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コロナ自粛解禁後、経営や人事に待っている「大変なこと」【就活・転職の常識を疑え】

  • 2020.6.1
人事担当者も例年にない対応をしている
人事担当者も例年にない対応をしている

新型コロナウイルスの影響で対面での会社説明会や面接が難しくなり、就活生や転職希望者の戸惑いは大きいと思いますが、例年とは違う状況に戸惑っているのは、人事担当者も同様です。今回は、主に経営者や人事担当の皆さんに向けて、「コロナ後」も見据えた人事制度、働き方の構築についてお話します。就活生や転職希望者にとっても、志望先の企業がどう変わろうとしているのか見極める一助になれば幸いです。

「コロナ体制」からの復帰が難しい

経営者や人事担当者の皆さんはこの数カ月間、コロナ禍への対応で大忙しだったのではないかと思います。急に外出自粛を求められ、テレワークを開始するために、ウェブ会議ツールの導入、勤怠ルールの設定、通信環境の整備、在宅勤務用のPC手配などなど、いろいろな変更を短期間で行わねばならず、それはそれは大変だったことと思います。

ただ、バタバタしたという意味では大変だったと思うのですが、疫病による政府からの要請ということで、ある意味「どうしようもないこと」「やらねばならないこと」でもあるため、粛々と「やればできる」状態ではあったともいえます。

しかし、それよりも、緊急事態宣言が解除されて自粛が徐々に緩和されていくにつれて、その後、どのような勤務体制に持っていくのか決めることの方が難しいと、筆者は思います。なぜなら、「こうしなければならない」と方針を示されることがなくなり、自分たちで考えて、意思決定をしなければならないからです。

コロナ前の元の状態に完全に戻すという考え方もあるでしょうし、定着したテレワークを維持するという考え方もあるでしょう。そこには「絶対解」はありません。経営者や人事の皆さんが結論を出して、それを社員に展開・浸透させていく必要が生じるのです。

全員の希望を満たす選択肢はない

まず、そもそも普段の業務をどうするかを決めなくてはなりません。テレワーク研究は、実は以前より行われており、どのような作業が向いているか、テレワークのメリット・デメリットなどについては、ある程度のことが既に分かっています。

例えば、創造性の必要な作業は意外とオンラインコミュニケーションの方がよい(リアルの場よりも民主的にメンバーが等しく発言できることや、空気を読まなくて済むことなどが理由)とか、「報連相」のような情報共有や伝達については、リアルの場でのコミュニケーションがよい、などです。それらを踏まえて、自社の仕事や文化に合ったものを選んでいけば、「コロナ後の理想の働き方」は決まります。

ところが、「合理的なもの」が「納得できるもの」「社員が希望するもの」とは限りません。例えば、仕事の観点からすれば、「うちはテレワークをやめて、普通に出社することを基本にしよう」と決めたとしても、テレワークのメリットを知ってしまった社員の中には、それに猛反発する人もいるでしょう。

「仕事上でデメリットがあっても、自分のワーク・ライフ・バランスからはテレワークがよい」という社員がテレワークの継続を望むのは当然です。

逆に「テレワークを主とする」と決めたら、リアルの場で顔を突き合わせて働くことが好きな人は「そんな味気ない会社にいたくない」となりかねません。全員の希望を満たすような選択肢、全員が納得できる結論はあり得ないと言ってよいでしょう。

人事制度設計と同等の丁寧さが必要

これは何もコロナ後の働き方についてだけでなく、組織の中で制度やルールを作る際には必ず生じることです。制度やルールは一つに決まるものなので、どうしても最大公約数的なものになります。人によっては合わない人もいるでしょう。だからといって、複雑な制度を複数作るのは現実的ではありません。だから、「最大多数の最大幸福」となるような制度やルールにするわけですが、コロナ後の働き方も同様です。

つまり、人事制度設計と同じぐらい、慎重に社内の合意形成、納得感の醸成を行うべきだということです。特に、新制度・ルールにフィットしない人にも、諦めて従ってもらわなければなりません。

そのためには、社員からのヒアリングや幹部への相談、根回し、テレワークについての研究といった啓蒙(けいもう)活動など、最終的に会社がやろうとしている「コロナ後の働き方」について理解を深め、納得してもらえるような活動を行うことが重要です。

しかし、今のところ、すごいスピード感でさっさと決めてしまおうとしている会社が多いように思われ、筆者は不安を感じています。拙速に何かを決めてしまうのは避け、慎重にステップを踏んでいくべきです。そうでなければ、最終的にどういう働き方にするかということよりも、その決め方、進め方について不信感を持たれてしまうかもしれません。

退職、転職につながる可能性も

その不信感が、最悪の場合、優秀な社員の離職や転職にもつながる可能性があります。実際、既に「コロナへの対応がまずい」ということで会社に愛想を尽かし、転職を希望している人がとても多いようです。筆者の知り合いの人材紹介会社では、このご時世にもかかわらず登録数が増えています。

そして、先述の通り、コロナへの適応よりも恐らく「コロナからの復帰」の方が無数に選択肢があり、強制力もないために決着させるのが難しく、その分、不満を持たれる可能性も高いのです。社員はコロナ後の対応で経営者や人事の姿勢、価値観、リーダーシップなどを評価しようとしているのです。

繰り返します。全員が納得できる結論は無理ですが、全員が納得できるような進め方をすることは可能です。スピードが求められる時代ではありますが、特に重要な事柄については慎重に進めましょう。

人材研究所代表 曽和利光

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