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子育てママは次期首相に誰を選ぶ?「待機児童」改善求める声も

  • 2020.9.13
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小泉進次郎氏(左)と妻の滝川クリステルさん(2019年8月、時事)
小泉進次郎氏(左)と妻の滝川クリステルさん(2019年8月、時事)

安倍晋三首相の辞任に伴う自民党総裁選が9月14日に投開票され、新総裁が同16日、新首相に選ばれる見込みです。7年8カ月ぶりの新首相誕生を前に、子育て中の母親らに民間会社がアンケートを実施。総裁選の3候補以外も含めて「次期首相になってほしい人」を聞いたところ、育休取得で注目された小泉進次郎環境相が3位、7人の「子だくさん」で知られる橋下徹・元大阪府知事が4位に入りました。

アンケートでは「次期首相に実現してほしい政策」も聞き、「待機児童問題」と「学童保育」の改善を求める声が多数を占めました。子育てアドバイザーの分析も交えて結果を紹介します。

トップは菅氏「苦労人だから」

アンケートは9月7~11日、妊娠・育児関連のアプリ開発などを手掛ける「カラダノート」(東京都港区)が、同社が運営するメディア「ママびより」のメルマガ登録者、ママびよりシリーズアプリの利用者を対象にインターネットで実施。129人から回答を得ました。

「次期首相になってほしい人」を与野党の政治家・元政治家9人から選んでもらったところ、最多の50票を獲得したのは、総裁選でも最有力とみられている菅義偉官房長官。その理由(自由記述)については「苦労人と聞いたので頑張ってほしい」といった声がありました。高卒後に秋田県から上京し、働きながら大学を卒業、地方議員を経て国政に進んだ経歴が好感を持たれているようです。

2位(19票)は、総裁選では苦戦中の石破茂・元自民党幹事長。「一番国民に寄り添った政治ができそうだから」といった理由が挙がりました。

17票で3位だった小泉環境相には「育児や仕事をする環境の現場を知る人がトップであってほしい」という声が上がり、15票で4位の橋下氏には「知識と教養だけでなく、一般人としての感覚、子育て世代の感覚も持ち合わせている」などの意見がありました。

ちなみに、もう一人の総裁選候補者、岸田文雄・自民党政調会長は5票で同率6位。ほかに河野太郎防衛相が6票、枝野幸男・立憲民主党代表が5票、山本太郎・れいわ新選組代表が4票などとなりました。

「待機児童問題」「学童保育」改善求める声

アンケートでは「次期首相に実現してほしい政策」も聞きました。4項目を挙げて選んでもらったところ、「待機児童問題の改善」「学童保育の改善」がともに72票で最多となり、「男性育休の義務化」が51票、「不妊治療に対する支援拡充」48票と続きました。

政策アンケートの結果について、子育てアドバイザーの佐藤めぐみさんに聞きました。

Q.なぜ「待機児童問題の改善」が最多となったのでしょうか。改善すべき問題点と期待する点も含めて教えてください。

佐藤さん「日本全体としては、待機児童は減少しているものの、それでも入園できていないお子さんが約1万2000人いるわけです。その改善を期待する声が反映された形ではないでしょうか。

安倍政権は本年度末までに、待機児童をゼロにするという政府目標を掲げていましたが、先日、加藤勝信・厚生労働相が『達成が困難』ということで、来年度以降に見送る考えを示しました。この9月に新たな政権に変わることで、待機児童問題に改めて向き合ってほしいという保護者からの率直な要望だと思います。

2019年に全国ワーストだった世田谷区の待機児童が470人から、今年は一気にゼロとなったように、ここ最近、都市部の保育所の整備が進み、待機児童は数字的には調査開始以来、最も低い数値となっています。一方で、人口が増えている地域では、高まる需要に対策が追いつかない自治体もあるのが現状です。

夫婦共働きが3軒に2軒の今、十分な受け皿がなければ、働きたくても働けない状況が発生してしまいます。待機児童をゼロにしないと歩みだせないご家庭も多いので、『減ったからよし』ではなく、『ゼロにする』受け皿整備を進めていただきたいです」

Q.「学童保育の改善」も同数で最多となりました。なぜでしょうか。改善すべき問題点と期待する点を教えてください。

佐藤さん「この春、新型コロナウイルスの感染拡大を防止するため、全国的に休校措置が取られましたが、その間も学童保育は開所され、朝から開けていたところもあったようです。

『3密』を避けることを求められる中、現実的には長時間、限られたスペースで過ごさざるを得ない状況。これまでも学童保育の改善について必要性が叫ばれてきましたが、今回、これが1位となったのは、コロナ禍という状況がその問題を露呈させたためかもしれません。

私が受けている育児相談でも、学童保育についての悩みは多く、お子さんが『行きたくない』と言うので困っているという声を聞きます。ただ、学童保育をやめてしまうと、放課後の過ごし方によっては新たな問題となり得ます。中には、友達と過ごすうちに、羽目を外し、ダメだという場所(交通量の多い所、人通りの少ない場所など)にまで行ってしまうこともあります。

小学校の低学年では、まだ判断力もついていないので、学童保育のような、大人の目が届く放課後の居場所はとても重要です。夫婦共働きが増え、ますます、学童保育の重要性は高まっているのに、そこで働く職員は非正規雇用で低賃金、それに伴う人手不足…と問題は山積みです。

世の中にお金で解決できない問題は多々ありますが、学童保育に関しては予算拡充により改善できる部分が非常に大きいと思います。子どもたちが毎日数時間を過ごす大事な場所です。施設自体の新設や改修、備品や用具の刷新、職員の待遇改善など、子どもたちが『行きたい』と言う場所をつくることが今後ますます求められると思います」

「産める環境」の整備を

Q.3位以下の政策について、改善すべき点や次期首相に期待することは。

佐藤さん「『男性育休の義務化』については、共働き家庭が増えているのだから、“共育て”するのが当たり前ではないかという母親たちの意見があります。ただ、育休を取得すると、取得期間中は会社からの毎月の給与は出ないので、長期にわたり、ましてや夫婦同時に育休を取るのは金銭的に現実的ではありません。

フランスでは、産後に11日間取得できる『父親休暇』があるのですが、その間の収入の補填(ほてん)は医療保険から支給されます。私はたまたま出産当時、フランスに在住していたのですが、この制度をとてもありがたく感じました。

母親など日本からの助っ人なしでの出産でしたので、この制度がなければ、私は産後1人でやりくりしなければいけませんでしたが、俗にいう『産後の肥立ち』の時期を夫婦で乗り越えることができたので、体力的にも精神的にも大きな助けとなりました。

ただ一方で、『男性が育休を取得すること』だけを目的にしてしまうと、本末転倒になるかもしれません。大事なのは、その育休中に何ができるかです。もし、男性がそれを『休暇』として捉えてしまい、例えば、テレビやゲームばかりしていたら、『会社に行ってくれた方がいい』ということになってしまいます。

子育ての基礎的なことを学ぶ『父親教室』のような形で、具体的に何をする期間かという認識を高めた上での普及が望ましいと思います。

『不妊治療』については、経済的な負担の大きさが課題です。支援拡充が実現すれば、前に進めるご夫婦が増えると思われます。

『フランスでは不妊治療が無料』という話を聞いたことがある人もいると思います。収入の多少に関わらず、治療が必要だと医師が認めれば、国の保険で不妊治療の費用を賄ってくれます。42歳までという年齢制限はありますが、平等で希望の持てる施策です。フランスは子だくさんの国で知られていますが、このような後ろ盾があることが、やはり大きいと思います。

フランスの合計特殊出生率は1.87人(2019年)と先進国中トップで、日本の1.36人(同)と比べ、0.5人も多いのです。日本では少子化問題が切実ですが、対策として、育てやすい環境を整えるのも大事ですが、それ以前の『産める環境』づくりも大事だと思います」

Q.選択肢に挙がった4項目以外で、次期首相に実現してほしいことはありますか。

佐藤さん「働き方改革、特にその中でも長時間労働について、改善してほしいです。国連からも、日本の働き方に関する是正勧告がされていますが、長時間労働による育児への悪影響は否めません。

私はこれまで、さまざまな国に住みましたが、日本ほど、人々が遅くまで働いている国はありません。他の国では、みんな、基本的には午後6時くらいには帰宅して、夕食は家族で食べています。帰宅時間が遅くなればなるほど、家族が一緒に過ごす時間は減ることになり、それによるしわ寄せは子どもに行ってしまうことも多いのです。

もちろん、育児、特に親子間の絆においては、その“質”が大事なのですが、量である“時間”が助けてくれることは多々あります。ただし、長時間労働を解消することで収入が下がり、生活が営めなくなってしまっては元も子もないので、個人や企業レベルではない、抜本的な国の施策が必要だと感じています」

オトナンサー編集部

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