奥さんにバレたらすぐ切られる？不倫の彼との関係を清算する？しない？【ひとみしょうのお悩み解決】

“【お便り募集】文筆家ひとみしょう お悩み解決” に送っていただいたお悩みの中からひとつピックアップしてひとみしょうさんがお答えしていきます。

「凛さん43歳」のお悩み

はじめまして、こんにちは。43歳独身です。
わたしは今、妻子ある男性と交際しています。
昨年、私も結婚してましたが、当時の主人にわたしの不倫が発覚し、離婚しました。私も、彼も、元主人から慰謝料を請求され支払いに応じました。
主人に発覚した時、もう彼とは終わりだと思いました。でも、彼は終わりとは言わず、慰謝料を弁護士を通して請求されても関係を解消するとは言ってきません。

普段から、好きとか嫌いとか そういう言葉は一切言わない人なので、何を考えてるのか正直わかりません。彼の家族は仲が良く、自分で奥さんは綺麗で1歳になる息子さんの話しもします。写真も見せてきたり。
わたしは拒否反応を殺しながら見てます。
家族と仲良しなら、わたしとリスクを犯してまで一緒にいること無いと思い、何度か関係を解消した方がいいと伝えたこともあります。
それでも、返事はなく普段と変わりない彼の態度に、これが返事なのかな、とか、好きだの言わない代わりに今も一緒にそばにいるのが答えなのか、とそう思ったり。

以前、「結婚してる俺が『好きだよ』とか言って嬉しい？」と、真顔で言われ、それ以来こっちから わたしのこと好き？とか楽しい？と聞くことすらタブーとなりました。どういう意味なんでしょうか。
わたしは、好きなものは好きと言って欲しかった、それだけなんです。
周りの友達からは、多分 奥さんにバレたら すぐ切られるよ、そういう男は、と言われてます。
その覚悟はありますが、自分が惨めじゃないの？とか何度か友達なりに今の関係を解消させようとしてくれてます。
わたしも、バッサリ切られる前に自分から立ち去りたいです。
でも、踏ん切りがつかない。
彼の本当の心が見えないから余計に。
はっきりと正直に言っていただいて良いので、アドバイスなど頂けたらと思います。

〜ひとみしょうのお悩み解決コラム〜

凛さんも凛さんの友だちも、彼のことを誤解しています。
彼は奥さんに不倫がバレたからといって、凛さんとの不倫関係を終わりになんかしません。

ふだんから「好き」と言わない男性のホンネとは

「（彼は）普段から、好きとか嫌いとか、そういう言葉は一切言わない人なので、何を考えてるのか正直わかりません」ということですが、ふだんから無口な男って、正直、男から見ても謎です。

男には2種類あって、1つはよくしゃべる男。もう1つは、しゃべらない男。よくしゃべる男から無口な男を見たら謎なんですよ。なにを考えているのか一切わからないのです。
がしかし、唯一、彼なりに他人に媚びない生き様を貫きたいのかな、とは思います。
しゃべる、すなわち、言葉を発するときって、他者に対する気づかいとセットじゃないですか？ ことさら周囲の人を気づかおうと意識しなくても、しゃべるという行為にはすでに、他者に対する気づかいがセットされてしまっていますよね？ その他者に対する気づかいと、他者に媚びることは、明らかに別ものですが、でもその線引きってかなりあいまいでしょう？

なので、「しゃべる＝他者に媚びてしまっている」ということに、わたしたちは往々にして陥っているわけですが、凛さんの彼のように、あまりしゃべらない男は、そこに陥ることがない（か、少ない）。
というようなことなので、彼はなにも凛さんのことが好きではない、ということではないのです。むしろ、凛さんのことが好きなのだろうと思います。

不倫に関しては男のほうが悩み上手

次に、「結婚してる俺が（凛さんに）好きだよ、とか言って嬉しい？」と、真顔で言われたことについて、どういう意味なんでしょうか、というご質問にお答えします。

これは端的に、結婚していることを申し訳なく思っているという意味です。
――おれが結婚していなければ、凛のことをもっと愛せるのに、結婚しているために、どうしても愛に制限がかかってしまう。そのことを申し訳なく思う、とった意味です。

そのような彼に対して、凛さんは「好きなものは好きと言って欲しかった、それだけなんです」とのことですが、このへんが男女のすれちがいです。
おそらく多くの女性は、凛さんのように、「好きなものは好きと言って欲しかった、それだけなんです」と思うはずです。
でも男にとっては「そんなに単純な話ではない」のです。ないのです、というか、本来は単純な話を、男はみずから複雑にしてしまう傾向を持っている、というか。
好きなら好きと言えばいい。たしかにそのとおりです。

でも男は、女性に比べ、頭でっかちに生きているから、凛さんのことと、家族のことが同時に頭に浮かぶのです。そんなもん同時に浮かんだからといって、今すぐ答えなんて出ませんよね？ でも答えが出ないとわかっていても男は、同時に浮かんでしまった2つのことを、ボケ防止の丸い2つの球を手のひらで揉み転がすように、いつまでも揉み転がすのです。ようするに、こと不倫に関しては、男は女性に比べて悩み上手にできているのです。

奥さんにバレたらすぐに不倫相手を切る？

最後に、「周りの友達からは、『多分、奥さんにバレたらすぐ切られるよ』と言われてます」というところについて。

上に書いた2つのことを女性的に解釈すれば、彼はすぐに凛さんのことを切る男に見えるのだろうと思います。なんといっても彼は凛さんに好きと言わないし。

でも、男であるぼくから見たら、そうは思いません。彼は誰にも媚びない生き様を貫きたいと思っているのです。そして、家族のことも凛さんのこともともに、自分にとって大切な存在だと思っているがゆえに、いつまでも2つのことに悩んでいる男です。
そのような男が、奥さんにバレたらすぐに不倫相手を切る？
ありえないでしょう。

男にとってイラっとする女性の発言や考え方

男って、「どうして好きと言ってくれないの？」と言われたらイラっとします。
また、家族の話を我慢して聞かれてもイラっとします。もっともこれは、家族の話を凛さんにする彼も彼です。しなきゃいいのに。でも、きっと、彼にとっては、家族も凛さんも、同じくらいかけがえのない存在なのでしょう。だから話すのでしょう。
彼なりの分別でもって、「結婚してる俺が『好きだよ』とか言って嬉しい？」と聞いた結果、好きと聞くことをタブー視するようになった凛さんに、彼はイラっとします。
なぜなら、これら3つはすべて、彼の誠意を女子的に誤解しているからです。

彼は凛さんのことが好きです。家族と凛さんの2つの存在のバランスを彼なりに必死になってとっています。
そのことに凛さんが気づかないと、ふたりの関係は終わるでしょう。彼が「女としての」凛さんに愛想を尽かすから別れが訪れるのではないんです。凛さんの「人となり」に愛想を尽かすから別れが訪れるのです。
不倫関係って「男女」の関係でありつつも、究極的には「人として」の関係だからです。（ひとみしょう／作家・コラムニスト）