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日本人がこれほど、旬の「サンマ」を愛してやまない理由

  • 2020.10.4
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日本人が愛してやまないサンマ
日本人が愛してやまないサンマ

ここ数年、秋の味覚「サンマ」の歴史的不漁が毎年のようにメディアで伝えられています。日本周辺における海水温の上昇など気候変動が要因とされていますが、現在のところ、はっきりとした理由は分かっていません。

さまざまな魚には旬の時季がありますが、特にサンマの場合、全国各地のサンマ祭りがメディアで取り上げられるなど、日本人のサンマの旬に対するこだわりはとても強いように思います。なぜ、日本人の“サンマ愛”はこれほど強いのでしょうか。料理研究家で管理栄養士の関口絢子さんに聞きました。

「秋の訪れ」を感じる心情

Q.そもそも、サンマはいつごろから、日本人が多く食べるようになったのですか。

関口さん「江戸時代前期の1700年ごろ、和歌山県の熊野灘でサンマ漁が始まったとされており、その頃から、本格的にサンマを食べるようになったと思われます。当時は『下等魚』とされ、食用としては人気がありませんでした。サンマに多く含まれる脂は、あんどん(円形、または四角の木や竹のわくに紙をはり、中に油皿を置いて火をともした照明具)をともす燃料に使われていました」

Q.他の魚にも旬の時季がありますが、日本人は特に、旬の時季のサンマを好む傾向が強いと思います。なぜ、日本人はここまで“サンマ愛”が強いのでしょうか。

関口さん「サンマの人気が高い理由は『他の魚と比べてやわらかい身質』『脂がのった身の甘さ』『うろこや内臓を取らずにそのまま焼いて食べられる手軽さ』『庶民のお財布に優しい』などが挙げられますが、サンマに『秋の訪れ』を感じる心情が最も大きく関係していると思います。

猛暑も去り、秋の気配に身を躍らせる頃、ふと立ち込める塩焼きの匂いや、脂ののったサンマに大根おろしを合わせて、温かいご飯で頬張る食事の記憶が多くの日本人に刷り込まれているからではないでしょうか。江戸時代には下等魚として人気がなかったサンマですが、最近のある調査では『日本人が好きな魚ベスト5』に入る人気に昇格しています。ちなみに、ベスト5はサンマ、サケ、マグロ、サバ、アジです」

Q.サンマの旬は9月~10月末とされています。旬のサンマは栄養や味の面で、他の時季のサンマとは異なるのでしょうか。

関口さん「サンマは北太平洋の温帯から亜寒帯に広く生息していて、8月ごろ、産卵のため日本列島に沿って群れで南下してきます。ちょうど、北海道から三陸沖あたりにまで南下したものが脂を多く蓄え、塩焼きには最高といわれています。産卵を終えたサンマは脂が落ちているため、丸干しや缶詰など加工用に使われます。

栄養面の差は脂にあります。脂に含まれるDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)は脳細胞の活性化や血流を改善し、悪玉コレステロールの低下や動脈硬化の予防、心疾患や脳疾患などの原因である血栓を予防する大切な栄養素です。旬のサンマには脂が一番多く含まれることからも、栄養的に優れているといえるでしょう」

Q.サンマが「秋」と結びつくように、日本人は旬へのこだわりが強いです。これは、海外から見ると珍しいようですが、なぜ、日本人は旬の食材や季節の料理へのこだわりが強いのでしょうか。

関口さん「日本の食文化は『食で季節をいただく』ことでもあり、日本人には、旬の食べ物で季節の移り変わりを感じる独自の考え方があります。旬を迎える時期の初めに出回る農作物や魚介類のことを『初物』と呼び、昔から初物を食べると『寿命が延びる』『福を呼ぶ』と考えられ、縁起がよいとされていました。

また、旬の食べ物は栄養的にも優れていることが知られ、春の山菜には代謝を促し、活動に備える働きがある、夏野菜は体の火照りを沈める、秋の作物は体に蓄えをもたらす、冬野菜は体を温めるなど、旬の食材を取ることは健康を守るという観点でも理にかなっています」

Q.サンマの調理法として、すぐに思いつくのは塩焼きです。塩焼き以外にも、おいしくサンマを食べる調理法を教えてください。

関口さん「新鮮なサンマであれば、刺し身やたたきもおすすめです。三枚おろしにして皮を引いたサンマを細かく切って、薬味を合わせると、脂ののった身の甘さを感じることができます。また、『サンマの炊き込みご飯』はサンマに焼き目をつけてから炊き上げることで生臭さが消え、サンマのおいしさをご飯が吸い上げてくれます。

『サンマ汁』は、ぶつ切りしたサンマを根菜と一緒にだしで煮て、みそ、おろしショウガで仕上げます。仕上げに刻みネギをたっぷりと。サンマの脂が溶けたコクのある汁物が完成します。体を温める効果があるので、寒さに備え試していただきたい一品です」

オトナンサー編集部

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