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東京の働く女性が駆け込む料理家、中島芙美枝がもてなす最高のランチ

  • 2020.8.20

現代人の食事と健康はとても良好とはいえない。そんな今、東京の働く女性たちが駆け込み寺として利用しているのが、代官山の「SUPPAGE (サッページ)」で火曜日限定でランチを提供している料理家、中島芙美枝さんの料理だ。悩める女性たちのオアシスとなっているランチタイムを取材した。

たった週1のランチで女性たちが健康になっていく!?

「食べると不思議と自分を肯定できて、心が丸くなる料理」

中島さんのランチタイムに通う女性たちが口を揃えていうのがこのセリフだ。週に1回、たった1食なのに、中島さんの作るランチプレートを食べると、体がスッキリとするだけでなく、心の状態もポジティブに整えることができるという。取材時にランチを食べにきていたお客さんたちも、そのようなことを体感しており、毎週ここに通うのが日課になっているという。

中島芙美枝 / 料理家。毎週火曜日に代官山「からだリセット」のランチタイムを担当。第1金曜日「からだを整えるお弁当」を表参道の「Grenier」で販売。じぶん食料理教室、手でつくるワークショップなどを不定期に開催している。Harumari Inc.

今では東京で働く女性たちの食事の一端を支えている中島さんだが、もともとテレビ局の過酷な労働下で働いており、体調を崩したことをきっかけに食べ物の力に注目するようになったという。ヨーロッパ・ベルギーを拠点に長年、日本の薬膳を伝えてきた、オオニシ恭子先生のもとで「やまと薬膳」を習得し、それ以降は東京で働く女性たちのために生活に寄り添うようなレシピを提案し続けている。

「働いていると毎食しっかり作って食べるというのが不可能じゃないですか。それは過去の自分経験でも十分分かっているので、東京で働いている女性たちに、食の分野で少しでも何かできないかという思いから活動を始めました」

旬の食材を集めた盛り付けが色とりどりで美しい。Harumari Inc.

「SUPPAGE」でのランチタイムの他にも、今年の春にハワイを舞台に3泊4日で行われたリトリートツアーでは、毎食の食事を担当。そこでの参加者たちの変化を通して、より食事のポテンシャルを感じるようになったといいます。

「リトリートの期間中に参加者の方から、『食事を正すことで体だけでなくて心も整った』ということをいわれました。確かに、初日と比べると皆さん笑顔が増えてポジティブに変化していく様子が分かりましたし、その時、食事で人間の中身までも変えることができるんだなと強く実感しました」

旬の野菜を丸ごといただくのが中島さん流

そんな女性たちを救う中島さんのランチプレートは一体どんなものなのか。そのこだわりをうかがうと、「旬の食材を使うこと」と至ってシンプルなものだった。しかも、ミネラルやビタミンCが体に良いからなど栄養学的な話ではなく、四季折々の季節の中で生き抜いた生命の力をいただくのを重視しているからだという。

「例えば今なら、“暑さに強い野菜のエネルギーをいただく”というのをメニューのポイントにしています。旬の野菜を食べることでその季節に生き抜く力をもらえるイメージですね。とはいえ、夏野菜は体を冷やす効果もあるので、生ではなく必ず火を通して冷やす力を弱めています。調味料の中にも体を冷やすタイプと暖めるタイプがあるので、全体のバランスを整えながら味付けをしています」

さらにその野菜の使い方も、旬のものを“全部”いただくという、中島さんならではのポイントがある。

「例えば人参だったら理想としては根っこから葉っぱまでをひとつのメニューで使い切りたいところ。今はなかなか葉っぱまでは手に入らないですが、それでも皮ごと入れているし、丸ごと食べてこそエネルギーとして作用してくれるというイメージで使っています」

梅雨明けしたばかりの取材日のメニューは、夏野菜カレー。南瓜のマスタード和えや紫キャベツのザワークラウトなど夏野菜をふんだんに味わえるプレートになっている。ランチ 1,500円〜Harumari Inc.

人の常在菌も料理には欠かせない味付けに

「ほんものの梅干し」や「ほんものの味噌」など、中島さんのメニューでも使われている“ほんもの”と言う言葉。この言葉についてうかがうと、ここにも中島さんの考えがあった。

「スーパーで手に入る調味料は実は簡単に自分で作れるものが多いんです。例えば梅干しなら本来は塩と梅でできているし、味噌も大豆と米と塩からできるもの。それだけでなく、マスタードや醤油などここで使う調味料はすべて手づくりしたものを使っています」

さらにこれらが人の手を介してイチから作られているのも大きなポイントになっていると中島さん。

「これはオオニシ恭子先生とお料理していて驚いたことなのですが、サラダにドレッシングをかけてトングで混ぜるのと、手を使って混ぜるのとでは、手で混ぜた方が断然美味しんですよね。その人の持っている常在菌だったり、手の温度が野菜とドレッシングを馴染ませて味が変わるといわれています。梅干しや味噌なども同じで、混ぜる人によって味が異なったりして、個性を加えられるのです」

そんな手しごとによる調味料へのこだわりに共感した人は、中島さんが主宰する手しごとワークショップへの参加もオススメだ。現在はコロナウィルスによって開催が未定となっているが、自家製味噌や梅干し、発酵調味料を一緒に作れるクラスは毎回すぐ満席になるほど好評だ。

中島さん手作りの味噌。ワークショップで一緒に作っても、作る人の常在菌や環境によって香りも色も味も変わってしまうのが面白いそう。出汁がいらないほどおいしいとのこと。Harumari Inc.

これまで料理や食事に無頓着だった人が、家庭で簡単に取り入れやすい料理をうかがうと、中島さんは味噌汁だと断言する。

「普段全く料理をしないお客様がたまたま味噌を作るワークショップに参加してくださったことがあったのですが、あまりのおいしさに毎朝味噌汁を飲むのが日課になったそうです。ぬか床と異なり味噌は一度作れば手がかからないので手作りしてみるのもいいですし、市販のものでもOK。シンプルなので料理をしない方でも始めやすいと思います」

中島さんがもてなす料理で多くの女性たちが食の大切さに気付かされたように、週に1度だけでも心と体を労わる食事を意識することが大切だ。食事で自分の体がどう変わるか、まずは中島さんのランチタイムに足を運んで確かめてみてはいかがだろうか。

撮影:服部希代野

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