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第41話:幻のユートピア / リコさんの話 連載【誰かの話】

  • 2020.7.3

 

第41話:幻のユートピア / リコさんの話 連載【誰かの話】
出典 FUDGE.jp

外山夏緒さんの物語の連載【誰かの話】41話めは、「理想と幻想に溢れた夏の朝」のお話です。

 

 

41. 幻のユートピア

 

早朝。

リコさんが目を覚まし、

布団の中からぼんやりと部屋を眺めると

 

部屋の隅に置いてある椅子の下にはなんと、

リコさんがいつか

一緒に暮らしたいとずっと思い焦がれていた

「ミニチュアダックスフンド」がスヤスヤと眠っていて、

 

「こんなことってあるんだ!」と、

リコさんは嬉々として飛び起きて

子犬を驚かせないように忍び足でそっと近づき

椅子の下をのぞき込んでよく見てみたら、

 

それは昨晩、酔って帰宅したリコさんが

フラフラになりながら脱ぎ捨てた茶色いくつ下だった。

 

一度完璧に覚めたはずの眠気が一気に舞い戻ってくるほどに

リコさんは意気消沈した。

 

愕然とし、脱ぎっぱなしのくつ下を放置したまま

冷蔵庫に向かいリンゴをひとつ手にとって、

「だまされた」とつぶやきながらバリバリとかじっている。

 

・・・

 

リコさんの気持ちとは裏腹に、

窓の外は久しぶりに爽やかないい天気である。

朝日が差し込みはじめ、スズメの鳴き声も聞こえてきた。

 

リコさんは小皿に水を注ぎ

かじっていたリンゴを半分残しお盆にのせてベランダに出した。

もう少ししたら、いつものように

このベランダでスズメたちの食事がはじまる。

 

気持ちを切り替えるべく、リコさんは音楽をつけた。

二日酔いの頭にガンガン響いている。

 

 

第41話:幻のユートピア / リコさんの話 連載【誰かの話】
出典 FUDGE.jp

 

・・・

 

絵をはじめ、詩や物語の制作、それらで展開したインスタレーションを行うなど、多岐にわたって活動をしている、gungulparmanの外山夏緒さん。この連載は、彼女が自身のWEBで発表していた「誰かの話」を「ラジオと火星人とコーヒーフロート篇」として、新たにグラフィック作品を加えてお届けしていきます。この世界のどこかにいるかもしれない「誰か」の日常を切り取ったお話を、お楽しみください!

 

Text & Illust_Toyama Natsuo

 

第41話:幻のユートピア / リコさんの話 連載【誰かの話】
出典 FUDGE.jp

外山夏緒

2015年より、絵や詩、物語で展開したインスタレーションなどの美術活動をスタート。他、イラストレーション、空間装飾、グラフィックデザインなどで活動中。その他、自身のプロダクトブランドgungulparmanでの商品制作やアートワークなども行う。

WEB:gungulparman.com

Instagram:@gungulparman

 

 

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