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住宅ローンの完済は79歳。年金生活に入っても住宅ローンが残る夫婦の末路

  • 2020.8.2

収入が多くても、支出が多いために将来への備えがない方がいらっしゃいます。今回のご相談者のFさんご夫婦(夫57歳、妻54歳)は、何とかなるだろうと、お互いに家計の支出に目を向けていませんでした。定年が身近に感じられる年齢になり、79歳完済としている住宅ローンのことが気がかりになっているというご相談です。

■44歳で35年ローンを組む

Fさんご夫婦は、共働きでお仕事を続けてこられました。お子さん(長女24歳)、愛犬(10歳)と一緒に暮らしています。ご主人が40歳の頃に奥様が再就職をして収入が増えたことから、44歳のときにマンションを購入されたそうです。当時の年収は、ご主人600万円、奥様300万円です。

ペット可、駅から徒歩15分と好条件の新築マンションが、当時の住所から遠くない場所で、建設されていました。購入価格は4,000万円。共働きで収入も多く、ご主人のご両親から500万円の援助がありましたし、79歳完済の35年ローンを組んで購入することにしたそうです。「フラット35」Sを利用し、79歳までの月々の支払額は、駐車場、管理費、修繕積立費を含めて、当初5年間は15万円、6~35年目は15.5万円になりました。

それまで住んでいた賃貸マンションの家賃は、共益費や駐車場代を含めて15万円払っていたので、住宅ローンの支払いは続けられると考えて決めたそうです。

■年収アップとともに支出も増える

住宅購入後は、長女さんのために教育費を惜しみなく使い、ペットの費用や、家族旅行や帰省などで支出は膨らみました。ご夫婦の収入は徐々に増えていましたが、家計の収支状況に目を向ける習慣がなくても、経済的に困ることはないので、お金に対する感覚が変わっていたのかもしれません。現在の貯蓄はほとんどありません。

Fさんご夫婦が無理に節約しなくても何とかなると考えていた理由は、共働きなのでご夫婦の退職金と年金がしっかりあるはずだと安心していたからでした。

■60歳以降の返済額はいくら?

Fさんご夫婦の退職金は、ご主人が2,000万円、奥様が1,000万円、合わせて3,000万円です。老齢年金は、二人とも厚生年金に加入されていましたので、ご主人が20万円、奥様が11万円、合わせて31万円です。

現在の収入は、お二人合わせて毎月77万円。支出は80万円で、毎月3万円赤字となっています。ボーナスは、ご主人が200万円、奥様が80万円で合わせて280万円となり、赤字分はボーナスから支払いますので、ご夫婦にとっては今まで問題だと感じにくい状況だったそうです。

しかし、住宅ローンの返済明細表を確認させていただくと、57歳時点での住宅ローンの支払残高は、2,520万円となります。年金生活になってからも管理費などを含め、毎月15万5,000円の支払いが必要になりますので、年金だけでは不足するでしょう。今の生活を直さず退職金を使っていると5年ほどでなくなってしまいます。

Fさん(ご主人)は、来年は役職をはずれ、年収は下がるとのこと。60歳以降は、さらに下がることが予想されるので、会社の再雇用制度を利用するか、別企業へ再就職するかは検討中とおっしゃいます。

■先の見通しを早めに考えておく

もしもこのまま、毎月80万円の支出を削減できなければ、来年から住宅ローンの支払いが滞るようになり、自宅を手放すような事態になってしまうかもしれません。すぐに今までかけていた費用を減らして毎月の支出を改めるようにお伝えしました。

フラット35に借り換えをされると、毎月の返済額を約1.4万円下げられ、支払総額を300万円以上減額できます。また、削減できた支出やボーナスを使って繰り上げ返済をされると、将来の支払額はさらに抑えられます。お二人で力を合わせてがんばっていただきたいと思います。

収入が多くても、何とかなる、では済まない事態になることがあります。しかし、良くないと気づいて修正すれば、改善できる可能性もあります。皆さんも老後資金の準備ができているか、ぜひご確認をなさってください。

文・藤原洋子(FP dream代表)
生命保険会社で営業職を経験し、AFP資格を取得。現在は、独立系ファイナンシャル・プランナーとして、執筆、相談、セミナーを通して活動しています。

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