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アンダーアーマーが新作ウエアより医療用マスクの生産を優先したワケ

  • 2020.4.16
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米メリーランド州バルティモアにあるアンダーアーマーのデザイン&イノベーションハブ「ライトハウス」では、従業員の仕事内容が大きく変わった。アンダーアーマーのデザイナー陣は、新作ウエアの企画を後回しにして、新型コロナウイルスと最前線で戦う医療従事者のための個人用保護具(PPE)を大急ぎで生産中。この内容をランナーズワールドからご紹介。

「地元の医療関係者から『マスクやガウンが足りない』という連絡を受けた私たちは、人員を総動員し、そういった医療用品を最速で届けることを最優先事項にしました」と説明するのは、アンダーアーマー・イノベーションチームのアパレルデザイナー、マギー・スノーク。

ウイルスの感染拡大を止めるうえで防御の最前線とも言えるマスクは、世界中の病院で大幅に不足している。そこでアンダーアーマーは、米メリーランド大学病院の医療従事者とスタッフ2万8千人をサポートするため、4月上旬にフェイスマスク、フェイスシールド、特別装備のファニーパックの生産を開始した。同州バルティモアの医療組織ライフブリッジにもマスクを提供する予定。フィットネス業界では、アンダーアーマーを始めとする多くの企業が新型コロナウイルス感染症の救援活動に貢献している。

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Women's Health

ライトハウスでは、当面の間スポーツウエアの試験や開発を全て停止し、スタッフが医療用品の生産に全力を注いでいる。でも、この決断には大きな損失が伴った。エピデミックによる世界的不況で大きな被害を受けたため、アンダーアーマーは北アメリカの188店舗(3月16日から休業中)で一時的にアソシエーツを解雇し、配送センターでは600名近くの従業員を解雇することを発表した。企業幹部も25%の減給になる。

大量生産工場ではないけれど、スノークいわくライトハウスには大量発注に応じるだけの生産能力がある。マスクのデザイン会議には、材料科学者、フットウェアデザイナー、アパレルデザイナーを含む50名以上の従業員が参加したそう。

「あまりの急務で考え込む時間がなかったおかげで、いつもよりクリエイティブになれました」とスノーク。「スケッチしたら型を取って着けてみる。その評価に基づいて次のマスクを作ってみる。ライトハウスの存在は大きかったですね。評価と修正をリアルタイムかつスピーディーに繰り返すことができましたから」

最大の難題は、さまざまな顔のタイプに合うマスクをスピーディーに生産することだった。20点以上のマスクを試作したチームが最終的に選んだのは、縫製を必要としない折り紙タイプの一体型マスク。縫製工程がないことでスピーディーな生産が可能になった。

高出力のナイフカッターを使えば、一度に100個以上のマスクの型が取れる。通気性と耐湿性に優れた素材で作られたアンダーアーマー特製マスクは、唾液と粘液の飛沫を閉じ込め、手で顔が触りにくいデザインになっている。

「これからは一週間で10万個のマスクが生産できるので、医療従事者のもとにすぐ届けられるはずです」とスノークは続ける。

現在アンダーアーマーは、メリーランド大学病院に特製マスクを支給している。先月は同病院に1,300個のフェイスシールドを提供した。次の課題は医療用特別装備のファニーパックを作ること。

米ノースカロライナ州立大学工業デザイン学部卒のスノークにとって、アパレルデザインから個人用保護具の製作に移るのは決して楽なことではなかった。でも、彼女はやりがいも感じている。

「マスク製作の経験者はひとりもいなかったので、デザインチーム全体にとって非常に大きな挑戦でした」

スノークによると、マスクの発注は増え続けることが予想されるため、アンダーアーマーは今回のデザインと作り方を製造業者にも伝える予定。ニューバランスなどのアパレル会社も、医療用特製マスクの生産に乗り出している。

「医療施設にウイルスが入るのだけは防がなければなりません」とスノーク。「前例のない新型コロナウイルス感染症の拡大を止めるため、私たちは持てる時間、デザイン力、設備、機材の全てを費やします」

※この記事は、ランナーズワールドから翻訳されました。

Text: Hailey Middlebrook Translation: Ai Igamoto

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