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『梨泰院クラス』で人気急上昇。韓国発の縦スクロールマンガ「WEBTOON」はなぜハマる?

  • 2020.7.11

電子書籍はもはや読書のスタンダード。でもマンガは紙で読みたいという人はまだまだ多い。その理由のひとつは、マンガ独特のコマ送りが独特のシーケンスをたどるため、左右にページ送りする電子書籍と相性が悪いということもある。そんななかで、スマホで読むことに特化したWEBTOON(ウェブトゥーン)と呼ばれる縦スクロールマンガ作品が、マンガ配信サイトで圧倒的な人気を誇っているのだ。今年、日本のマンガ好きや出版業界でも注目のワードとなりそうなWEBTOONの魅力に迫る。

日本のマンガ市場に新たなカルチャーが到来

WEBTOONとは、主にスマートフォンでの閲覧を想定して作られたコミックで、「オールカラー」「縦スクロール」という特徴がある。

元々は韓国で2000年代にWEBTOONサービスが立ち上げられたことからコンテンツがスタート。そしてスマートフォンやパソコンでマンガを読む習慣が広がっている今、韓国だけでなく台湾やタイなどのアジアをはじめ、北米など、国際的に人気が高まっている。

日本でも少しずつWEBTOON作品が増えており、近年日本のマンガ賞やコンペティションでも「WEBTOON部門」を設定したり、受賞作の中にWEBTOON形式の作品が見受けられたりと、その注目度の高さがうかがえる。

今回はこのWEBTOON人気について、2016年4月に電子マンガサービスとして誕生した「ピッコマ」の担当者、杉山由紀子さんに話を聞いてみた。

ピッコマで配信されているWEBTOONは、韓国、中国、アメリカなどさまざまな国から作品が提供されている。主に、カカオジャパンのグループ会社「kakaopage」という韓国のマンガプラットホームから、クオリティが高く、人気のあるWEBTOON作品を入荷して公開しているという。

「日本で楽しんでもらえるようにローカライズ(翻訳)作業をしてからの配信となるので、ほとんどが半年程度遅れて連載スタートとなります。連載がスタートしてからは毎週更新しています。
最近では、日本でもWEBTOONが人気となっているため、注目作品の場合は、あらかじめ準備期間を設けて、日韓同時に連載をスタートすることもあります」(杉山さん/以下同)

WEBTOONは海外作品が多いということで、WEBTOON人気は、いわば海外のマンガに対して注目が集まっているともいえる。実際、その人気の急上昇ぶりとはどれほどのものなのだろう。

ピッコマのサービス開始当初と比べたら一目瞭然だが、特に2020年に入ってから急激な成長を見せている。新型コロナ禍におけるおうち時間の増加によりスマホで読むマンガ需要が高まったことも一因と予想できるが、WEBTOONが広く一般読者に受け入れられた証拠ともいえるだろう。

「3、4年前からピッコマでもWEBTOONから人気作品はでていましたが、今年に入ってからWEBTOONファンの方の熱量に驚かされています。先日、今年3回目となる『ピッコマAWARD』というマンガ賞を発表したのですが、そのなかにWEBTOONも数作品含まれていました。イベントのなかで読者から著者の方へメッセージを送れる企画があったのですが、『俺だけレベルアップな件』(作:DUBU(REDICE STUDIO)、 Chugong、h-goon)という作品に届いたメッセージは、なんと5万件以上でした。ひとり1回しか送れない仕組みになっていたので、実際に5万人がメッセージを送ったということになります。これは驚きました」

あの作家の新作も、あの話題のドラマ作品もWEBTOON

また、注目しているのは読者だけでなくクリエイター側もだそう。『東京タラレバ娘』などで知られる人気マンガ家・東村アキコさんも、WEBTOON作品を発表したことで話題となった。

「日本の版面マンガを描いている人気作家さんが、新しいチャレンジの場としてWEBTOONに興味を持ち始めているというのもここ最近の動きです」

Netflixオリジナルシリーズ『梨泰院クラス』独占配信中Harumari Inc.

「一方韓国では、日本でも流行っている『梨泰院クラス』など、WEBTOONが原作の実写ドラマがヒットしています。『梨泰院クラス』は、日本では『六本木クラス』としてピッコマで独占配信しています」

まさに読者、クリエイター、業界を巻き込んだブームとなっているWEBTOON。しかし、WEBTOONを読んだことがない人にとっては、結局その魅力とは何なのか気になっている人が多いだろう。その答えとして、杉山さんは「スマートフォンで読みやすい表現方法」「更新スピードが早い」「マンガファンだけではなく、ライト層も楽しめる」という3つの理由を挙げてくれた。

©︎2020. Higashimura Akiko. neostory. All rights reserved.Harumari Inc.

「もともとWEBTOONはスマートフォンで読むことを前提に、演出や表現などがどんどん進化していったものなので、スマホでマンガを読む人が増えた今、作品が最適化された最高な状態で読むことができるというのは魅力のひとつかと思います。

また、WEBTOONは週刊連載している作品が多く、なかには週2回更新される作品もあります。読者が次の話を長く待たずに読めるので、それもハマりやすくなっている理由です。

最後に、WEBTOONはオールカラーでシーンの連続性をスピーディーに楽しむことができるため、マンガファンだけでなく、アニメや動画、ゲームなど、いわゆるスキマ時間を楽しむような『スナックカルチャーコンテンツ』を嗜むライトなユーザーにもマッチしています」

©︎DUBU(REDICE STUDIO), Chugong, h-goon 2018/D&C MEDIAHarumari Inc.

「待てば¥0」という、無料で読み進められるシステムも、ライトなユーザーにはありがたい。このような理由から、ピッコマではWEBTOONを「マンガとは違う、新しいエンタメコンテンツ」として考えているとのこと。オールカラーの美しい作画や、縦スクロールだからこその流れるような心地良さ。そしてWEBTOONのしくみにおける疾走感と手軽さが、マンガファンという括りに止まらず、より幅広い層にとって身近に感じられるカルチャーになっているのだ。

担当者おすすめ。注目のWEBTOON作品をご紹介

だんだんとWEBTOON作品が気になってきたという人もいるだろう。そこで現在、WEBTOONで現在人気の作品についても教えてもらった。

「ファンタジーと恋愛ジャンルが人気です。そのなかでも一番人気があるのが、先ほども出てきました『俺だけレベルアップな件』です。この作品は2019年3月に連載がスタートしたゲーム的な世界観が魅力のファンタジーアクションですが、下記のグラフのように右肩上がりの成長をし続けています」

1作品のデータを見ても、その人気は驚くべきもの。ここからは、杉山さんおすすめのピッコマ独占配信作を紹介していこう。

①『俺だけレベルアップな件』(作:DUBU(REDICE STUDIO)、 Chugong、h-goon)

©︎DUBU(REDICE STUDIO), Chugong, h-goon 2018/D&C MEDIAHarumari Inc.

「ピッコマの中でも最も人気のあるWEBTOON作品です。今年度のピッコマAWARDでも賞を獲得し、月間販売金額が1億円を突破する大ヒット作となっております。ノベル版もピッコマで配信しており(ノベル版ではWEBTOONの連載より少し先の展開を読むことができます)、最近はノベルとWEBTOONを合わせて楽しむユーザーも増えています」

②『六本木クラス』(原作/作画:Kwang jin)

©Kwang jin / Daum WebtoonHarumari Inc.

現在話題のNetflixオリジナルシリーズ『梨泰院クラス』の原作WEBTOON(日本版)作品。ドラマを観て熱狂した人も、原作を読んで再びあの興奮を思い出してみては。

③『私、アイドル宣言』(作:HoneyWorks・モゲラッタ(HoneyWorks))

©️HoneyWorksHarumari Inc.

「人気クリエイターユニットHoneyWorks(ハニーワークス)との共同プロジェクトとして連載中のWEBTOON作品となります。HoneyWorksの人気楽曲から生まれたプロジェクト『告白実行委員会』シリーズから、アイドルキャラクターであるmona(成海萌奈)を主人公にしたサクセスストーリーです」

④『私のことを憶えていますか』(作:東村アキコ)

©2020. Higashimura Akiko. neostory. All rights reserved.Harumari Inc.

「日本を代表するヒットメーカーである漫画家・東村アキコ先生のWEBTOON作品です。日韓同時連載として、両国の電子マンガプラットフォーム『ピッコマ』(日)・『kakaopage(カカオページ)』(韓)にて連載されております」

このようにすでにWEBTOONを代表する作品が存在しているが、これからさらにコンテンツの拡充が予想されるという。

「今よりも、読める作品数や、読めるジャンルが広がっていくと思います。さらに、日本の出版社、日本のマンガ家さんたちが、今までのノウハウを活かしならが、新しいWEBTOON表現方法を探求し、クオリティの高い国内制作のWEBTOONが増えていくと思います」

一過性のブームではない、新しいエンタメコンテンツとして。今後はより日本の色を取り入れていくことになるであろうWEBTOONから目が離せない。

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