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原美術館、品川での最後の展覧会が開幕。作品、建築、カフェそのすべてを味わう

  • 2020.10.9
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建物の老朽化に伴い群馬へ拠点を移すことが決定している品川の原美術館で、新たな展覧会「光―呼吸 時をすくう5人」展が開幕した。展示作品とともに、建築としての美しさ、美術館としての佇まいなど、洗練され続ける原美術館を見届けよう。

品川では最後となる展覧会

1938年に東京・品川に建てられた実業家・原邦造の邸宅。「東京国立博物館本館」「服部時計店」(現・和光)、「ホテルニューグランド(横浜)」などを手がけた建築家・渡辺仁が設計した。

この場をもとに、1979年に開館した「原美術館」が2021年1月、約40年の歴史に幕を降ろす。

撮影:渡邉修Harumari Inc.

原美術館は現代美術の専門美術館として開館して以降、国内外の多数のアーティストたちを紹介し、日本のアートシーンに絶大な影響を与えてきた。展示される作品自体の魅力はもちろんのこと、バウハウスやアール・デコのエッセンスを取り入れた初期モダニズム様式の建物を生かした展示方法や、今でこそ一般的になったミュージアムカフェを先駆けてオープンしたことなど、アートの楽しみ方を多角的に提案してきた功績も大きい。

撮影:渡邉修Harumari Inc.

しかし、建物の老朽化に伴い、惜しまれつつも群馬に拠点を移すことを決定。品川での最後の展覧会となるのは、「光―呼吸 時をすくう5人」展だ。

作品を通じて、見過ごされそうな光景を掬い、救う

最後の展覧会となる本展は、世界情勢に翻弄され慌ただしく過ぎていく中で、視界から外れてしまう日々のささやかな出来事や感情を記憶に残すことはできないか、という想いから企画。
先行きが不透明な中でも静かに自身の立ち位置から社会を省察し、見る人の心に深く語りかける5人の作品が展示されている。

光ー呼吸 時をすくう5人 展示風景画像 撮影:今井智己Harumari Inc.
光ー呼吸 時をすくう5人 展示風景画像 撮影:城戸保Harumari Inc.

一貫して意識をテーマに据えた作品を発表する今井智己、日常風景の中で本来の役割や用途からズレた「もの」を捉える城戸保、光や身体を主題に表現する佐藤時啓ら3名の写真家による作品に加え、同館のコレクションから昨年3月に逝去した佐藤雅晴のアニメーションと台北を拠点に活動する香港出身のリー・キットのインスタレーションが展示されている。

「原美術館」という空間に作品が置かれると、通常のホワイトキューブとは違う親近感や懐かしさ、愛らしい魅力を感じる人も多いだろう。この不思議な居心地の良さは、行った人にしかわからない。
原美術館の纏う空気に寄り添った、静かな、でもたしかな意思のある最後の展覧会を、目に、心に焼き付けたい。

なお、入館はウェブサイトから日時指定の予約制。詳細は公式サイトで確認することができる。

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