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「塾なし」のお金をかけない中学受験は成功するのか? 年収500万円前後のシングルマザーが立てた作戦とは

  • 2020.7.26
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“親子の受験”といわれる中学受験。思春期に差し掛かった子どもと親が二人三脚で挑む受験は、さまざまなすったもんだもあり、一筋縄ではいかないらしい。中学受験から見えてくる親子関係を、『偏差値30からの中学受験シリーズ』(学研)などの著書で知られ、長年中学受験を取材し続けてきた鳥居りんこ氏がつづる。

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写真ACからの写真

中学受験はお金の話とセットで語られることが多い。私立中高一貫校の場合、6年間の学費は600万円超と言われ、また受験対策のための塾代が小学4〜6年生までの3年間で、200〜250万円程度になることが普通。さらに「合格切符のためなら何でもする!」とばかりに、塾のほかにプロ家庭教師を頼む家庭も別に珍しいことではなく、とにかく中学受験にはお金がかかるのである。

こうなると、そもそも中学受験は、私立中高6年間の学費を払える裕福なご家庭のするもの、また、高額な塾代や家庭教師代にお金を回せる財力が「合格」を左右すると思われるかもしれない。確かにその傾向はあるものの、一方で「お金をかけない中学受験」という道を進む親子も稀ではないのだ。

そういった親子は、次の3点の方法を用いて「お金をかけない中学受験」を実践しているという。

・私立ではなく公立中高一貫校を目指し、塾に通わない
・塾と私立中高一貫校の「特待制度」を利用する
・学費が安い私立中高一貫校を選び抜く(それでも年間80万円ほどはかかるが)

シングルマザーの郁子さん(仮名)と、一人娘の由夏ちゃん(仮名)も、「お金をかけない中学受験」に挑んだ親子である。郁子さんは、由夏ちゃんがまだおなかの中にいる頃に、夫の不倫発覚により離婚。その後、夫が不倫相手と家庭を持ったところまでは把握していたらしいが、やがて離婚したらしく、今現在は音信不通ということだ。

「元夫のことは、もういいんです。最初から慰謝料も養育費も当てになんかしていませんでしたから。由夏を授かったことだけで十分です。由夏は私だけの大事な子どもですので、私が立派に育てればいいって、むしろ覚悟ができましたね」

郁子さんは国立大学を卒業後、IT企業に就職。その後、妊娠中の離婚騒ぎというショッキングな出来事を受け、切迫早産となり、結果的に退職を選んだそうだ。それから、幼い娘を抱えながら、プログラミングの勉強をするなどしてさらにスキルを磨き、今はフリーランスのITエンジニアとして生計を立てている。

「今はいい時代になりました。元いた会社や、かつてのお客様からお仕事をいただき、ほとんどの仕事を自宅ですることができているので助かります。でも、ふんだんにお金があるわけではないので、お金をかけるところと節約するところの線引きはしっかりしているつもりです」

娘の由夏ちゃんへの教育方針も明確だ。

「私は親に学費を払ってもらい、大学まで出してもらったので、由夏にもそうしてあげたいんです。やっぱり、自分がこうやって仕事をして自立できているのも、教育を受けられたからだと思うので……。男は裏切りますけど、仕事は裏切りませんものね(笑)」

年収500万円前後の中学受験作戦とは?

郁子さんの年収は500万円前後。お金のことを考えると、中学受験は正直、迷ったそうだが、由夏ちゃんが公立小学校でいじめを受けたことで、決意が固まったという。

「5年生になった時です。由夏が『あの子たちと同じ(公立)中学には行きたくない!』って言ったので、私も腹をくくりましたね」

そこで、郁子さんは3つの作戦を立てたという。

・塾に行かせるお金はないので、自宅で自分が教える
・受験校は公立中高一貫校と特待制度がある私立中学に絞る
・自宅から自転車で通える範囲の学校を選ぶ

そうして、受験校として候補に上がったのが、A公立中高一貫校と、特待制度のあるB私立中学。どちらも創立から歴史は浅く中堅校ではあるが、大学実績も好調な人気校である。

「ちょうど、友人のお子さんの中学受験が終わったタイミングだったので、テキストやら、参考書をまるごといただくことができて、すごくありがたかったですね。私がリモートワーカーなので、時間の都合もつくし、由夏を傍で見張ることもできて、それもよかったです」

結果、「塾なし」で由夏ちゃんはA公立中高一貫校とB私立中学の特待生枠の合格を勝ち取り、今はA中学の3年生になっている。

お金がないわが家の娯楽は「図書館」、読書が国語と社会の素地に?

気になるのは、由夏ちゃんの勉強法だが、郁子さんからは意外な答えが返ってきた。

「勉強法ですか? う~ん、ウチはお金がなかったので、娯楽が市の図書館だったんですよ。それで赤ちゃんの時から本は浴びるほど、読み聞かせをしましたし、由夏本人も本を読むのがすごく好きな子に育ってくれました。そのせいか、国語とか社会に関してはまったく問題なかったですね」

また、郁子さんは食費を節約するために、市から農園を借りて畑を耕しているそうだが、「その影響か、由夏は自然と生物にも興味を持ったみたいで、それも受験にプラスになったと思います」という。

「中学受験は算数が肝ですが、私は理系で、もともと数学が大好きなんです(笑)。由夏に算数を教えて、理解させることができたら『私の勝ち!』と思い、当時は朝から『今日の算数の勉強は、どう教えようか。こういう解説をしたら面白がってくれるかな』と考えていました。でも、由夏にとっては、そんな私がウザかったみたいで、半年くらいで『自力でやる!』と言い出して、どうしても解けない問題しか、聞きに来なくなりましたけどね(笑)」

最後に郁子さんは、“塾なし受験”の最大の勝因を挙げてくれた。

「結局、由夏は、算数の成績があまり伸びなかったんですが、『少し頑張れば手が届きそうな学校を目指したこと』が勝因と言えば、勝因かもしれません。中学受験はしなくてもいい受験なので、経済的にも偏差値的にも無理はしない。でも、納得できるまで頑張るってことが、いろんな意味でよいのかなって思っています」

由夏ちゃんの学校もようやく登校が再開となり、今は毎日、学校で友達に会える喜びに浸っているそうだ。

鳥居りんこ(とりい・りんこ)
エッセイスト、教育・子育てアドバイザー、受験カウンセラー、介護アドバイザー。我が子と二人三脚で中学受験に挑んだ実体験をもとにした『偏差値30からの中学受験シリーズ』(学研)などで知られ、長年、中学受験の取材し続けている。その他、子育て、夫婦関係、介護など、特に女性を悩ませる問題について執筆活動を展開。

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