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サム・メンデス監督が、『1917 命をかけた伝令』を全編ワンカットで撮った理由。

  • 2020.2.13
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(c) 2019 Universal Pictures and Storyteller Distribution Co., LLC. All Rights Reserve.
1917-main.jpg(c) 2019 Universal Pictures and Storyteller Distribution Co., LLC. All Rights Reserve.

第一次世界大戦のさなか、2人の若きイギリス兵士が友軍に「作戦中止」の伝令を届けるため、敵が待ち構える戦場を駆け抜けていく。冒頭からラストまで映像がつながる、驚異の「ワンカット」による革新作だ。

サム・メンデスは初監督作の『アメリカン・ビューティー』(99)でアカデミー賞作品賞・監督賞受賞。『007スペクター』(15)といった話題作のほか、ロンドンのドンマー・ウエアハウスの芸術監督を経験するなど舞台演出家としても名高い。

「11歳か12歳の頃、第一次世界大戦に従軍した祖父から聞いた話が、今作を作ったきっかけだ。それはヒロイズムや勇気ではなく、彼が運命のいたずらで生き残ったという奇跡についての話だった。

作品のアイデアを思いついた時点で、全編を『ひと続き』の映像で描こうと決心した。映画を観る人に、すべての瞬間、主人公たちと一緒に歩いている感覚を共有してほしいと思ったのさ。彼らの肉体的な困難に没入することで、感情も理解できるわけだからね。

ただ実際に撮影するとなると、綿密な計算と、予想以上の困難が待っていた。主人公たちの移動距離とセリフの関係を細かく決めるのはもちろん、戦場全体を俯瞰したりと、カメラを自在に動かす必要がある。すべてをワンカットで撮ろうとすると俳優の動きを邪魔することにもなり、彼らに余計なことを考えさせ、演技への集中を妨げることにも。だから細かいリハーサルが必要で、その量は私のふだんの映画の50倍くらいになった。

映画というものは『編集』で見せるものだが、ワンカットで撮った今作に編集は必要ない。だから私が頭の中でイメージしていたとおりの作品に仕上がったとも言える。

改めて感じたのは、戦争映画を撮る意味だ。今作の主人公である兵士たちは任務に対して勇敢だが、私自身は彼らほど勇気のある人間ではない。ある意味で臆病な私が、戦場のような極端な状況で人間にとって何が最も大切なのかを、今作を撮って考えさせられた。

次に挑戦したいのはミュージカルかSFかな。映画が世界を変える力を信じて、撮り続けていきたいよ」

[映画『1917 命をかけた伝令』](https://1917-movie.jp/)
2020年2月14日公開

配給/東宝東和\

Interview & Text: Hiroaki Saito Editor: Yaka Matsumoto

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