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【連載 「おとこのて」】もう知ってたよ

  • 2020.2.17

君がいないと生きていけない

あなたがそう言うたびに私はあなたは私がいなくてもきっと生きていけてしまうんだろうなって

あなたは私を喜ばせるつもりなんだろうけど私はその度にあなたの後ろにいる私の知らないあなたを想像して今日を少しだけ、憂鬱にさせた。

おとこのて

背景、私様私は私に手紙を書いている。昨日トイレで見てしまったものへの後悔とあなたが言っていたあれも、あなたが作っていたあれも、小さな点と点はいまだにしっかりと繋がっていた。そこに私は全然関係なくってあなたとあの子だけのすべてがあった。

あなたは見ないようにしているだけで本当は見たくてしょうがないこと、あなたが見ないふりして見ていることを分かったっていうより、分かってしまった。

あなたの言葉はすべて裏地をもたせていた。しっかりと裏にもあなたとあの子で作った可愛い刺繍が施されていて両面使えるようになっていて、私は表面しか知らないまま、今日という日をなんの気なく過ごしていた。言葉はただの箱でしかなくって、言葉の中にあるものこそが言葉だって誰かから聞いた。私はあなたの言葉を信じるしかないし、その奥がどうとか、正直分からない。

ただそれがあなたを通してではなくあなた以外のあなたで知ることしかできなくて私をひとりで憂鬱にさせた。今日だってあんなに天気が良かったし、明日もきっと天気はいい。そんな始まったばかりのふたりの家で私は明日、憂鬱を少し迎え入れるだろう。

それも知らずにあなたは今日も

「君がいないと僕は生きていけない」

と可愛い顔して私に言い続けている。正直この言葉に関しては、最初から信じていない。だって生きていけないはずがないのだから。それを本当はあなただって分かっているはずだってことも分かっている。だし、私はあなたがいなくても生きていけることも分かっている。

だけれどあなたと生きていきたい。これが私の答えだった。

とにかく私は私ひとりで点と点を繋げてしまった。あなたの目に映るものは私ではなく、あなたが見たいものは私にはない。ただ起きた事実にいまだけ楽しくなっているだけだ。そんな風に私は悲観的になって、まるで詩人のように、さっきから私しか見ることのない手紙をこんな時間に書いている。

書き終わってあなたに見せようとか、迷うこともなく私はこの手紙は捨ててしまおうと思った。でも取っておきたいとも思った。

終わった時に、渡そうかと思っている。

その時私は言ってあげようと思っている。

「もう知ってたよ」って。

こんな具体的ではない未来に嘆いてもしょうがないのは十分に分かっている。それなりにあなたに会う前から理解してきた。

だけれどあなたが私を愛して、愛して、愛するほどに抽象的な不安は、ゆっくりとはっきりと明確な不安となって私の後ろで私のことを待っている。微笑みながら、ちょっぴり私に可哀想な目をして。

おとこのて

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