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ジャン=ミシェル・オトニエルが表現する、夢の世界。

  • 2020.9.20
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アートギャラリーのペロタン東京では、現在、フランス人アーティスト、ジャン=ミシェル・オトニエルによる新作の個展を開催中。オトニエルの日本でのギャラリー展は、今回が初。本展では、初公開となる新シリーズであるガラスの立体作品や、金箔を用いた絵画作品が展示されている。

Jean-Michel Othoniel Kiku - Ōtaniro(Earthen yellow-red-brown), 2020, Mirrored glass, stainless steel, 49 × 49 × 47cm, Unique  ©︎Jean-Michel Othoniel / JASPAR, Tokyo 2020 photo : Claire Dorn / Courtesy of the artist and Perrotin

『《夢路》DREAM ROAD』と名づけられた本展は、2012年に原美術館にて開催された回顧展以来初めてとなる日本での個展となる。このインスタレーションでは、立体作品は尊く神聖な護符として、カリグラフィーの絵画は聖像として展示。オトニエルはペロタン東京のギャラリー内に自身が「夢路」と名づけた夢の世界である、菊の花が咲く閉ざされた禁断の園を再現。西暦900年代の日本で編纂された『古今和歌集』や『後撰和歌集』に登場する「夢路」という言葉には、「夢をみる」「愛する人と夢で逢う」という二重の意味があるのは、ご存知の人も多いだろう。自身の展覧会を「夢路」と名づけるとこで、オトニエルはそのロマンティックな世界観を覗かせるとともに、感情への鍵となるのは花のような素朴なものであることや、それが空想と創造への「夢の路」であることを指し示している。これは私たちを取り巻く驚異的な物事に気づかせる、ひとつの世界の見方と言えるだろう。オトニエルにとって、現実とは、象徴と驚異の絶え間ない源なのだ。

8世紀に中国から日本へ伝来し、平安・鎌倉時代には不老長寿の象徴として皇室や公家、武家が愛でたと言われる菊の花。和歌などの古典文学でもたびたび登場するこの花は、日本人に長年愛されてきたものであり、古典作品の中では、菊花の「永遠の命」は、もろく儚い人生への対比表現として、美化されている。

「菊の花は日本でもっとも重要で象徴的な花のひとつだと言われています。忍び寄る冬もよそに、秋に咲く花として知られ、長寿と若返りの象徴となりました。周囲がすでに眠りにつき始めているにも関わらず、驚異的に闘い、あらゆる困難をものともせず咲く花という考え方をとても気に入っています。一年の間でもっとも遅く咲く花のひとつです」とジャン=ミシェル・オトニエルは語る。

立体作品『Kiku』の有機的かつ曖昧な形状は、日本文化における「結び」の伝統美をも参考にしている。オトニエルは、その結び目の謎めいた「《緊縛美》を呼び起こす」形状や、「観る者の視覚と戯れる鏡面ガラスの魅力も、ひとつの罠として機能している」と言う。作品の光り輝くガラスの色彩が、観る者の目を奪うように、「罠」の宿命的な誘惑性を思い出すだろう。

さらに、大型のキャンバスを用いた絵画作品では、白金箔の層の上に黒インクで抽象的なイメージを描き、明暗の感覚で遊んでいる様子が見受けられる。また、オトニエルが描く巨大で幻覚のような花の影は、この世界を案ずる視点にも言及しているのだ。

私たちが何気に目にしてきた自然――菊の花に深い解釈を加え、新たな気づきを与えてくれるオトニエルの夢の世界へ、この秋、ぜひ足を踏み入れてほしい。

View of the exhibition “夢路 – Dream Road” at Perrotin Tokyo, 2020 Photographer : Kei Okano Courtesy of Perrotin 

Jean-Michel OTHONIEL Kiku - Hiwamoegiiro(Siskin sprout yellow), 2020, Mirrored glass, stainless steel, 39 × 47 × 49cm, Unique  ©︎Jean-Michel Othoniel / JASPAR, Tokyo 2020 photo : Claire Dorn / Courtesy of the artist and Perrotin

Jean-Michel Othoniel Kiku Chrysanteme, painting on canvas, black ink on white gold leaf black ink on white gold leaf, 164 × 124 × 5cm ©︎Jean-Michel Othoniel / JASPAR, Tokyo 2020 photo : Claire Dorn / Courtesy of the artist and Perrotin

2019年、ルーブル美術館にて。自身のインスタレーション『La Rose du Louvre』の前に立つジャン=ミシェル・オトニエル。

ジャン=ミシェル・オトニエル1964年、フランス・サン=テティエンヌ生まれ。パリ在住。1980年代後半より、ドローイング、彫刻作品、インスタレーション、写真、執筆、パフォーマンスに至るまで、領域を超えた世界の創造を続けている。近年、彼の作品は建築的な側面も兼ね備え、世界中の公的・私的なコミッションを通して庭園や史跡に一部になっている。

ジャン=ミシェル・オトニエル  『《夢路》 DREAM ROAD』期間:開催中~10/24(土)会場:ペロタン東京(東京都港区六本木6-6-9 ピラミデ1F)開)12時~18時(火~土)休)日、月※予約制https://select-type.com/rsv/?id=9PxQprWCIuI&c_id=108497www.perrotin.com

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