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メゾンエルメスで、動物と人間の繋がりに思いを馳せる。

  • 2020.9.5

動物と人間の親密な関係性とその深い矛盾。

『ベゾアール(結石)』シャルロット・デュマ展

『Yuzu and Urara』17年。デュマの映像作品では、長回しのカメラワークのなかで動物の姿勢や動きをゆっくりと見つめる視点が際立つ。馬たちは黙して語らないが、瞑想のなかで人間をどう価値づけているのだろうか。

アムステルダムを拠点とするデュマは、騎馬隊の馬や救助犬など、現代社会で人間と密接な関係を育んでいる動物たちのポートレートを発表してきた。2014年からは北海道、長野、宮崎、与那国島など日本に現存する希少な在来馬を撮影し続けている。

デュマが動物を被写体に選ぶのはその美しさや崇高さ、まして愛らしさのためではない。ある特定の動物たちを、人間はなぜ飼育し、共生し、定義し、個人的な思い入れを抱き、ときに何かの象徴として扱うのか。食糧源として繁殖させながら、いっぽうで擬人化して見てしまうのか。そのような観点から、対象である動物と人間の関係を掘り下げて理解し、私たち自身の人間性のありようを捉えようとする。

本展では近年の映像作品3点を中心に、撮影を通じて発見した原始の風景を紐解き、馬にまつわる品々や資料に着目する。出展物のひとつでもある「ベゾアール」とは、動物の胃や腸の中に形成される凝固物のこと。古い伝承ではお守りであったり、神秘的な想像と結び付けられることもあるという。

人生の哀しみや苦しみのなかで、動物たちの存在は人間の感情に寄り添い、癒やしをもたらしてくれる。だが、いつしか両者の間には深い矛盾が横たわっているのかもしれない。デュマの作品世界は、動物本来の能力や、互いの存在の意味や価値について、あらためて思考するきっかけになるだろう。

『ベゾアール(結石)』シャルロット・デュマ展会期:開催中~11/29銀座メゾンエルメス フォーラム(東京・銀座)営)11時~20時(日は~19時)無休入場無料●問い合わせ先:tel:03-3569-3300www.hermes.com/jp/ja/story/maison-ginza

*「フィガロジャポン」2020年10月号より抜粋

※新型コロナウイルス感染症の影響により、開催時期および開館時間が変更となる場合があります。最新情報は各展覧会のHPをご確認ください。

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