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疲れ果てたママ友との関係、夫が私を雑に扱う理由は?【わたしの糸をたぐりよせて 第9話】

  • 2020.3.4
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前回からのあらすじ
同級生だったイナガキとのランチで言われた「人の顔色を見ている」という言葉に戸惑う友里。幼稚園のお迎えではクラス委員長の上田から話しかけられるが、その内容とは…
「ママだから」に縛られていた。彼の一言に女としての自分を思い出す…

●登場人物●
立花友里:都会で就職し結婚したが、夫・亮の転勤で地元の街に戻ってくる
:友里の夫。友里から告白してつきあうように。息子の悠斗を妊娠して以来、夜の生活がない
イナガキ:友里の幼なじみ。小学校~高校まで一緒だった。現在は人気デザイナー。
上田:悠斗と同じ幼稚園に通うママで、うさぎ組のクラス委員長
カオル:悠斗と同じ幼稚園に通うママ友で、友里を配下に置こうと考えてる

※このお話はフィクションです



■ママ友はスルーできるもの…?

悠斗の幼稚園でクラス委員長を務める上田さん。いつだって平等にみんなと接していて、でも特別仲の良いママ友を作っているようにも見えない。

一匹狼のようで、カッコ良いけど、なぜだか近づきづらかった。そんな彼女が、私のために時間を割き、何かを伝えようとしてくれているというのはわかった。

「だって、立花さん、“困ってる”って顔してる。気がついてた? 朝だってそんな顔してたのよ」

「はい……」

「もし、自分の居心地の良いグループや人間関係であるならいいけれど、そうではないならうまくかわしたほうが振り回されないんじゃない? 他人の言葉って、スルーってこともできるものなのよ」

あまりにストレートな問いかけに、私は答えに窮してしまう。

上田さんは、園の扉を開けながらさらに言った。

「立花さんって、仕事上の命令系統にある上司の言うことより、頼りになると信じてる人や発言力の強い人の言うことを聞いてしまうタイプなのかもしれないわね」


私はハッとしてその場に立ち止まり、息子を引き取る上田さんの背中を見つめた…。





じつは、亮くんの転勤が決まったとき、上司から私も一緒に配属にならないか掛け合ってあげると打診された。その話は本当にありがたくて、仲良くしていた女の先輩につい話してしまったのだけど、先輩から返ってきた答えは意外なものだった。


「そんなの、言ってみただけだってわからない? 周りみてごらんよ。うまくいったって人どれだけいると思ってるの?」

先輩の言うとおりだった。夫婦で一緒に転勤するのはあまり例がなく、たいてい女性のほうが退職してしまうパターンが多かった。仕事では、上司のやり方よりも先輩のやり方のほうが効率がよかったのもあって、仕事の相談は先輩にするほうが多かったし、亮くんとの恋愛相談にも乗ってもらうこともあった。

結局、退職することを決めて先輩に報告したとき、先輩の顔がわずかに歪んだ気がした。

年齢があがってくるにつれて、自分の思いどおりに事を運ばせようと考える人は多くなる気がする。もしかしたら最初は本当に親切だったはずのことも、少しずつ気持ちは変化してしまうものだ。そんな当たり前のことに、私はずっと気がついてなかった…。


■突然、夫が私をソファに押し倒した…

とはいえ、人はそうすぐに変われない。

翌朝もその翌朝も、そのまた翌週もカオルさんの言うことを聞いては落ち込み、グループLINEに一喜一憂する日々が続いた。だけど、少しずつそこに違和感を覚え、このままではいけないという思いも芽生え始めていた。

そんななか――。

ある日の夜、あまりに気分が沈んでいた私はお風呂上がりにイナガキくんからもらった香水をつけてみようと思いたち、私は箱から香水の瓶を取り出した。

(これで、少しは気分が上がるといいな)

そう思ってつけた瞬間……。

ガラッと洗面所の扉が開いて、そこには、かなりお酒の入った亮くんが立っていた。

「あ、おかえり……どうしたの?」

亮くんの目は据わり気味で、私が手にしている瓶をじっと見ている。

「これなんだよ! どういうこと?」

「これは、友だちにもらったやつで……」

そう言うなり、私は亮くんに瓶を持ってる手首を掴まれる。

「なにいまさら色気づいてんだよ!!」

あ! と思ったときには香水の瓶は床に落ち、濃い香水の香りが立ちのぼった…。

亮くんは私をリビングまで連れていくと、そのままソファに押し倒した。


「ちょ、ちょっと……亮くんってば……やめて、やめてよ……」



と、次の瞬間。

「ぐぉぉぉぉぉおおおおぉ、ごぉおおおおおおおぉおおぉぉお」

(え? まさかの……い、び、き?)

亮くんは、私の上に乗るなり急激な睡魔に襲われたのかそのまま寝てしまったようだ。

何とか抜け出した私は、亮くんに毛布を掛けてあげながらもあっかんべーしてベッドに潜り込む。だけど、なかなか寝付けず、仕方なくスマホを取り出すと、イナガキくんからLINEが来ていたのに気がついた。

「元気? あれからしばらく連絡取れなくてごめん。じつは、あと1ヶ月ほどでここを離れることになったんだ。仕事の目処もついたし、よかったら近いうちに会わない?」

私は、急に苦い思いがこみ上げ、衝動的に通話ボタンを押していた――。


■夫が私を雑に扱うワケは…

翌朝。

「いててててて……なんで俺ソファで寝てるんだろ」


あきらかに二日酔いの亮くんは、頭を抱えながら私に水を持って来て欲しいようなジェスチャーをした。

いつもなら、水を汲んであげるところだけど、私も泣きはらした目でそんなことする心の余裕がなかった。

「友里、どうしたその目? ものもらいか?」

亮くんは昨日やらかしたことを覚えていなかった。それだけでも腹が立つ。

それもなんとか我慢して、亮くんがシャワーを浴びている間に私はソファ周りを整えた。
すると……。

置きっぱなしの亮くんのスマホを覗いた途端、例のアキって子からの「助けてください(´;ω;`)」というメッセージが目に飛び込んできた。

(亮くんは、私を助けないで会社の子を助けるんだ……私にはあんなぞんざいな態度を取って……)

シャワーから出てきた亮くんに、私は目すら合わせたくなくなっていた。

とにかく、いまは早く亮くんに出勤してほしかったし、口も利きたくない。

「なんだよ、その無愛想なの……まあいいや。行ってくる」

ドアがバタンと閉じる音に、また涙があふれそうになるけれど、それをこらえて悠斗をいつものように送り届ける。

途中、カオルさんに話しかけられた気がするけれど、「急いでるので」の一言だけでそそくさと帰ってきた。





(もっと早くこうすればよかったのかもしれない)

そう思うと、うじうじと悩んでいたことが何だかとてもちっぽけなものになっていく気がした。
私はずっと、自分を置き去りにしてしまった。
昨日の亮くんの態度は、私が私を大事にしなくなった結果だ。

もっと、私は自分を大事にしたい。

そう思ったとき、ふとミシンセットが目に入った。

(あ……しばらく私、デザイン描いてない)

私はしまい込んでいたケント紙を出すと、無我夢中でクロッキーを描き始めた。

何枚も、何枚も、紙にいまの気持ちをぶつけていた。
我に返り、視線を落とす。

躍動感にあふれるその絵には、自分の本心が映し出されている気がした。
目の前が急に明るく開けたように感じ、進むべき道が照らし出されたような感覚をおぼえた。
次回更新は3月10日(火)を予定しています。
イラスト・ぺぷり
【わたしの糸をたぐりよせて】連載
「第1話」から読む≫
夫とは口喧嘩ばかり…幸せな家庭が壊れかけていく

https://woman.excite.co.jp/article/lifestyle/rid_E1575449032201/


前回「第8話」のお話≫
「ママだから」に縛られていた。彼の一言に女としての自分を思い出す…

https://woman.excite.co.jp/article/lifestyle/rid_E1579077421201/

(宇野未悠)

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