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「もう最悪です」中学受験生の母が語るコロナ禍の悲劇……自宅はゲーム天国、悲惨なテスト結果に“虚しさ”も

  • 2020.6.28
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“親子の受験”といわれる中学受験。思春期に差し掛かった子どもと親が二人三脚で挑む受験は、さまざまなすったもんだもあり、一筋縄ではいかないらしい。中学受験から見えてくる親子関係を、『偏差値30からの中学受験シリーズ』(学研)などの著書で知られ、長年中学受験を取材し続けてきた鳥居りんこ氏がつづる。

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写真ACからの写真

新型コロナウイルスの大流行は、私たちの暮らしに大変な災禍をもたらしているが、それはまた、中学受験の分野においても史上初めてというほどの混乱を招いた。

今現在においても、授業は配信のみ、模試は自宅で受験などという塾もあり、各校舎によっても対応はバラバラ。例年であれば、中高一貫校の合同説明会も花盛りの季節であるが、全て中止。当然、学校ごとの学校説明会もウェブが主流だ。

こういう現況下にあるので、特に小学6年生の親は不安を隠せない。今回はこのコロナ禍で、小6生の中学受験生親子がどのように過ごしてきたのかをレポートしてみたい。

恵理子さん(仮名)は5人家族。会社員の夫との間に、小6生の達樹君(仮名)と小学1年生の弟、さらに保育園児の妹がいる。

4月に緊急事態宣言が発令されると、恵理子さんの夫はリモートワークになり、達樹君の小学校も塾も休校措置が取られた。当然、弟も妹も休校、休園。恵理子さん自身は介護職ということで、普通に出勤という毎日だったそうだ。

恵理子さんは疲れ切った表情でこう訴えた。

「もう最悪です。2月までは達樹もやる気満々で、志望校に向かって頑張っていたんです。でも、主人との巣ごもり生活ですっかりやる気を失ってしまって……」

恵理子さんいわく、夫は今まで家事はおろか、子育てにもまったく参加してこなかったほどの仕事人間。それが、突然のリモートワークで3人の子の面倒をみることになり、頭を抱えてしまったそうだ。

「最初はZoom会議の時に、下の子たちを静かにさせる目的で、ゲーム機を与えたみたいなんです。今まで、やらせていなかった反動なのか、私が気づいた時には、達樹も含めて、子どもたちは“ゲームやり放題”の状況になっていました」

恵理子さんが夫に「塾が休校だから、きちんと計画通り勉強をやらせてほしい」と頼んでも、「わかった、わかった」と言うだけ。夫は子どもが自分に迷惑をかけず、静かにしていてくれるほうを優先させたため、「自宅はゲームとYouTube天国になった」という。

「塾も最初は動画配信だけで、課題もチェックされなかったため、達樹はまったくやっていなかったんです。当然、塾での学習内容は一切身についていませんでした。そうこうするうちに、自宅で参加する塾のテストがあったんですが、考えられないほど悲惨な結果で……。達樹は、もうすっかりやる気をなくしてしまい、主人も『やる気がないヤツに受験は不要』と言い出して、ウチはもう中学受験から撤退すると思います。今まで、私は何のためにあんなに頑張ってきたのかと思うと、全てが虚しくなりますね……」と恵理子さんはうなだれていた。

医師の夫に直接質問……息子の「知りたい」欲に火が付いた

一方でこんな話もある。祥恵さん(仮名)は、今回のコロナ禍は逆に良い出来事になった面もあるという。

専業主婦である祥恵さんは、夫と小学6年生の佳祐君(仮名)、小学4年生の妹の4人家族。医師である夫は、新型コロナウイルスを自宅に持ち込みたくないという理由から、病院が用意した寮で寝泊まり。この4カ月ほど、まったく会えていない状態だそうだ。

祥恵さんはコロナ禍の日常生活について次のように語る。

「毎日、LINE電話を通して主人とは顔を見ながら会話しています。逆に今まで、こんなに話をしたことあったかな? っていうくらい、家族で会話するようになりました」

メディアなどを通し、盛んに「医療従事者に感謝をしよう」というムーブメントが起こっていた影響もあり、佳祐君は父親の仕事に関心を持ったとのこと。医師という仕事のやりがいや、新型コロナウイルスとはどのようなものか、これから世界がやるべきことなどを、LINE電話で直接父親に尋ねていたという。

祥恵さん夫婦が驚いたのは、その翌日に、佳祐君が「ウイルスと細菌、真菌(カビ)の違い」を自力で調べて、そのノートを見せてくれたことだそうだ。

「主人が一番、喜んでいました。『勉強っていうのは、自分が「知りたい! わかりたい!」と望んで行うものだから、それを自発的にやれたことは素晴らしい!』って、佳祐をすごく褒めたんです。多分、面と向かってだったら言えてないかもしれません。画面越しっていうのが、我が家にはすごく良かった気がするんです」

佳祐君の今の夢は新薬開発の科学者になることだそうだ。目標ができたので、「やるべきことはやる!」と言い、塾が休校の間は“復習”の時間に充てて、苦手分野の課題に取り組み、かなりの手応えを感じるようになったらしい。

「主人も、子どもに会いたくても会えない状況下なので、いつも以上に丁寧に子どもたちの質問に答えています。特に佳祐とは“男同士の話”にみたいに盛り上がることもあって、佳祐はこの数カ月で、より一層、父親を尊敬したみたいです。受験は運もあるので、志望校に合格するかどうかはわかりませんが、このコロナ禍は、我が家にとっては、災い転じてなんとやらで、逆にありがたく思う面もあります」

この数カ月は、誰にとっても想像を超える大混乱の日々であったが、2人の母の話を聞いて、それにどう対応していくのかも、人それぞれなのだなと感じた。

鳥居りんこ(とりい・りんこ)
エッセイスト、教育・子育てアドバイザー、受験カウンセラー、介護アドバイザー。我が子と二人三脚で中学受験に挑んだ実体験をもとにした『偏差値30からの中学受験シリーズ』(学研)などで知られ、長年、中学受験の取材し続けている。その他、子育て、夫婦関係、介護など、特に女性を悩ませる問題について執筆活動を展開。

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