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ママ友トラブル決着の行方…それはまさかの幼稚園イベントで起こった【わたしの糸をたぐりよせて 第11話】

  • 2020.3.18
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前回からのあらすじ
イナガキから「海外に行く」ことを伝えられる友里。突然現れて、急に去っていくイナガキに友里は寂しさを感じながらも、それぞれの道を歩んでいくことを決意するのだった。
●登場人物●
立花友里:都会で就職し結婚したが、夫・亮の転勤で地元の街に戻ってくる
:友里の夫。友里から告白してつきあうように。息子の悠斗を妊娠して以来、夜の生活がない
イナガキ:友里の幼なじみ。小学校~高校まで一緒だった。現在は人気デザイナー。
上田:悠斗と同じ幼稚園に通うママで、うさぎ組のクラス委員長
マキ:悠斗と同じ幼稚園に通うママ友で気が合う
カオル:悠斗と同じ幼稚園に通うママ友で、友里を配下に置こうと考えてる

※このお話はフィクションです


■幼稚園のイベント、トラブルの予感が…

紅葉の季節になり、おゆうぎ会に向けての保護者会がめぐみ幼稚園で行われることになった。

「おゆうぎ会の親の仕事ってどんなのかな」

隣に座るマキちゃんの問いかけに、私はうーんと首をひねった。
ホールには、去年までのおゆうぎ会の衣装が並べられていたけれど、チュールやサテンなど、少し扱いが難しい生地が使われていた。

(これ、業者さんが作ったのかしら? もし、手作りだったら大変だっただろうなあ)

そんなことを思っていると、担任の先生が入ってきた。

「みなさん、こんにちは。今日はお忙しいところお集まりいただきありがとうございます。早速ですが、おゆうぎ会のうさぎ組の出し物は、ピーターパンに決まりました」

先生が話している最中、上田さんが出し物についてのプリントを配っている。
配役を見ると、ひまりちゃんはティンカーベル役、上田さんの息子のいつきくんはピーターパン、カオルさんの息子まさあきくんはフック船長、そして悠斗はジョン・ダーリング役になっていた。

「あ、ひまりちゃんティンカーベルだ。かわいいじゃない」

私はマキちゃんに小声で言うと、「うんそうだね。悠斗君は、ウェンディの弟君なんだ」

「うわぁ! まーくんはフック船長かあ、バリバリの悪役だけど目立つからいっかな?」とカオルさんが声を上げていた。

いろいろざわつき始めたところで、先生がおもむろにまた話し始める。

「それで、衣装なんですが、配役のところを見ていただいて、おうちにあるもので構わないのでいくつかご用意していただくのと、星印のついている役の衣装は新しく作る必要があるのでどなたか手伝っていただきたいのですが……」

すると、カオルさんが勢いよく手を上げる。

「先生、私手伝います! ほら、あんたたち二人も手伝うんだよ!!」

と、いつも一緒にいるママ友たちに無理やり立候補させてしまった。

みんなで顔を見合わせていると、上田さんが「お任せしてしまって、大丈夫ですか?」と心配そうな表情を浮かべる。

「心配なんていらないですよ。こう見えても裁縫得意なんです!」

「後には引けない」という表情をチラッと浮かべながらも、カオルさんは堂々と宣言した。

「では、江田さんにリーダーとなっていただきますね。もしサポート必要になりましたら遠慮なく相談してください」先生がそういうとみんなが一斉に拍手をした。

そして、その他の親の係が伝えられ、その日は子どもを引き取って解散となった。

帰り道。
私とマキちゃん、そして上田さんと一緒になり、話は自然におゆうぎ会のことに及ぶ。


「カオルさん、裁縫得意なんだね。なんとなく“似つかわしくない”って言ったら失礼かな」とニッコリしながら、ちょっと毒を吐くマキちゃん。

「大丈夫だと思いますよ。江田さんは言ったことはやる人ですから」と上田さん。

考え事をしていたら、上田さんに「浮かない顔してどうしたの?」と水を向けられてしまった。私は、言葉を選びながら思っていることを口にする。

「そっかぁ~。洋服作りをしない人には扱いにくい生地が使われてるってことなんだ」とマキちゃん。

「そういうことを知っているってことは、立花さんはその難しい生地を縫えるということ?」

大学で服飾を専攻していたことを話すと、マキちゃんから「作品見せて! 見せて!」と懇願され、恥ずかしながらスマホに保存してあった卒業制作の写真を2人に見せた。

「すごーい。これ全部自分で作ったんでしょ? だったら衣装係に立候補しちゃえばよかったのに」

「立花さんも、江田さんほどとは言わないけれど、もう少し押しが強いといいのにね。でも、江田さんがつまずくことがあれば、フォローできるようにしておく方がいいかもしれないわね」

と、上田さんには少しだけ痛いところを突かれながら、その日は別れた。



■嫌な予感が的中! しかし思いもかけない事態に…

――数日後。

悠斗を園に送っていくと、衣装を作るためにクラスで借りた会議室からカオルさんの声が聞こえてきた。

「わ~。こんなキレイなチュール生地、あそこのショッピングセンターに売ってたんだ。よーし、これでティンカーベルの衣装を作るぞー!」

(チュール生地? うまくいきますように!)

私は静かに壁側に立ち耳をそばだてる。そこに上田さんも通りかかったので、会議室の様子を説明した。

「例の断ちにくいし縫いにくい生地ね。今日は私も時間があるから、ちょっと見守りましょうか」

しかし会議室から聞こえてきたのは、怒りと困惑の声だった…

「あー、もう! なによこの切りにくい生地!! 誰よ、こんなの買ってきたのは!!」

「あの……それはカオルさんがきれいでかわいいのをって……」

「うるさい! もうこれ捨てる!! ねえ、あと他に何かないの?」

「そこにツヤツヤしたサテン生地ならありますけど……」

「サテンね、よし!」

思わず上田さんと顔を見合わせる。決意した表情の上田さんがドアに手をかける。焦る私に、上田さんは、

「布地のお金は園からも出てるけど、保護者会費からも出てるの。縫えないという理由で、費用がかさんでしまうと困るのは私たちということ。だからちょっと強引だけどおしかけサポーターに立候補しちゃいましょう」

勢いよく会議室の扉を上田さんが開けると、カオルさんたちが一斉にこちらを見つめた。

「江田さん、そこ立花さんが代わりますね」

「何よ? 私が衣装係のリーダーなのに口出ししないでよ!」

「いえ、クラス役員の立場から、予算は大切に使っていただきたいんです」

「でも……この子にできるの?」

そんな押し問答を横目に、私はゴミのようにぐしゃぐしゃにされたチュールを見て何かが弾けたような気がした。生地を拾いあげてていねいに伸ばすと、型紙に沿って切り、待ち針を刺す。

「……あ、ありがたいけど、あんたこれ縫えるの?」

「はい。あの、薄紙あります?」

みんなきょとんとしているところに、上田さんがこれならあるとわら半紙を差し出した。

「これなら大丈夫です、縫います」

と、縫い合わせるチュールの合間にわら半紙を差し込んで私は一気に縫い始めた。


「ちょっと! わら半紙と一緒に縫ってどうするのよ!!」

「ものにもよるんですが、このチュールは薄紙と一緒に縫わないと縫い目がガタガタになってしまうんです」

「あ……え……そうなの?」

私は、縫い上がった生地をカオルさんに差し出し、「わら半紙を引き抜いてみてください」と言った。
「……すご。ちゃんときれいに縫えてる」
カオルさんは、気の抜けた声で呟いた。





そんなことがあって以降、うさぎ組は一丸となって衣装づくりに取り組み、おゆうぎ会本番は無事に終了。

悠斗も、他の子どもたちも本当にのびのびと演じていて親として子どもの成長を感じていた。亮くんも、なんとか時間をやりくりして来てくれたけど、悠斗の出番が終わったらすっとどこかに行ってしまった。

(まあ、いいか……)

おゆうぎ会が終わって数日後、クラスのママからLINEのメッセージが届いた。

「あの、衣装作ってるところ見て、ぜひお願いしたいことがあるんですが、子どもの服、作ってもらえませんか? もちろん、お礼はお支払いします」

(宇野未悠)

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