よく観るとシニカル、観た後はスッキリ。『オーシャンズ8』のもうひとつの楽しみ方

STAY HOME時間の充実は、これからも大きなテーマになっていきそうな今。あらためて観たいサンドラ・ブロック主演の『オーシャンズ8』。豪華キャストと巧みなストーリー展開で話題になった映画だが、よくよく深読みしてみると、違った楽しみ方もあるようだ。

シリーズ史上最もゴージャスでスリリングな『オーシャンズ』

「ずっと家にいて、ぼーっとしている時にオススメしたいのが『オーシャンズ８』！ もうNetflixで解禁されています」（ぴんこ）

今回紹介するのは、映画『オーシャンズ8』。個性豊かなスペシャリストたちによる鮮やかな強盗計画と、豪華な出演陣で毎回話題になる『オーシャンズ』シリーズのひとつである。

「サンドラ・ブロック、アン・ハサウェイ、リアーナ……まずはキャストが超豪華ですよね！ そうそう、あとスゴ腕スリ師の役で出てたアジア系女優のオークワフィナが、ついこないだ別の主演映画でゴールデングローブ賞をとったから、また話題になるかもしれませんね。有名になった今、あらためて見直すのも面白そう」

キャストが豪華なら、舞台も豪華。

「今回彼女たちのターゲットになるのは、VOGUE主催のMET GALA（メットガラ）っていうパーティーに登場する総額１億5000万ドルの宝石です。MET GALAは毎年5月にNYで開催される実在のイベントで、そこに招待されたら一流のセレブと言われている超盛大なパーティーなんです」
「残念ながら今年はコロナウイルスの影響で“無期限延期”になりました。なので、来年の開催に思いを馳せながら、MET GALAのきらびやかな世界を映画で堪能するのもアリですね。あと作中には、本物のMET GALAに参加している人がたくさん出ています。そのカメオ出演の量と豪華さがハンパない！ チラッと映る超有名人を探す楽しみもありますね」

とんでもなくゴージャスなパーティー会場で、スリル満点の盗みのショーが繰り広げられる。

「あらゆるジャンルのプロフェッショナルによる綿密な計画と、お宝を奪取する手腕は本当に見事でスッキリします。女性だけのチームなのでドンパチやるシーンがない中で、ハラハラさせられるけど最後はいろいろなカラクリがうまく組み合わさって。そんなちょうどいいスリルとスッキリ感が絶妙ですね！」

映画内で使われる数々のダマしの手口は、とにかく鮮やかだ。

「刑務所から出たばかりのサンドラ・ブロックが、お金はぜんぜんないけど、高級ホテルに泊まったり、高級デパートでコスメをたくさん手に入れたり。もしかしたら私でもできちゃう!? みたいな女性ならわかる絶妙なワザが序盤に出てきます。もうそこから引き込まれちゃいますね」

【ネタバレ注意】裏を読むとシニカル。2回目の人も新しい発見が

「この映画がスッキリする理由はもうひとつあって、それは、世界に蔓延している価値観へのアンチテーゼが、この映画全体から感じられること。表層主義にとらわれるセレブたちの裏をかいて、お宝をゲットする爽快感ですね」

一見すると華やかな世界だが、それに対するアイロニーが『オーシャンズ8』にはあるという。

「たとえばアン・ハサウェイが演じているハリウッド女優。彼女は盗みのターゲットになる宝石ギラギラのネックレスを身に付けて、パーティーに出席する役どころです。有名デザイナーが手がけたというだけでドレスを選んだり、『あの女優と同じデザイナーはイヤ』とか、そんな表面的なところだけを気にしてマウントを取ろうとするセレブたちの姿を詰め込んだような人物なんです」

「劇中でアン・ハサウェイがパーティーに着ていくドレス、これがまぁイマイチなんです！ 絶対にワザとヘンなドレス着せてると、私は思うんですよ。で、そんな彼女が身に付けた宝石を盗むと。何にも気付かずに踊らされてるね、みんなが良いと思っている価値観ってバカらしいよね、って言われているような気がして。そんな皮肉が随所に散りばめられているので、それに気付くと一層楽しめますね！ ちょっと斜め目線で見ると本当のメッセージに気づいたりする」

だが、何でも計画通りにいくワケではない。

「でもこの計画のオチを言っちゃうと、アン・ハサウェイには実はバレてます。しかもけっこう序盤から。計画を知ったうえで、あえて乗ったフリをして協力していたんですね」

アン・ハサウェイからすると、宝石はスポンサーからの借り物なので、盗んでもらって分け前をゲットした方が、儲けとしては良い。

「これはつまり、皮肉を皮肉で返すってことかなと。セレブたちも、本当はマウントを取り合うなんてバカなことだと気付いているけど、中にはそれにワザと乗っている人もいるんじゃないかって」

シニカルで、ひとクセもふたクセもある登場人物ばかり。一筋縄ではいかないのが『オーシャンズ』シリーズなのだ。

「コロナウイルスの騒動で新しい価値観が芽生えつつある今だからこそ、いろいろ深く考察できるし、新しい視点でこの映画を観られる気がします。すでに観たことがある人も、もういちど観てみると面白いですよ」

あらためての『オーシャンズ8』は、ちょっと考えさせられて、やっぱり最後はスッキリした気持ちになって。きっと良いSTAY HOMEだったと思えるはずだ。

取材・文：中山秀明
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