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いいモノには確かな物語がある。作り手の想いを感じるアップサイクルアイテム

  • 2020.6.8

大量生量・大量消費のアンチテーゼとして、世の中に「量より質」という価値観が浸透して久しい。ただ物を消費するだけでなく、その向こう側にある背景や物語に愛着を持つという考えが定着し、ブランドが提起する哲学や世界観が、物を選ぶ際のひとつの理由となっている。そんな価値観に共鳴する物づくりのジャンルのひとつに、アップサイクルがある。廃棄品を再資源化するリサイクルとは異なり、古着や廃棄物をデザインの力で新たな価値を蘇らせるもの作りの方法だ。Harumariではその一例として先日、大沢伸一さんの新プロジェクト「OFFICIAL GHOST」をフックアップしたが、ここ数年を振り返ると、他にも素材のストーリーを活かしたプロダクトが誕生している。ここでは、作り手の思いと物が紡ぐストーリーに共感できるアイテムを厳選して紹介する。

キーワードは1点もの。作り手の思いをデザインしたプロダクト

アップサイクルの魅力は1点ものという希少性にある。材料の素材が限定的なため大量生産と対象にあり、クリエイターが1点1点と向き合い、素材の質感や見た目に合わせて手を施すプロセスにこそ価値がある。そうして作られたアイテムは、既製品にはないオートクチュールのような魅力があり、その素材の成り立ちやプロセスによって我々の消費欲も掻き立てられるのだ。モチーフで、色で、質感でと、ブランドの世界観を凝縮した、唯一無二のアイテムにフィーチャーする。

コーヒーの香りがする!? 豆の“出し殻”でできた「KAFFEEFORM.」のコーヒーカップ

今年の新作「カフェフォルム ラテ カップ&ソーサ」。初回は少量入荷で即完売してしまったが、現在再入荷したばかり。4,620円(ともに税込)Harumari Inc.

カップを箱から出した際に漂うコーヒーの香り。こちらのカップは、抽出し終わった「豆カス」を固めてできたもので、毎日大量に消費され捨てられている「コーヒーの抽出かす」をなんとかしたいというベルリンのプロダクトデザイナー、ジュリアン・レヒナーさんの優しいアイディアによって生まれたもの。色味や形状に個体差があるため、日本の焼き物と同じく作家が作ったようなオリジナリティを感じることができる。お湯や食洗機使用もOKでタフに使えるのも嬉しい。

イタリア留学中に、カフェで毎日大量に消費され捨てられている「コーヒーの抽出かす」が気になったことがきっかけで、「Kaffeeform」のプロジェクトをスタートさせたという、ジュリアン・レヒナーさん。このアイディアを実現するために、特殊な粘度の開発に5年もの歳月を費やしたとか。

問合せ/SPACE JOY 03-3722-1144 https://www.space-joy.co.jp/Harumari Inc.

南伊豆ライフスタイルから生まれた「TARASUKIN BONKERS」のアップサイクルプロダクト

みかん網の手提 各2,750円(税込)Harumari Inc.

2019年にフランスのハイエンドセレクトショップ「merci(メルシー)」の展示「アップサイクリング展~モノたちの第二の人生~」にも選出された実力派、クリエイティブユニット「TARASUKIN BONKERS(タラスキンボンカース)」。彼らの作るアイテムは、流木や石などの自然のモノや漂着物、ハギレなど南伊豆で生活する人たちが日常で実際に使っている道具を材料に商品化しているのが特徴。こちらの手提げも、農業資材の網を素材に帆布のパイピングを施してモダンなバッグに仕上げている。汎用的な素材を組み合わせて作ったポップなデザインは、着こなしの軽快なアクセントとなりそうだ。

起業のため都内で事務所を探していたところ、偶然見つけた南伊豆の物件が気に入り、そのまま移住することになったという近藤拓也さんと北田啓之さんのデザインユニット。日々の食事から住まいの改修までを自分たちでこなしている生活同様に、クリエーションも周りの自然や身近にあるものを活かしており、その温かさが商品にもにじみでている。

問合せ/TARASUKIN BONKERS https://www.tarasukinbonkers.comHarumari Inc.

モノを大切にする気持ちを再確認。不要な段ボールをお気に入りの財布に

wallet(long ver.) BILL & COIN & CARD 9 X 14cm 17,000円(税抜き)※1点ものにつき売れ切れる場合があります。Harumari Inc.

2018年に公開された映画『旅するダンボール』をきっかけに話題となった[Carton(カルトン)]のアーティスト島津冬樹さん。世界の街角で捨てられた段ボールを拾い集め、かわいくてかっこいい財布を作る活動を続けている彼も、アップサイクル に通ずるクリエーションを行うひとりである。デザイン性もさることながら段ボールが使われてきた経緯やどこからきたのか、はたまたどんな人に運ばれてきたのかなどの、ストーリーを聞くと段ボールに対しての見る目が変わるとともに、モノを愛する気持ちはどんなモノでも対象になることを実感できるはず。

大学在学中に家にあった段ボールを使って財布を作ったことがきっかけで、段ボールを軸にクリエーションをはじめた島津冬樹さん。その後、約10年もの間、世界各国の段ボールを探し歩き、それを材料にデザインと機能を備えた画期的な財布に蘇らせる活動を続けている。2018年には島津さんの活動を3年間に渡って追ったドキュメンタリー映画が公開。

問合せ/
Carton公式サイト http://carton-f.com
島津冬樹出演映画『旅するダンボール』ブルーレイ発売中 www.carton-movie.comHarumari Inc.

このような古い物に価値を吹き込むというアップサイクルの仕組みは、過去を遡ると金継ぎや裂織など、日本の伝統工芸において取り入れられていた技術でもある。日本人の“もったいない精神”然り、捨てずにものを大切に使うという意識が、形を変えて受け継がれているように思える。

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