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アート好き・建築好き・サウナ好きが集う銭湯へ。進化した錦糸町「黄金湯」

  • 2020.9.16
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昭和のノスタルジーを感じられる昔ながらの銭湯は、日本文化のレガシーと言ってもいいかもしれない。新型コロナ感染症で休業を余儀なくされた銭湯も多いなか、今年で創業88年を迎える東京・錦糸町の「黄金湯」は「銭湯改修プロジェクト」によってリニューアルした。これを機にサウナやバーも併設し、“わざわざ行きたい”欲を掻き立てるスポットへと進化した。

オールナイト営業や話題のコラボイベントなどを精力的に行う押上の人気銭湯「大黒湯」は、銭湯ファンならずともその名がよく知られる存在だ。黄金湯はその姉妹店。錦糸町駅北口から徒歩6分という立地にある、地元密着型の銭湯である。

創業88年という老舗の銭湯だが、老朽化に伴い大掛かりな改装工事に着手。ただ改修するだけでなく、より多くの人や世界中の人へ銭湯文化を発信するべく「銭湯改修プロジェクト」として大きく生まれ変わることを決めた。プロジェクトには、そうそうたる面々が関わっていることで注目されている。
例えば、総合プロデューサーには、「ヒロコレッジ(HIROCOLEDGE)」の高橋理子が担当。そして、内装設計は「スキーマ建築計画」の長坂常が手掛けている。長坂常が主宰する「スキーマ建築計画」は、「ブルーボトルコーヒー(Blue Bottle Coffee)」や「ヘイトウキョウ(HAY TOKYO)」を手掛けたアトリエ系建築設計事務所だ。

今回の黄金湯のプロジェクトでは、長坂が1年半の年月をかけて内装を設計した。脱衣所や店頭は、スキーマ建築計画の真骨頂でもあるウッドとコンクリートで構成されている。ミニマルなデザインは銭湯を、モダンに変身させた。開放感ある広い窓から自然な光が入り込み、風呂場でも気持ちよく汗を流せそうだ。

「境界を越えた2250の世界で思いを馳せる」をコンセプトに、内装をデザインしている。2250とは、銭湯特有の男風呂と女風呂を仕切る境界壁の高さだ。

風呂場の内装では、2250mm以下の壁をベージュに、2250mm以上の壁にはコンクリート素材を用いることにした。
そしてアート好きにたまらないのが、壁画だ。「きょうの猫村さん」で知られるマンガ家ほしよりこによる富士絵巻図を施している。江戸の銭湯を舞台にした庶民の生活を、ほのぼのとしたタッチで描き、これぞ下町といった雰囲気だ。風呂場には「ラブバー」という男湯と女湯をつなぐ手すりも設置した。

これらはすべて、境界壁を越えた向こう側の世界に思いを馳せるためだという。
壁絵もラブバーも、その全容は見られない。なぜなら、男湯と女湯にまたがってデザインされているためだ。そのもどかしさも“向こう側”に思いを馳せる楽しい仕掛けになっている。もちろんのぞきは厳禁なので、全容がどうしても見たい人は、週1回予定されている男湯と女湯の入れ替えが狙い目だ。

また、銭湯以外にも楽しめるコンテンツを増やした。例えば、サウナ。水風呂や外気浴も楽しめるように設計されており、オートロウリュサウナや国産ヒノキのセルフロウリュサウナも用意されている。銭湯そのものに興味がなくても、サウナ好きにはぜひ訪れたいスポットだ。何より都内で外気浴ができるサウナとしても貴重な存在だろう。

いわゆる番頭台には、DJブースを設置。しかも、牛乳やクラフトビールなどを購入できる「番台バー」もある。風呂上がりにゆっくりとチルタイムを楽しんだり、偶然出会った誰かと世間話をできるようなスペースがあることで、より昔ならではの銭湯の良さ…交流の場としての銭湯文化を実感できるだろう。
かつての銭湯の良さをそのままに、現代にうまく転換したのが、リニューアル後の「黄金湯」というわけだ。

長坂も「老若男女から支持される憩いの場になってほしい」「銭湯から錦糸町を盛り上げたい」と語る。「黄金湯」もグローバルとローカルが融合した「グローカル銭湯」を目指すとのことだ。コロナ前は、日本独自の文化として訪日外国人からの注目を集めていた「銭湯」。コロナによる渡航自粛によってその波は現在一旦止まってしまっているが、モダンに変身した黄金湯がやがて外国人にとっても憩いの場となることは間違いないだろう。

アート・建築・サウナ好きが加わることでより盛り上がる、銭湯。黄金湯は、老舗を愛し続ける地元の人と、訪れる人が交流する場となるような仕掛けが施された、新世代の銭湯だ。銭湯ファンならずとも、ぜひ訪れて人々との交流を楽しみたい。

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