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2020年最大のエンタメ拠点! 角川武蔵野ミュージアムをレポート

  • 2020.9.6

埼玉県・東所沢にできた「角川武蔵野ミュージアム」。世界的な建築家、隈研吾氏がデザインを手掛けた、図書館と美術館と博物館が融合する文化複合施設である。角川ならではの膨大な数の書籍、そしてアートが集まる注目のミュージアムを、11月のグランドオープンに先駆けてレポートする。

東所沢に突然現れる、巨大な岩

「角川武蔵野ミュージアム」がオープンしたのは、埼玉県の東所沢。筆者は埼玉出身なので、この場所の名前を聞いたとき、なんとも絶妙な場所に建ったな……と、正直そう思った。繁華街があるわけでもなく、駅もJR武蔵野線の東所沢駅のみ、というエリアだからだ。

そんな場所なので、ミュージアム自体は気になってはいたものの、ややみくびっていたところはあった。しかし、実際に訪れてみるとそんな思いは吹き飛んだ。

まず、建物の存在感に圧倒されるのだ。ミュージアムがあるのは東所沢駅から歩いて10分ほどの場所。川や公園のある長閑な道の中に突如、巨大な岩のような建物があらわれる。この感動は文字では伝えきれないので、ぜひ実際に訪れてみてほしい。
建物の入り口は、古代の神殿や遺跡を思わせるような、石造りの階段の先にある。リモートワークですっかり鈍った体には少々辛かったが、この階段を上り切るとミュージアムの入り口がある。

中に入ると、さすがはできたばかりのミュージアムといったところで、大変綺麗だった。目についたのは、ソーシャルディスタンスの案内板や、アクリル版で覆われた窓口などの、コロナ対策の設備。どれもデザインされており、館内の雰囲気に見事に溶け込んでいた。

実はミュージアムはまだプレオープンの状態で、11月までに段階的にオープンしていく予定だ。建物は地上5階建てで、ギャラリーや図書館、書庫などで構成されている。現段階で見ることができる場所のひとつが、1階のグランドギャラリー。角川武蔵野ミュージアムには全部で4つのアート展示フロアがあるが、このグランドギャラリーがいちばん広い。

現在は、こけら落としで「隈研吾/大地とつながるアート空間の誕生 ― 石と木の超建築」が開催されており、これまで隈研吾氏が手掛けた建築物や、角川武蔵野ミュージアムについて詳しく展示されている。

展示物の中には、建物の外壁に使用されている花崗岩の一片が置かれていた。花崗岩は50cm×70cmに切り出されており、外壁にはなんと2万枚ほどを使っている。これを、半年かけて貼り付けたのだという。

花崗岩の色は「ブラックファンタジー」というモノクロカラー。近くで見てみると、石に含まれた鉱物がキラキラと輝いて美しい。

このように、ミュージアム自体を細かく解剖した展示は、建築に詳しくない筆者でも楽しめる内容だった。取材をしたこの日は、最終チェックに訪れていた隈研吾さんご本人の姿もあった。

これでもかと本を楽しめる、本のテーマパーク

そして角川の施設ならではの魅力が、1階と4階、5階の3フロアに渡って展開されている、本のフロアである。

目玉は、高さ10mの本棚に囲まれた「本棚劇場」。11月のオープンとなるため、まだ本は入っていなかったが、天井まで届く書架は圧倒的。棚を眺めるだけでもワクワクする空間だった。

ここにはいずれ、角川の人気書籍や、ミュージアムの展示と連動した書籍が並ぶ予定だ。上段には名だたる研究者の貴重な蔵書を保管し、閲覧には事前予約が必要となる。

さらにこの書架は「本とデジタルの融合」をテーマにしており、モニターやプロジェクターが設置されている。これらの装置により本棚へのプロジェクションマッピングが可能だという。今後どんな表情を見せてくれるのか、非常に楽しみである。

続いてご紹介するのは、4階にある図書館「エディットタウン」。通常の図書館では「小説」や「図鑑」といったように、書籍をジャンルごとにわけているが、ここでは「男と女のあいだ」といったようにテーマごとに並べる。そうすることで、利用者の気持ちにあった本が探せるようになるのだという。

また、注目したいのが棚の素材だ。本来なら壁の下地に使うようなベニヤ板を、敢えて表面に出して使っている。

実はこのミュージアムでは、素材の持ち味をいかすため、わざと素材を剥き出しにしている場所が多くある。これは「素材」を大切にしたいという隈研吾氏の思いによるもの。隅々まで設計・デザインされた建物自体を見て歩くのも、このミュージアムの楽しみ方のひとつだ。

周辺のアートスポットも見逃せない

そしてミュージアムの周辺にも、見どころがたくさんある。まずは建物のすぐそばに建つ、武蔵野坐令和神社。この神社はポップカルチャーの聖地として建立したという。

この神社も、デザインを担当しているのは隈研吾氏。本殿の天井には、中国の神話に登場する霊鳥・鳳凰の姿が描かれている。これは人気ゲーム「ファイナルファンタジー」のキャラクターデザインを担当する、天野喜孝氏によるもの。建物自体の美しさもさることながら、この天井画も非常に艶やかなので、ミュージアムに訪れた人はその足でぜひ立ち寄ってほしい。

そして見逃せないもうひとつのスポットが、屋外庭園「武蔵野樹林パーク」だ。ここでは、チームラボが手がけるデジタルインスタレーション「チームラボ どんぐりの森の呼応する生命」を常設展示している。

昼も夜も見ることができるが(入場料が必要)おすすめは夜だ。庭園に置かれている数百個のオブジェが、夜になると一斉に発光。幻想的な光景を見ることができる。

このオブジェはただ発光するだけではなく、光が「伝染」していくという、不思議な特徴がある。オブジェをひとつ叩くと色が変わり、近くのオブジェに色が伝染していくのだ。ひとりでももちろん楽しめるが、何人かで同時に叩けば、それぞれの場所が起点となり光が広がっていく、美しい光景が見られるかもしれない。

11月のグランドオープンに向けて準備が進む「角川武蔵野ミュージアム」。現在は「本棚劇場見学ツアー」などのイベントを開催中だ。人気のイベントはチケットがすぐに完売してしまうので、気になる人は公式サイトをチェックしてほしい。

様々なカルチャーが融合するこの場所は、訪れるたびに感性を刺激してくれる場所になるに違いない。

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