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40歳で35年の住宅ローンを組んだ夫婦が犯した2つのミス

  • 2020.8.23

住宅の購入は、ほとんどの人にとって人生で一番大きな買い物でしょう。「一生に一度の買い物だから妥協したくない」という気持ちはわかりますが、大きな買い物だからこそ返済計画は慎重に決めないと、生涯にわたってお金に苦労する羽目になるかもしれません。

■40歳で頭金なしの35年のローン

老後の相談に来られたFさん(53)とその妻(50)も、住宅ローンの返済で苦労されていました。Fさんは40歳の時に頭金なしで4,000万円の住宅を購入しています。住宅ローンの内容は以下のとおりです。

<Fさん夫妻の住宅ローン>
ローン額:4,000万円
返済期間:35年
金利:1.2%
金利タイプ:変動タイプ
月々の返済額:10万53円
ボーナス月返済額:20万15円(ボーナス返済額9万9,962円)

■繰上げ返済をするはずが……

40歳時点で35年ローンですから、完済はFさんが75歳の時です。もちろん75歳まで住宅ローンを払い続けるのが難しいことはFさんも自覚していましたが、「お金を貯めて繰上げ返済をすればいい」と考えていたそうです。しかし実際は、53歳まで繰上げ返済をすることはできませんでした。

Fさん夫妻には今年19歳になるお子さんがいますが、教育熱心な奥さんの方針で、塾や習い事はお子さんが望むようにさせてきました。その結果予想以上に教育費がかかり、繰上げ返済は子どもが独立するまで延期したそうです。

お子さんが独立するまであと数年ですが、別の問題もあります。社会保険料の上昇や子どもの扶養控除の縮小・撤廃などによって、住宅ローンを組んだ後の手取りが少しずつ減っていたのです。さらに、2019年の働き方改革以降は残業が制限されたため、収入も大幅に減りました。新型コロナウイルスの影響で、ボーナスが出るかどうかもわかりません。

このままでは、いつまでたっても繰上げ返済ができる目処が立たず、最初の契約どおり75歳まで住宅ローンを払い続けなければならなくなりそうです。

■老後の生活費との両立が困難に

退職金を住宅ローンの返済に回すことはできますが、退職金は老後のための大切なお金なので、全額をローン返済に使ってしまうと老後の生活に不安が残ります。このような状態になってしまっては、生活水準を大幅に下げるか、住宅を売却するしかありません。

Fさん夫妻が住宅ローンを組む際に犯したミスは、2つあります。1つは、頭金なしで多額のローンを組んでしまったことです。現在は「頭金なしでも組めるローン」が多いですが、住宅ローンだけで家を買うと月々の支払いが大きな負担になります。今回のケースも、頭金を2割(800万円)入れていたら月々の返済額は毎月2万円以上減少するため、家計に余裕が生まれたはずです。

2つ目は、返済期間を長く取りすぎたことです。返済期間を短くするとその分月々の返済額が増えるので、単純に返済期間を短くすればいいというわけではありませんが、定年後も支払いが続くなら確実に繰上げ返済ができるようなプランを立てるべきでした。もしプランどおりにならなくても、退職時のローン残高を見積もり、退職金で完済できるか、そして老後資金は準備できるかなどを考えて、適切な借入額にしておくべきだったのです。

■60歳までに完済できる返済プランを

「40歳になってから頭金なしで長期のローンを組んだ場合」の失敗事例をご紹介しました。Fさん夫妻のような例は多く、晩婚のご夫婦の場合は60歳をすぎても教育費がかかることもあります。

「60歳を超えても再就職すればいい」と思われている方は多いですが、再就職による収入の大幅な減少を想定されていない方がほとんどです。理想の住居は買えないかもしれませんが、できるだけ60歳までにローンを完済できるよう、返済プランは慎重に立てましょう。

文・松岡紀史(ファイナンシャル・プランナー、ライツワードFP事務所)
筑波大学経営・政策科学研究科でファイナンスを学ぶ。20代の時1年間滞在したオーストラリアで、収入は少ないながら楽しく暮らす現地の人の生活に感銘を受け、日本にも同様の生活スタイルを広めたいという想いから、帰国後AFPを取得しライツワードFP事務所を設立。家計改善と生活の質の両立を目指し、無理のない節約やお金のかからない趣味の提案などを行っている。

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