、最も遠いところで爆走し続けている印象のヤマザキさん。
その彼女がコロナで物理的な移動ができなくなってから考えたこと、が書かれているらしい。
読むしかない。

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朝日新聞telling,(テリング)

漫才か講談かというくらい、息もつかせぬトークからすると、このエッセイはとても落ち着いたトーンで書かれている。
落ち着いた、という表現はちょっと変か。ものすごくフェアに書かれている、と感じた。

この本では、日本と、マリさんの夫家族が住むイタリアの比較を中心に、「地球レベル」の視点でコロナについての考察が進められていくのだけれど、それは、国と国とをVSさせて一方を批判するような、対立構造ではない。

コロナ対策の違いから見えてくる国民性。
その国民性が育まれてきた歴史的背景。
その歴史的背景の中で各国の文学や芸術はどう位置づけられてきたのか。
そして、民主主義とは何か……。
などなど。

極端なことを断言するコロナ分析ばかりを読み聞きしてきたから、なんだか、とてもほっとした。
文字通り、私も「たちどまって」読めたのかもしれない。

テレビで見るような笑いだらけの語り口ではなかったけれど、トークにも書籍にも、共通しているのは、ヤマザキさんの視点の「遠さ」だ。

大気圏あたりから、もしくは紀元前あたりから、大きく地球と人類をとらえる視点の「遠さ」。
だから、なんだろう、読んでいる間ずっと、大きな存在に「包まれている」という感覚になる。

ヤマザキさんの視点を追いかけるだけで、日頃自分がどんなに近視眼的にモノを見ていたかに気づく。どれだけ飛んだとしても、どれだけ跳ねたとしても、しょせん大気圏内のちびっこジャンプだということにも気づく。
だったら、もう、局所的な場所でしか勃発しない「常識」みたいな一切の重力を捨てて、飛べるだけ飛んだほうがいいよね。そんなことを思った。
やっぱり私はこの本でも、ヤマザキさんに自由を教えてもらっている。羽をさずけてもらっている。

いまは、全速力で走りたくても走れない。移動したくても移動できない。そんなもどかしい思いを抱えている人も多いと思う。物理的にも、比喩的にも。わたしも、その一人だ。
だから、いろんなことが解禁になった暁には、もう、鉄砲玉のように日本から飛び出したいと思ってる。そのときはもっと、この世界を楽しみ尽くしたい。
そんなモードのときにね、この本に出会えて本当によかったと思ったな。たちどまっている今だからこそ、できることがある。
この本の中で紹介されている本や映画も、その日までには、体の中に取り入れておきたいなと思いました。


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ヤマザキマリさんの漫画は、もちろん『テルマエロマエ』が大傑作なのですが、私は『スティーブ・ジョブズ』も大好きです。
超個人的な話だけど、書籍の中で使われている写真の1枚が、家から徒歩20秒くらいの場所だった。近くに住んでらっしゃるのかな……ドキドキ。

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それではまた来週水曜日に。

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■佐藤友美のプロフィール
テレビ制作会社勤務ののち、2001年ライターに転身。雑誌、ムック制作、ウェブメディアの編集長を経て、近年は年間10冊以上を担当する書籍のライターとして活動。 ビジネス書から実用書、自己啓発、ノンフィクションまで、幅広いジャンルの著者から信頼を得て指名をうけている。一方、読者からは「生まれて初めて書籍を1冊読みきった」「読みやすくてあっというまに読了した」などの感想を多くもらう「平易でわかりやすい文章」を書くライターとして知られる。 著書には8.2万部のベストセラーとなった『女の運命は髪で変わる』(サンマーク出版)のほか、49歳で亡くなった伝説の女性美容師・鈴木三枝子さんの生き方と働き方を描いたビジネスノンフィクション『道を継ぐ』(アタシ社)が発売即重版し、話題をよんでいる。

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