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第33話:歓喜の歌 / メイさんの話 連載【誰かの話】

  • 2020.5.8
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第33話:歓喜の歌 / メイさんの話 連載【誰かの話】
出典 FUDGE.jp

外山夏緒さんの物語の連載【誰かの話】33話めは、「メイさんの最高と最悪」のお話です。

 

 

33. 歓喜の歌

 

第33話:歓喜の歌 / メイさんの話 連載【誰かの話】
出典 FUDGE.jp

 

 

三日前は最高だったのに、

二日前は最悪だった。

 

そして

昨日は最高だったのに、

今日は最悪だった。

 

この調子だと、

たぶん明日は最高で

おそらく明後日は最悪で、

明々後日は最高なのだろう。

 

メイさんはベランダで寝そべりながら

ふと、自分の死ぬ日はどっちになるかしらと

未来のことを考えている。

 

バイトがクビになった今日は本当に最悪だけど、

五月の気候は気持ちよく、

庭のキラキラした木々たちを眺めながら

ベランダに横になりウトウトとまどろんでいる今、

夕方四時のこの瞬間はとにかく天国で最高だ。

 

結局、最高と最悪の境目もよくわからなくなってきて、

そんな概念なんて本当は幻なのではないかと、

メイさんは思いはじめている。

 

とりあえずメイさんは

今日はバイトがクビになったばかりで

明日から何もすることがなくなったけど、

 

いましがた、母親が買い物から帰ってきて、

今日の晩御飯はアジフライだと告げられて、

「歓喜の歌」を口ずさみながら五月のベランダで踊り出した。

 

 

第33話:歓喜の歌 / メイさんの話 連載【誰かの話】
出典 FUDGE.jp

 

・・・

 

絵をはじめ、詩や物語の制作、それらで展開したインスタレーションを行うなど、多岐にわたって活動をしている、gungulparmanの外山夏緒さん。この連載は、彼女が自身のWEBで発表していた「誰かの話」を「ラジオと火星人とコーヒーフロート篇」として、新たにグラフィック作品を加えてお届けしていきます。この世界のどこかにいるかもしれない「誰か」の日常を切り取ったお話を、お楽しみください!

 

Text & Illust_Toyama Natsuo

 

第33話:歓喜の歌 / メイさんの話 連載【誰かの話】
出典 FUDGE.jp

外山夏緒

2015年より、絵や詩、物語で展開したインスタレーションなどの美術活動をスタート。他、イラストレーション、空間装飾、グラフィックデザインなどで活動中。その他、自身のプロダクトブランドgungulparmanでの商品制作やアートワークなども行う。

WEB:gungulparman.com

Instagram:@gungulparman

 

 

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