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リオパラリンピック閉会式にも出演!義足モデルGIMICOにインタビュー

  • 2020.1.23
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日本で初めての義足モデルとして、著名フォトグラファーの被写体やさまざまなミュージックビデオ、有名企業のCMなどに出演し、2016年リオパラリンピック閉会式ではパフォーマンスを披露したGIMICOさん。時代の新アイコンとして注目を集める存在でありながら、サバサバとしたキャラクターで気負いなく、あくまでもフラットな姿勢を貫くGIMICOさんの本音に、コスモポリタンが迫ります!

モデル業のほうは、どういうきっかけで始めたんですか?

モデルになりたいというより、むしろ消去法というか、あるものでできることを考えた結果でしょうか。努力が嫌いで、怠惰な人間なので、誰も競争相手のいない分野なら、私が第一人者だし、という完全な下心ですね。

これからどうしようかなと思っているときに、アンダーグラウンドを専門にしているキャスティング会社のボスのブログを見つけました。もともとクリエーターとか、ファッションだとかに興味がありながら、道からずれて、色々なことをしていたので、そういえばこういう世界をやってみたかったけど、スタイリストさんの弟子になりたいわけでもないし、どちらかというと彼らの作品になってみたいかもしれないなと。それでこのキャスティング会社だったら、“私、ウケる存在かも”と思って、何かあったらやらせてください、というゆるいメールを送りました。ちょうどそのボスもそういうことにすごく興味があったらしく、1週間後に撮影が実現しました。

すぐに撮影が決まるというのもすごいですね。自分のやりたいことが何か、常にアンテナを張っているんですか?

ブラジリアンワックスもそうですが、ちょっとおもしろそうだとか、そういう根拠のない自信を一番大事にしています。他にもおもしろそうと思ってくれる人がいるかもしれないという可能性ですかね。自分に向いているときは追い風がくるというか、たぶん今、レールに乗っている手応えがあると思いますが、そこにうまく乗るのが大事なのかなと。

ただ一度直感が当たって、手応えを感じてこうなったから、逆にその直感に執着してしまって、「次にこれだ!」と思えるものが降りてこない限り、動けないという状態がもう5、6年。フラストレーションが溜まって、ふつふつとしていますね。傍目には活躍しているように見えているだけよかったですけど(笑)。

義足モデルとして仕事をする楽しさややりがいはなんでしょうか?

私はモデルといっても特殊で、ファッションフォトというより、どうしてもポートレートになるので、お洋服を見せる普通のモデルさんとは違うとは思うんですけど、いい作品ができたらうれしいですね。作り手みたいなことに憧れていた人間なので、現場にいられることがすごく楽しいなと思います。できあがりがもちろん一番重要なんですけど、作っている最中もおもしろいですし、モデルというより、作り手という意識のほうがもしかしたら強いのかも知れない。GIMICOを作っている感じで、GIMICOをプロデュースするGIMICO・Pみたいなのがいますね(笑)。まだ“GIMICOとは何か”が自分でもわからないんですけど、それがわかったら楽しそうだなと。やめるまでにそれがわかったら、いいなと思います。

モデルだけでなく、サロン経営者でもあるそうですが、サロンを始めたきっかけは?

義足モデルを始めた翌年、まだそんなにモデルのお仕事がくるわけでもないし、他にも何かやらないといけないと思って。誰かの下で働くのは嫌だったんですね。そのときちょうどテレビでブラジリアンワックスが特集され始めて、「これ私に向いているな」と。そのひらめきから2カ月半後には、サロンを開いていたと思います。

ブラジリアンワックスが自分に向いていると思った理由は?

優しくないところですね(笑)。ブラジリアンワックスは優しい人にはできないと思います。勢いが必要というか、抜いたあと、「大丈夫? 痛くないですか?」みたいに気にしてしまう人は無理だと思います。オープンするときに、とりあえず5年やってみようと思いました。それはうちが5年続いたら、日本でアンダーのお手入れが根付いたということで、そしたら大手が参入してくるだろうし、永久脱毛に移行する人も増えるだろうと思ったからです。やはりその通りで、5年目が一番売り上げもよかったですね。今はほとんど常連の方だけで、月に数日程度の営業スタイルですが、それでもあっという間に10年が経ちます。

義足モデルとサロン経営者、どう両立させてきたんですか?

私が義足モデルを始めたときはアンダーグラウンドな世界でやっていくのかなと思っていましたが、パラリンピックや企業のCMに出演したりという思いもよらないバブルがやってきたので、だんだんモデル活動の収入のほうが多くなってきました。サロンを始めた理由は、余裕がある風に見せたかったんでしょうね。特に容姿も褒められたことがない、しかも義足の女の子がモデルを名乗り出すなんて、周りからバカにされてないかなとか少なからず思ったような気がします。地に足を付けて、「ちゃんと稼いでいますよ」という、“モデルGIMICO”のキャラクターづくりのためだったというか。サロンのGIMICOの内助の功のお陰で、ここまでやってこられました。感謝しています。

インスタグラムのお写真を見て、ファッションがお好きなんだろうなと思っていました。

特にファッションのこだわりがあるわけではないんですけど、私は日本人のわりに肉感的でグラマラスな感じなので、肉とメカのバランスがおもしろいのかなと。私自身グロいのは好きではないので、生々しくないように、だけどリアルは入れたいと思っています。

リオのパラリンピックの閉会式は特に印象的ですが、どういう思いで臨まれたんですか?

私はもともとスポーツにまったく興味がなくて。オリンピックも見たことがなかったくらいですので、もちろんパラリンピックも見たことがなかったんです。それくらい予備知識がなく、障がい者だとか福祉だとか、そういうものをまったく背負わずに臨んだので、それが逆によかったのかなと思います。何かをすごく伝えたいとか、発信するつもりというより、フラットな状態で臨んでいた感じです。それはモデルを始めたときから意識していることです。

世界的な舞台に出演することに対する、ご自身の気持ちや周りの反応はどうでしたか?

閉会式に出ることを本当に誰にも言ってはいけなかったので、特に実感もないままでした。たしか日本では、3連休の最終日の朝8時の中継からだったので、私の周りは出かけてるか、寝るかだと思うし(笑)。もちろん情報を知って見てくれた友達もたくさんいるけど、大勢の人に見てもらったとか、すごくリアクションが返ってきたという実感もなく、実際に今お仕事のオファーくれる方も知らないことが多くて、「あまり見てないよね」というのが私の本音です。

でもやはりパラリンピックに出たことは、あれがあるとないとでは違ったのかなと思います。その後の変化といえば、前よりもインタビューを受けることが増えたり、『ニュースZERO』に出演したり、最近でいうとトークショーをしたり。これまでのビジュアルだけの表現に加えて、最近は言葉での表現も始めました。でもこれも、もし向いてなければやめればいいくらいに思っていることで、まだそれが自分に向いているのか、実感できてない段階です。 実は、マンネリだったサロンにも、「毛を抜かずにGIMICOと話をするだけ」という新しいメニューを加えたんです(笑)。どうなるか楽しみです。

先ほど、モデルを始めたきっかけをお聞きしましたが、改めてモデルという職業を選んだ理由はなんですか?

今まで障がい者を昇華させる表現方法って、アートやスポーツばかりだなぁと思っていて。スポーツはポジティブなイメージしかないし、アートもアートの世界がありますが、モデルというのはその姿、形を見せることなので、あえてそれをやるというのがおもしろいなと思ったんです。体が欠損しているということは、もしかしたら人によっては目をそむけたいことかもしれないですし、私が健常者だったときも体の一部がないなんてちょっと怖いとか、思っていたと思うんですよ。だからこそ、そこをあえてフィーチャーするのがおもしろいと思う、私の性格ですね。後付けかもしれないけど、モデルを始めたきっかけのひとつだと思います。

2020年は東京でパラリンピックが開催されますが、どんな年になると思いますか?

今はオリンピック・パラリンピックの影響で多様性がブームなので、そのおかげで様々なお仕事を頂いていますが、それ以降もそれが続くとは思わないので、そこでGIMICOをやめるのもひとつの区切りとしてよいのかなと思います。続けていくイメージよりも、やめるイメージのほうができていますね。

あとは、私の影響というのはおこがましいんですけど、障がい者の方から「モデルになりたいんですけど、どうしたらいいでしょうか?」と質問をいただいたり、障がい者モデルのファッションショーがおこなわれていたり、所属事務所ができていたり、という話しを聞くと、「他の人もやり始めたから私はもういいか」みたいなのも、本音としてあります。

でも人生100年と言われているなかで、高齢化とともに障がい者が増えていくのか、それとも科学や医学の発達で障がい者がいなくなるのか、あと50年も経ったら、どうなるかわからないですよね。障がい者が存在する最後の時代に来ているのかもしれないと思うと、そんな時代に障がい者として生きていることもおもしろいかもしれないと思って。私が死ぬまでの間にどれくらい障がい者界隈が変化するのか、興味深いですね。この10年で、障がい者がモデルになりたいと公言するようになったんですから。

モデル業のことからサロン経営のことまで、すべて本音で語ってくれたGIMICOさん。後編では、GIMICOさんが考える今後のキャリアや最近始めたというトークショーについてご紹介します。

OFFICIAL WEBSITE

GIMICO SALON

Instagram/@gimico_gimico

text:江口 暁子

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