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検索ワードやコメントに縛られず自分の感性で行動する時代へ/Placy代表、鈴木 綜真

  • 2020.9.17

「雰囲気の良いカフェで優雅な休日を過ごしたい」と考えたとき、あなたはどのようにお店を探すだろう?気になるエリアを散歩して見かけたお店に入る、「エリア名+おすすめのカフェ」と検索する、SNSで話題になっているカフェをリサーチする……。情報があふれた現代、心をときめかせる場所探しの方法は多様化している。そんななか、株式会社Placyの代表、鈴木 綜真さんが提案するのは「感性で行き先を決める時代」。鈴木さんが開発した音楽で場所を探せる地図アプリ「Placy」に込めた想い、その先に見据えている未来とは一体どのようなものなのだろうか。

音楽で場所を探せる地図アプリを開発の経緯

「Placy」は、好きな音楽を入力すると、その音楽にあった場所やその音楽を好む人が行きつけの場所が表示される地図アプリ。SpotifyやApple Musicなどの音楽配信アプリをもし使っていれば、連携させることで「Placy」に好みの音楽の傾向を取り込むことができる。同じようにその曲を登録した人たちが訪れた場所がどんどん紐づいていくという仕組みだ。

「行きたい場所を検索するとき、こんな場所というイメージを言語化するところからはじまるじゃないですか。でも、思っている情報を言語化する時点であらゆる要素が削ぎ落とされていくと思うんですよね。だから、思ったものを思ったまま検索するなら言葉に縛られなくてもいいかもな、感覚的なまま検索できたら良いな、と思ったんです」
と語るのは、「Placy」を開発した株式会社Placyの代表である鈴木 綜真さんだ。

このような考えに至ったきっかけは、学生時代に取り組んだ「都市解析」の研究があるという。「都市解析」とは、いろんな街の要素をデータとして掘り起こす、たとえば交通量解析や、エリアごとの世帯年収を解析し、統計上に落としていくといったものだ。鈴木さんはそのような研究を行うなかで統計上は落とせないデータ、街にいる人たちは知っている情報、雰囲気やニオイなど感覚的なものを定量化することはできないかと考えた。

「感覚的なものを定量化して、ビジュアライズして終わり。大学の研究だと、『おもしろかった』で終わってしまうことに少しモヤモヤしたんです。そこで、人の行動を感覚的に変えるには地図がいいかなとPlacyの構想ができました」

「音楽」が起点で場所を探せるようになる仕組み

音楽と場所が結びつくイメージは、正直薄い。どのようにすれば、音楽を起点としてお気に入りの場所を探すことができるのだろうか。その疑問をぶつけると、鈴木さんは場所検索サービスの変遷と、Placyが最適な場所を見つけてくれる理由を教えてくれた。

「僕が知ってる最も古い場所検索サービスは、1900年代から始まったミシュランガイドです。タイヤメーカーのミシュランが、「ドライブを楽しんで欲しい」という想いで1900年にスタートし、Authorityであるミシュラン調査員が3段階で下した評価を元に、読者は店舗への信頼を築くようになったんです。そこから時は進み、インターネットの発達によって個人がレビューやランキングを付けられるようになりました。しかし、そのレビューシステムが徐々にハックされ、その数字が意味をもたないものになってきていることが問題だと思っています。だから、信頼できる「人」を起点とした場所検索システムが生まれていきました」

「例えば、気の合う友人Aくんが行っている場所をSNSで検索することはできますが、Aくんと似た音楽の趣味や雰囲気、感覚を持った人が好む場所を検索することはできません。これは、Aくんがどんな人なのかを言語で説明することが、かなり難しいから」

「Placyでは、Aくんを言語で説明する代わりに、Aくんの「感性」を音楽で表現し、Aくんと近しい感性の人が訪れた場所を検索することができます。たまたまバーで出会った人が、音楽の感性も、ファッションや雰囲気も自分に似ていることってあるじゃないですか。それをPlacy上でどんどん広げていけば、自分が感覚的に好きだと感じる場所を検索できるようになると思うんです」

情報化社会の今だからこそ、僕らの感性がキーとなる

いまだに広告を打っていないPlacyだが、2020年7月には全国版をリリースした。ユーザーを徐々に伸ばし続けている背景には2つの理由があるという。

「お店の人が仲間になってくれて、お店を利用したお客さんがアプリに興味を持ってくれて、そこから少しずつ広がっていっている印象ですね。というのも、たとえばお店のページを開いたときに、ここのお店を訪れた人の音楽が見られるだけでなく、店長が選んだ1曲、その曲を選んだ思いを書くことができるんです。これによって、店長さんの人となりや音楽の感性に惹かれた人が訪れるきっかけになる。そしてその店長さんがこんなサービス「Placy」やっているよとお客さんに教えることで、感度の高い人からまた同じように感度の高い人に広まっています」

「あとは、地方公共団体の人たちが、『エリアのプロモーションとかエリアのブランディングになるから』とかなり興味を持ってくれているんですよね。ある地方では、「Placy」とコラボして地方の人しか知らないおしゃれなカフェを店長さんの一曲を添えて掲載したフリーペーパーをターミナル駅に置こうとしています。そうすることで、観光客の方が音楽の趣味が合うお店に行くようになる、いわゆるジャケ買いみたいなお店選びができるようになるんです」

すでに急速な広まりを見せつつある「Placy」だが、鈴木さんは今後の「Placy」の展開を次のように考えている。

「外国の方向けにも展開していきたいです。せっかく日本に訪れても、語学の壁を理由にみんなが同じキュレーションサイトを見て、同じ場所に行くだけなのはもったいないじゃないですか。でも、音楽なら言葉が壁にならないですから、一人ひとりにとってお気に入りの場所を見つけられるきっかけになると思うんです。このほかにも、映画や本などで場所検索できるようにし、似たような感性の人同士でつながれたらと思っています。音楽や映画の趣味が一緒同士って、時間をかけずとも同性・異性関係なく仲良くなれるじゃないですか。だから、ちょっとしたマッチング機能も付けられたらなって」

鈴木さんの「Placy」に対する構想は止まらない。情報がありふれた世の中だからこそ、自分のなかにある“感性”に素直に行動する。そうすることで新しい出会いや選択肢、つながりが生まれる時代はもうすぐそこまで来ているのかもしれない。

撮影:南方篤

取材・文:於ありさ

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