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ヴァン クリーフ&アーペル、フェアリーが導く幸福の物語。

  • 2020.6.4

1940年代に登場し、その後メゾンの歴史とともに世界を見守り続けるヴァン クリーフ&アーペルのフェアリーコレクション。2020年春に誕生したのは、フラワーや文学、自然といったさまざまなことからインスピレーションを得た、個性豊かなフェアリーたち。少しいたずらが好きで、気まぐれで、でもとても親切で美しいものが大好きなフェアリー。そんな愛らしいフェアリーと21世紀の私たちの物語を、作家・松田青子さんが書き下ろし。ハイジュエリーの煌めきで魅了するフェアリーの世界を、小説とともに楽しんで。

“ベル”という意味を持つクロシェット。鮮やかなエメラルドのドレスを纏ったフェアリーは、小さな身体に強い個性を持ち、飛びながら光を振りまいて幸せな感情を全身で表現する。クリップ「フェ クロシェット クリップ」(WG×YG×ダイヤモンド×エメラルド×イエローサファイア×ツァボライトガーネット)¥26,268,000(予定価格)/ヴァン クリーフ&アーペル(ヴァン クリーフ&アーペル ル デスク)

『21世紀の妖精たち』

晴天の午後の日差しはどこかのん気な並木のガードを難なく通過し、木漏れ日、なんてなまやさしいレベルではない。妖精はあまりの眩しさに一瞬目をしかめる。小さな体がぐらっと傾き、バランスを崩した妖精は慌ててすぐ近くにあった何かに飛びつく。なんかさらさらしてる。妖精がつかまったのは、通りを歩いていた女の人の髪の毛だった。肩のあたりで切りそろえられたキャラメル色の髪はするんとそのまま妖精を下まで落としてしまいそうで、妖精は渾身の力で髪の束にしがみつく。女の人は迷いない足取りで、どんどん前に歩いていく。肩が揺れると、妖精も揺れる。まるで自分がクリスマスツリーのオーナメントにでもなったようで、妖精はおかしくなる。ゆらゆらしながら、女の人の横顔を覗き込む。しっかりと上を向いたまつげにプラム色に塗られた唇。頰の高いところに塗られたきらきらのハイライトが、日の光を浴びてさらに輝いている。妖精と同じようにゆらゆらしているシルバーのロングピアスを、たわむれに何度か蹴ってみる。女の人のジーンズのポケットから音が鳴りはじめる。彼女はポケットからスマートフォンを取り出すと耳にあて、歩くスピードはゆるめずに、話しはじめる。(スマートフォンぐらい、妖精だって知っている。なにしろ自分は21世紀の妖精なのだから。)「あ、ひさしぶり、うん、元気元気。そっちは?」凛として、元気というより豪快な、まっすぐな声。妖精は女の人の声が気に入った。妖精のいる場所からは、相手の声も十分聞こえる。その見えない誰かの声から、女の人がニコという名前だとわかる。もしかしたら、ニックネームかもしれない。見えない誰かは、ニコの今日の予定を聞いている。「今日はこれから友だち3、4人で、好きなDVD持ち寄って、お菓子とか食べるものたくさん買い込んでさ、ホテルの部屋でオールナイトの鑑賞会するんだよ。最近そういうプラン安くあるんだ。部屋に大きな液晶テレビがあるし、カラオケもできるんだって」ニコは陽気に答えると、うんじゃあまたね、と通話を終え、横断歩道を渡っていく。あれ、そういえば、道に迷ったんだっけ。妖精はあたりを見回すが、すぐに気を取り直して、こう思う。こっちのほうが楽しそう。ニコの耳の上あたりで期待に胸をふくらませた妖精は、小さく一度光ってみせる。

松田青子

ピンクサファイアの蝶と優雅に浮かぶフラワーのフェアリーは、花に命を吹き込み、輝きと美しさをもたらす。軽やかに戯れの時間を楽しみながらも花をそっと守り続けるのは、蝶の羽を持つフェアリー。クリップ 上「フェ ジャンゴ クリップ」(WG×YG×ダイヤモンド×エメラルド×ピンクサファイア×ツァボライト&ミントガーネット)¥32,736,000、「フェ デ パピヨン クリップ」(WG×RG×ダイヤモンド×ピンク&モーヴサファイア)¥34,716,000(ともに予定価格)/ともにヴァン クリーフ&アーペル(ヴァン クリーフ&アーペル ル デスク)

“崇高なもの”という意味を持つブリギッド。太陽の女神であり、火と水をコントロール。春や癒やし、新しい人生と関係が深いフェアリーは、始まりの気分を高揚させてくれる。クリップ「フェ ブリギッド クリップ」(WG×YG×ダイヤモンド×イエローサファイア×ピンクサファイア×スペサタイトガーネット)¥21,648,000(予定価格)/ヴァン クリーフ&アーペル(ヴァン クリーフ&アーペル ル デスク)

三日月に腰を掛けたリュミヌーズは、光のドレスを身に纏い、美しい笛の音色を奏でながら物語の世界へと誘う。アーサー王伝説に登場する湖の姫に着想を得たフェ ヴィヴィアン。丸みのあるおでこ、得意のつま先立ちが愛らしい。クリップ 上「フェ リュミヌーズ クリップ」(WG×YG×RG×ダイヤモンド×イエローサファイア)¥33,396,000、「フェ ヴィヴィアン クリップ」(WG×YG×ダイヤモンド×カラーサファイア)¥30,756,000(ともに予定価格)/ともにヴァン クリーフ&アーペル(ヴァン クリーフ&アーペル ル デスク)

Aoko Matsuda作家、翻訳家。2013年、デビュー作『スタッキング可能』(河出書房新社刊)が三島由紀夫賞及び野間文芸新人賞候補に、14年Twitter文学賞国内編第1位となる。19年『ワイルドフラワーの見えない一年』(河出書房新社刊)収録の「女が死ぬ」(翻訳:ポリー・バートン)がアメリカのシャーリィ・ジャクスン賞短編部門の候補となる。その他の著書に『英子の森』(河出書房新社刊)『おばちゃんたちのいるところ』(中央公論新社刊)、翻訳書にカレン・ラッセル『レモン畑の吸血鬼』、アメリア・グレイ『AM/PM』(ともに河出書房新社刊)など。最新刊は、初長編『持続可能な魂の利用』(中央公論新社刊)。

●問い合わせ先:ヴァン クリーフ&アーペル ル デスク(ヴァン クリーフ&アーペル)0120-10-1906(フリーダイヤル)

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