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第36話:花売りトラップ / ジョージと花売りと10匹のねずみの話 連載【誰かの話】

  • 2020.5.29
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第36話:花売りトラップ / ジョージと花売りと10匹のねずみの話 連載【誰かの話】
出典 FUDGE.jp

外山夏緒さんの物語の連載【誰かの話】36話めは、「川岸に居合わせた人々」のお話です。

 

 

36. 花売りトラップ

 

第36話:花売りトラップ / ジョージと花売りと10匹のねずみの話 連載【誰かの話】
出典 FUDGE.jp

 

ジョージはパーティに向かう途中だったが、

あまり気乗りしないため、川岸で時間を潰していた。

 

すると花売りの少女が近づいてきてジョージに花を差し出した。

その後ろには鼓笛隊の格好をした10匹のねずみが

列をなし、楽器を持って演奏のスタンバイをしている。

 

ジョージは一応、パーティに向かう途中ではあったので、

バラの花を一輪買い、胸に挿した。

 

少女はニコッと笑った。それが合図となり、

鼓笛隊の10匹のねずみのうち、1匹の小太鼓担当のねずみが

「トス・トス・トス・トス」と太鼓を叩きはじめた。

 

しかし、ジョージがしばらく演奏を待ってみても

小太鼓がビートを刻むだけで、それ以上演奏が進む気配がない。

花売りの少女もジョージの目をじっと見つめ続け、

そこから去ろうとしない。

 

ジョージは「なるほど」と気づき、

さらに追加でスズランを買ってみると

小太鼓の演奏に加えてさらに、

次はトロンボーン担当のもう1匹のねずみが、

「ボーーーーーーーー」と吹きはじめた。

しかしやはり、それ以上演奏は進まなかった。

 

花売りのシステムを理解したジョージは結局降参して、

少女の持ってきたカゴの中の花を全部買うことにし、

それを花束にしてもらうことにした。

 

少女は満面の笑みを見せ嬉しそうにお金を受け取り、

手持ちの花の全部を使って花束をこしらえた。

少女が花束をこしらえ始めると同時に

10匹のねずみたちは一斉に演奏をはじめ

見事な演奏を披露しながら、ジョージのまわりを行進している。

 

川の向こうに夕日が見える。

 

ジョージは気乗りしないパーティに行くのは辞めることにして、

花束を贈る相手は誰にしようかと考えている。

 

ジョージに花束を渡し終えたあとの少女と10匹のねずみは、

明日の計画をしに、さっさとどこかへ行ってしまった。

 

 

第36話:花売りトラップ / ジョージと花売りと10匹のねずみの話 連載【誰かの話】
出典 FUDGE.jp

 

・・・

 

絵をはじめ、詩や物語の制作、それらで展開したインスタレーションを行うなど、多岐にわたって活動をしている、gungulparmanの外山夏緒さん。この連載は、彼女が自身のWEBで発表していた「誰かの話」を「ラジオと火星人とコーヒーフロート篇」として、新たにグラフィック作品を加えてお届けしていきます。この世界のどこかにいるかもしれない「誰か」の日常を切り取ったお話を、お楽しみください!

 

Text & Illust_Toyama Natsuo

 

第36話:花売りトラップ / ジョージと花売りと10匹のねずみの話 連載【誰かの話】
出典 FUDGE.jp

外山夏緒

2015年より、絵や詩、物語で展開したインスタレーションなどの美術活動をスタート。他、イラストレーション、空間装飾、グラフィックデザインなどで活動中。その他、自身のプロダクトブランドgungulparmanでの商品制作やアートワークなども行う。

WEB:gungulparman.com

Instagram:@gungulparman

 

 

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