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つらい記憶を引きずるのはなぜ? その秘密は脳のメカニズムにあり

  • 2020.8.13
付箋を貼って、内容を整理する女性

忘れられないのはなぜ?

鏡に映った女性の表情

自分あるいは身近な人が病気になった記憶、大きな地震などの災害の記憶、子どもが生まれたときの記憶など、鮮明に残る記憶というものがあります。対照的に、昨日お昼に何を食べたかといった記憶はすぐ消えてしまいがちです。なぜ、頭から離れない思い出と、そうではない思い出に分かれているのか。よい思い出ばかりならばよいですが、そうもいきません。

このたび米国コロンビア大学の研究グループは、生存本能として、将来同じような悪い出来事を避けるために生まれもって備わる能力のひとつと考えられるといいます。ただ、人間の社会では、そのような性質はトラウマとして残りやすくなることにもなり問題にもなるのです。憂うつな気持ちをよみがえらせることが心身の負担になり、PTSD(心的外傷後ストレス障害)のような精神的な病気にもつながっています。

研究グループは、こうした感情と記憶との間にどのような関連があるのかを分析しました。動物実験から脳のなかの記憶をつかさどる部分と、恐怖感をつかさどる部分がどのように反応するのかを調べ、記憶が強まるような現象があるのかを確かめたのです。

つらい記憶が残るのは脳の働きのため

浮かない表情の女性

明らかになったのは、感情が揺れ動いたときには、記憶がとどまりやすいということです。脳のなかには、記憶に関係している場所(海馬)と、恐怖心に関係している場所(扁桃体)があり、恐怖心を感じるような環境の情報が、恐怖心に関係する場所に送られるときに、同時に記憶に関係している場所の活動も高まると確認されたのです。これらの場所が一緒に活動することで記憶が強固になると考えられました。

つらい出来事のトラウマが残る人では、こうした脳の働きが深く関わっていると考えられます。つらい出来事で悩みが深くなっているならば、背景にはここで示されたようなメカニズムによってなかなか治りづらくなっているのかもしれません。一人で悩まずに、医療機関などに相談することを考えることも大切でしょう。

<参考文献>

Why Are Memories Attached to Emotions So Strong?
https://www.cuimc.columbia.edu/news/why-are-memories-attached-emotions-so-strong

Jimenez JC, Berry JE, Lim SC, Ong SK, Kheirbek MA, Hen R. Contextual fear memory retrieval by correlated ensembles of ventral CA1 neurons. Nat Commun. 2020;11(1):3492. Published 2020 Jul 13. doi:10.1038/s41467-020-17270-w
http://dx.doi.org/10.1038/s41467-020-17270-w
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32661319/

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