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イマドキの若者たちが注目している「SDGs」の目標5つ

  • 2020.8.4
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近年、日本でも多くの企業が取り組みを進めている「SDGs(エスディージーズ=持続可能な開発目標)」。この取り組みについて、大学生たちはどう考えているのでしょうか。オンライン座談会を通して見えてきた、意外な問題意識とは──。司会と解説は若者文化に詳しい原田曜平さんです。

勉強する学生グループ
※写真はイメージです(写真=iStock.com/recep-bg)

【座談会メンバー】
鈴木 詩音莉さん/慶応義塾大学法学部政治学科3年生。女性
島本 沙耶香さん(仮名)/早稲田大学社会学部4年生。女性
加藤 耀くん/東京理科大学理工学部2年生。男性
富山 連太郎くん/上智大学経済学部2年生。男性
寺田聡志くん(仮名)/慶応義塾大学経済学部4年生。男性
遠山淳(仮名)くん/明治大学文学部3年生。男性

SDGsを知ったきっかけは……

【原田】今回のテーマ「SDGs」は、持続可能な社会を目指すための国際目標で、貧困や環境、ジェンダーなどさまざまな分野の課題が含まれているんだ。まずは皆がSDGsについて知っているのかどうか、何がきっかけで知ったのかを教えてくれるかな。

【加藤くん】去年、塾講師のバイトをしていた時に、ほかの先生からSDGsの話が出て初めて知りました。周りの人は皆知っていたので恥ずかしかったですね。僕はSDGsという言葉を聞いたことがあるぐらいで、内容は全然わかっていなかったので、それからあらためて勉強しました。

【鈴木さん】私が知ったのは1年生の時。授業で、いくつかのテーマの中からひとつを選んで英語でプレゼンするという課題があったんです。それでSDGsを選んで、プレゼンのために初めて目を通しました。それまでは「何となく聞いたことあるな」ぐらいだったので、しっかり学べてよかったです。

【富山くん】僕は高校生の時、現代社会の授業で出てきました。でも、当時は17の目標を教えてもらった程度でしたね。ちゃんと理解したのは大学に入ってから、経済学部の授業で知りました。

【島本さん】私はTVのニュース番組で見たのかな……。いつの間にか知っていたという感じです。内容を意識するようになったのは就活が始まってから。企業説明会でよく出てくる言葉だったので、どんな取り組みなのかなって少し関心を持つようになりました。

友達の影響で人種差別問題が自分事に

【寺田くん】SDGsは高校で、英語の長文問題に出てきて知りました。大学では、僕は専門が国際政治なので割としっかり学んだのですが、同世代や高校生には知らない人も多いんじゃないかな。高校生にSDGsを教える出張授業をやった時は、意外と皆知りませんでした。

【遠山くん】僕は大学1・2年の授業で教えてもらいました。正直、自分はそれほど興味が持てなかったんですが、こうした取り組みをしている企業にはクリーンなイメージを持つようになりました。

【原田】程度の差はあれ、皆SDGsが何かということは大雑把には知っているんだね。じゃあ、SDGsには途上国支援やエネルギー問題、経済成長、環境問題など17の目標があるんだけど、このうち特に興味があったり、身近に感じたりするものはどれかな?

【富山くん】10番目の「人や国の不平等をなくそう」には特に注目していて、自分なりに調べたりしています。最近だと、アフリカ系アメリカ人への警察の暴力に抗議する「ブラック・ライヴズ・マター」や、香港の民主化運動が気になっています。SDGsに関係なく、命や人権の不平等はおかしいと思うから。

【原田】日本でも本当は国籍や人種に関する問題があると思いますが、見た目である肌の色が明確に違うアメリカの今の人種問題に比べると、一般的に見えにくいと言われています。何がきっかけで注目するようになったのかな?

【富山くん】高校の時に黒人の友達がいたんですよ。彼からは差別の話もたくさん聞いたので、そのおかげで、少しだけかもしれないけど自分ごと化して考えられるようになった気がします。こういう問題を考える上で、当事者の立場にある友達の存在はかなり大きいと思います。

帰国子女や海外の友人に刺激を受けることも

【鈴木さん】私も友達の影響が大きいですね。高校では3分の1が帰国子女で、消費や環境の問題に関心の高い子が多かったんですよ。服のサステナブルな消費や、海洋動物の保護などを呼びかける活動をしている友達もいて、彼女たちの影響で「私も意識しなきゃいけないんだな」って思うようになりました。だから、12番目の「つくる責任 つかう責任」や、14・15番目の環境問題は特に気になっています。

【原田】身近に当事者や活動している人がいると関心も高まるんだね。遠山くんはアメリカに留学していたそうだけど、日本と比べて向こうの若者はどうだった? やっぱりSDGsに関する意識も高いのかな。

【遠山くん】僕がいたロサンゼルスでは、人種問題に関心のある子が多かったです。ブラック・ライヴズ・マターでも、ルームメイトは抗議の電話をしたりしていました。その意味では日本より先進的だと感じましたね。ただ、アメリカ全体が先進的なのかどうかはわからない。僕は若者の生活圏の中だけで暮らしていたから、大人はまた違うのかもしれません。

【原田】僕はニューヨークとロスで定期的にジェネレーションZにインタビュー調査を行なっています。数年前にインタビューしたヒスパニック系の一流大学に通っている学生が、シリコンバレーにあるIT企業のインターンの面接に行った時、「アメリカのIT企業はほとんどが白人の世界だから、ヒスパニック系だと絶対に受からないよ」とはっきり言われて落とされたと凄くショックを受けていました。

アメリカは先進的な面がある一方で、日本以上に様々な大きな問題を抱えている国でもあるよね。でも、その優秀な学生は、差別が比較的に少ない日本で起業したいと言っていたから、人口減少に苦しみ、良質な移民が国力として必要になっている日本にとってはチャンスかもしれないね。

LGBTについて「古い考え方の人」にショック

【島本さん】私は5番目の「ジェンダー平等」に関心があります。大学の先輩にゲイの人がいるんですよ。その人は自分のジェンダーを割とポップに捉えているけど、SNSを見ると悩んでいる人も少なくないみたい。周囲の人に受け入れてもらえないとか、色々な問題があるようなんです。

【原田】島本さんがSNSで見たのはどんなケースだったのかな。

【島本さん】ツイッターで「化粧品売場でリップを見てたら、店員さんに『つけてみますか?』って言われてうれしかった」っていう男性のツイートがあったんです。そうしたら「男なのにリップを勧められるなんてどんな見た目なんだよ」みたいな、茶化すような返信をつけた人がいて。そんな古い考え方の人もいるんだな、何で受け入れられないんだろうって色々考えさせられました。

【加藤くん】僕も身近にバイセクシャルの子が数人いるので、LGBTの話題には興味があります。そういう人たちに対していまだに抵抗感がある人も多いみたいだから、早く解決しなきゃなって思います。

SDGsを自分事として考えられるかどうか

【原田】LGBTの問題って、君たちにとってはそんなに身近なんだね。それに、知っているってことは本人がオープンにしているんだよね。それってごく当たり前のことなの?

【加藤くん】オープンにしている人、結構多いですよ。ただ、言いたがらない人も一部いるだろうなとは思います。

【遠山くん】身近にLGBTの人がいるのは、今はもう珍しくないんじゃないかな。僕の周りにもいますよ。

【富山くん】そうだと思う。僕の身近にもいます。

【原田】そうなんだね。僕が高校生の時なんて、少し女性的だったりする男子は周りからすごくイジられていたよ。オープンになんてとてもできる雰囲気じゃなかった。今も完全に寛容な雰囲気になったわけじゃないんだろうけど、その頃に比べれば大分いい社会になってきているんだね。

今の大学生たちは、SDGsについてはある程度は知識を持っているようです。大学で専門的に学んだ子もいれば、授業や企業説明会などで耳にしただけという子もいました。しかし、意外なことに「耳にしただけ」の子も、友達や先輩が当事者だったり積極的に活動したりしていると、急速に関心を深めるようです。特に人種やLGBT、消費にまつわる問題は、すでにごく身近なものになっている様子がうかがえました。

SDGs関連の分野を専攻していない一般的な若者にとって、関心を持てるかどうかは「自分ごととして考えられるかどうか」にかかっているのではないでしょうか。こうした傾向は、商品選びなどの消費行動や、就活における企業選びにどう関わってくるのか。次回以降はその点を探っていきたいと思います。

構成=辻村洋子 写真=iStock.com

原田 曜平(はらだ・ようへい)
マーケティングアナリスト
1977年生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、博報堂に入社。ストラテジックプランニング局、博報堂生活総合研究所、研究開発局を経て、博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダー。2018年よりマーケティングアナリストとして活動。2003年、JAAA広告賞・新人部門賞を受賞。著書に『平成トレンド史』『それ、なんで流行ってるの?』『新・オタク経済』などがある。2019年1月より渡辺プロダクションに所属し、現在、TBS「ひるおび」、フジテレビ「新週刊フジテレビ批評」「Live News it!」、日本テレビ「バンキシャ」等に出演中。「原田曜平若者研究所」のYouTubeチャンネルでは、コロナ禍において若者の間で流行っていることを紹介中。

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