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バイリンガルであることが脳の力を高くする?

  • 2019.12.17
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第二言語を話す能力があれば、年を取っても明晰な頭脳が保てるかもしれない。その内容を『Prevention』からご紹介。

神経科学専門誌『The Journal of Neuroscience』に掲載された論文によると、数年にわたり2か国語を日常的に使っている人は、1か国語しか話さない人よりもタスクの切り替えが速い。米ケンタッキー大学医学部の研究チームは、一連の実験の中でMRIスキャン(機能的磁気共鳴画像法)を使い、「認知の柔軟性」を評価するためのタスクに取り組む健康な被験者(60~68歳)の脳活動を比較した。その結果、バイリンガルの被験者はタスクを終わらせるのが速く、脳の前頭皮質(タスクの切り替えや短期記憶などをつかさどる領域)におけるエネルギー消費量が少ないことが分かった。

でも、数歳若い被験者のグループでは、バイリンガルであることのメリットが見られなかった。つまり、第二言語を知っているだけでは不十分。明晰な頭脳を保つ秘訣は、第二言語を長期間使うことにある。

2か国語をマスターするなどして認知機能を使えば、年を取っても脳力が維持されるという仮説は以前からあった。でも、今回の研究チームは脳スキャンを使用し、その仮説の正当性だけでなく、認知機能を使うことで脳がどう変わるかも実証した。

「高齢者の脳の違いを生むものは何か。この研究結果は、その質問に対する答えを見つけるための踏み台になるでしょう」と話すのは、米ウェリン州立大学のエイジングエキスパートで心理学教授のジョン・L・ウッダード博士。「こうした脳の違いは、自ら刺激を求める人に特有のものなのでしょうか。それとも刺激が脳の違いを生み出すのでしょうか」

ウッダード博士によると、この研究結果は、認知機能の低下や加齢に伴う認知症に関わる脳領域の理解を促進するため、その新薬の開発に役立つ可能性もある。

でも、現段階で言えるのは、灰白質(かいはくしつ:神経細胞の細胞体が存在している部位)は使わないと衰えるということ。「膨大な数の論文が、認知を刺激するアクティビティはとても有効であることを示しています」とウッダード博士。「それが第二言語である必要はありません。楽器を演奏するのも、合唱団に入るのも、本を書くのも、もっと頻繁に旅行するのも、美術館を訪れるのも、みんな役に立ちますよ」

身体的な活動が認知症の予防になることを示す研究結果は多い。カリフォルニア大学ロサンゼルス校によると、20年の研究期間中、1週間あたり3,000kcal以上のカロリーを燃やした被験者は、座りがちの被験者に比べて維持した灰白質の量が5%多かった。研究チームいわく、この5%は“とてつもなく大きな”違い。

※この記事は、『Prevention』から翻訳されました。

Text: Katie Drummond Translation: Ai Igamoto

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