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ゴミと呼ばれていたモノを価値ある商品に変身させる「アップサイクル」とは

  • 2020.6.18
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「ものを大切に長く使う」「すぐに捨てるのはもったいない」。これらは実は私たち日本人が、小さな頃から自然と受けているサステナビリティの教育といえるのではないだろうか。しかしながら、なぜか地球環境保護に対しての意識はまだまだ低いといわれている昨今、現状を正しく知ることが、地球環境や子どもたちの未来を守る大きな第一歩になるだろう。サステナブルをただのトレンドで終わらせないために、連載第5回の今月は話題のアップサイクルについて学ぶ。

アップサイクリングの概念
※写真はイメージです(写真=iStock.com/Vasilevskiy Sergey)
リサイクルとアップサイクルはなにが違う?

最近よく耳にする「アップサイクル」という言葉。みなさんは正しく理解しているだろうか? サステナブルに関する動きが急速に高まる今、「アップサイクル」はリサイクルの現代語版のような使われ方をすることも多いが、実は厳密にいうとこれまでのリサイクルとも、またリユースとも少し違う。

もともとリサイクルというのは、ダウンサイクルとアップサイクルに分かれていて、これまでいわれていたリサイクルは、おもに前者のことを指していた。ダウンサイクルとは、不要になった製品を原料に戻して別の製品に生まれ変わらせることで、たとえば一度使った紙を再生紙にし、そこからトイレットペーパーをつくることなどもそれにあたる。

反対にアップサイクルとは、製品をできるだけそのままの形で別の製品に生まれ変わらせることを指し、ダウンサイクルとは違って原料に戻すためのエネルギー消費は起こらない。感覚でいうとリメイクに近いが、より価値をつけ、もとの製品よりさらに素晴らしいものに昇華するといった意図が乗せられているといえる。

つまりアップサイクルとは、そもそも捨てられるはずのもの、ゴミになっていたかもしれないものを、クリエイティビティと自由な発想力によって、高価値のものに変身させるということ。同時にものの寿命を延ばし、使って捨てるというサイクルを長く引き延ばすことができるのだ。

パレットシェルフ
写真提供=gleam
より価値が高まる廃材利用の家具

東京・麻布に店舗をかまえるgleam(グリーム)では、廃材を活用して新たな家具を製作・販売している。かつてはインド洋周辺の島々で舟や枕木、または民家として使用されていた木材には、新品にはない魅力がある。風合いがそれぞれに異なるため、ひとつとして同じものがなく、また、使い込まれてきたぶん、新品とは違う深い味わいを楽しむことができる。

これまで遠くの国の誰かに愛されていた歴史を秘める木材が、そのまま捨てられることなく、職人によって息を吹き返し、日本で椅子やテーブルとなって生まれ変わる。第二の役割をスタートさせるのがアップサイクルだ。個性のある木材たちはより輝きを増し、“自分だけの逸品”となって、使う人の生活によりそうひとつの財産へとつくり変えられているのだ。

アップサイクルという考え方がなければ、今愛されているそれらの価値ある家具たちは、すでにこの世に存在しないものだったかもしれない。ゴミとしてエネルギーと税金を使って処理されていたかもしれないと考えると、それはあまりにももったいないことが容易に想像できるだろう。けれどクリエイティブな力と、ものを大切にしたいという気持ちが、一度切り出された木々たちを最後の最後まで有効活用するだけではなく、私たちの生活を豊かにし、地球環境を守ることにつながっている。

PASS THE BATONのイメージ
写真提供=PASS THE BATON
多くの企業やブランドを巻き込んだ取り組みも

また、過剰に溢れたたくさんのものや販売機会を失ってしまったものなどを活用し、“NEW RECYCLE”をテーマにサステナブルなビジネスを展開しているがPASS THE BATON(パス ザ バトン)だ。

“現代のリサイクルショップ”と提言されるこちらのブランドでは、誰かにとって必要でなくなったものを大切に使ってくれる次の持ち主へ販売するだけでなく、デッドストックとして長い間、企業の倉庫に眠っていたものに新たに価値をセンス良く手を加えることで、もともとの製品より素敵に生まれ変わらせることをコンセプトにアップサイクルを行っている。

結果、シーズンを過ぎてしまった服や小物、ほんの少しの違いでB品としてはじかれてしまったものなども、ただ捨てられてしまうことなく、求めていた人や新たにその魅力を知った人のところに届き、製品としての役割をまっとうできる。ものを大切にしたい人や企業などにとって重要なプラットフォームとなっているのだ。

このように、アップサイクルに尽力している企業はまだまだ少ない。けれど、物心がつく頃から当たり前に“もったいない精神”を持っている私たち日本人には、とてもなじみのある感覚であることはたしかだ。この先、このアップサイクルという考え方が当たり前のものとして定着すれば、たくさんの木を切り、大量の水や石油を消費しなくとも、今よりさらなる豊かな生活が実現するかもしれない。そんな未来をつくるのも不可能ではないはずだ。

写真=iStock.com

乙部 アン(おとべ・あん)
執筆家
女性ファッション誌のフリーエディターをしながら執筆家としても活動、いくつかの連載を掛け持ちする。現在ブログ「ANNE MAGAZINE」にて、大人の女性に役立つファッション・仕事・サステナブル・独自の人生哲学を発信するほか、パーソナルスタイリングやファッション講座などを定期的に開催。直近では得意なことを極めて本当の人生を歩みたい人へ送る、6/20(土)の「LIFEスタイリング・ノート」の参加を募集中。

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