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「自分は障害者ではなく健常者」両腕のないアーチェリー選手【パラスポーツを10倍楽しむ豆知識】

  • 2020.5.12
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マット・スタッツマンという名のアーチェリー選手をご存じだろうか。先天的に両腕がなく、足と顎を使って的を射る。2012年ロンドン・パラリンピックに初出場して、いきなり銀メダルを獲得した強者だ。

スタッツマンは先天的に両腕が肩の下からない。生後4か月の時に養子に出され、アイオワのキリスト教学校の教員である一家に育てられた。

幼少期から木登りをし、トラクターに乗って農作業を手伝う。サッカーなどのスポーツも兄弟たちと楽しんだ。10代で養父と釣りやハンティングに出かけるようになり、銃の撃ち方をマスター。自分専用の弓を16歳の時に購入し、単独でも狩りに出かけるようになる。アイオワの大自然がスタッツマンを育み、家族がそれを支えたのだった。

メダリストでギネス世界記録を持つ。

パラリンピックの種目には弓の種類により、オリンピックと同じシンプルな「リカーブ」と、「コンパウンド(滑車の付いた弓)」の2種目がある。スタッツマンはコンパウンドを操る。

スタッツマンは、パラリンピックのメダリストにとどまらない。2015年12月9日、弓で「最も遠く正確な射程距離」で射抜く記録に挑み、283.47mというギネス世界記録を打ち立てた。それは、05年にオーストラリアのピーター・テリーという一般のアーチャー(アーチェリーの射手)が樹立した200mの記録を大幅に上回るものだったのだ! まさに、障害の有無に関係なく世界一のアーチャーなのである。

16年リオデジャネイロ・パラリンピックにも出場し、2020東京大会を目指している。

時速200マイルのスピードでぶっ飛ばす。

今もアイオワに住み、木の上に作った手作りの狩場から弓を使って鹿狩りをする。鹿を見つけると、振り向くその一瞬を狙って一発で仕留める。鹿狩りは、スタッツマンの腕を磨くトレーニングの場であり、特技を生かした生活の糧でもある。

スタッツマンには3人の息子がいる。両足でオムツの交換もすれば、釣りや狩りで得た獲物をさばき、料理もする。

さらに両足で運転できるクルマを、およそ時速200マイルのスピードでぶっ飛ばし、パーツ交換の改造に興じるという驚愕の一面も。

「オレは、自分を障害者ではなく健常者だと思っている」

おそるべし、スタッツマン。彼が東京で矢を放つ姿を見るのが、今から楽しみだ!

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